夏祭り~懐かしさを感じる~
祭りのしたくを善狐の五郎にまかせる梢。
そこで種族間の違いが浮き彫りに。
取りあえず、祭りの細かなことは五郎に任せて梢は作物の収穫などをしていた。
祭りにだす物を準備する為に──
「夏は祭りでもしようかと」
「おお、いいですね」
五郎さんとお話しする。
「では、吸血地区の者以外と話合いを致します」
「吸血鬼の方々とは話さないの?」
「いえ、祭りと聞いても高級ブラッドワインを振る舞うだけらしいので……」
「Oh」
種族間の違いが明確に。
「取りあえず、こちら主導で祭りをするから何が欲しいか聞きに行きます」
「それが良いでしょうね」
「はい」
祭りの細かなことは五郎さんに任せて私は作物の収穫。
飴を売るから適した果物が欲しいと言われたので苺や葡萄、マスカット、林檎などを提供した。
林檎はカットしてから飴をかけて販売するらしい。
でかすぎるもんね、うん。
後、私はエルフさんに頼んだ魔導具──綿飴を作るものを注文しておいた。
砂糖を用意しておいたので問題無い。
祭りの準備は順調に進んでいた。
「おお、愛し子様! 祭りをやるのですか?」
「え、ええアルフォンス陛下」
私は目をそらしながら言う。
この人苦手なんだよー!
「どのような祭りに?」
「えっと……」
と言われても、祭りのことは五郎さんに一任しているから私そこまで詳しくないし、どうしよう。
「アルフォンス陛下、祭りのことは善狐の一族の五郎殿に任せております」
シルヴィーナが颯爽と現れ、助け船を出してくれた。
「五郎という響きは極東のものだな、だが善狐というのは?」
「それは──」
シルヴィーナが視線で合図してくれたので私は音を立てずその場を立ち去った。
やっぱりシルヴィーナは頼りになる‼
自分の畑に戻ると、子ども達が相談していた。
吸血鬼とダンピールに子と内の子と一二三ちゃんが。
「私達だけ食べる物がないのはちょっとなぁ……」
「五郎伯父様もそれに悩んで居るようだわ」
「なぁに、どうしたの?」
これには参加した方がいいと直感が告げ私は離しに入る。
「お母様!」
「あのね、お母様、私達は色んなもの食べられるけどカイルお兄ちゃんみたいな吸血鬼は食べられないものがいっぱいあるの」
「せっかくのお祭りなのに……」
「そうねぇ、ブラッドワインと砂糖を煮詰めて作った飴と、ブラッドフルーツのカットしたもににその飴をコーティングしたものなら食べられると思うわ。あと冷やしたブラッドワインと、冷やしたブラッドフルーツのカットしたもの、それから……」
「梢様、待ってください! メモを取ります!」
一二三ちゃんがメモを取りだしたので、私は再度ゆっくりと提案し始めた。
「……これなら食べられそう?」
「はい!」
「コズエ様、有り難うございます!」
カイル君達が頭を下げる。
「一二三ちゃん、五郎さんに宜しくね」
「はい!」
一二三ちゃんはメモ用紙を持ってとっとこと、走り去って行ってしまった。
カイル君達も自宅へ帰路についてしまった。
「あれくらいで大丈夫かな?」
「大丈夫だよ! お母様!」
晃がにっこりと笑う。
「そうそう、お母様、心配症」
「そうね、心配症」
「うぐ」
子ども達に指摘されるとちょっと辛いものがある。
取りあえず、祭り期間まで頼まれた仕事もとい農作業と家畜の世話こなしつつ日々を過ごした。
そして祭り当日。
「「「わぁ……!」」」
「極東風の祭りで統一したのね」
「そのようだな」
「初めて見るものばかりですね」
「そうですね、アイン様」
目をきらめかせる子ども達。
初めて見るものに興味津々な夫達。
私は──懐かしさに目を細めていた。
ああ、なんて懐かしい。
子どもの頃、お小遣いを貰って綿飴やかき氷を食べた事を思い出した。
「あ、アイス屋さんもありますよ」
「「「アイス!」」」
子ども達はアイス屋さんに走って行ってしまった。
村の作物などで作ったので誰もが無料で楽しめる。
手間賃とかは後ほど請求することで、クロウやシルヴィーナが村役場のたんまりと貯まっている倉庫から支払ってくれるそうだ。
「お花の形のアイス!」
「お母様見てみて!」
「凄いよね」
「──ええ、凄いわ」
アイスを売っているシルヴィーナに近づく。
「シルヴィーナ、どう?」
「はい、コズエ様に教えて頂いた花の形のアイス好評です!」
「え、お母様が教えたの?」
「ふふ、そうですよ。コズエ様が教えてくださったのですよ」
そう、花の形のアイスは私が教えた。
過去の記憶とクラフトでやり方を見せて。
シルヴィーナは直ぐ覚えて作って見せた。
シルヴィーナはやはり天才肌なのだろう。
「ほら、早く食べないと溶けちゃうでしょう」
「「「うん、あむあむ……」」」
子ども達はアイスを食べ始めた。
今日は過ごしやすい気温なのは神様のおかげなのだろう。
浴衣で過ごしやすいのは気分がいい。
子ども達は浴衣とかを着てくれたけど、旦那達は着てくれなかった。
何故だろう。
私は着ているけどね。
「果物飴屋さんだ」
「苺ー!」
「苺ー!」
「苺ー!」
三人そろって苺の大合唱。
なので私達は他のものにした。
そうしてお祭りの村を歩いているとイザベラちゃん達と遭遇した。
「コズエ様!」
「イザベラ様、どうです、祭りは」
「ええ、とても楽しいです。お父様なんてお酒で酔っ払っていらっしゃいます!」
「え、そんなに」
「マリアお義母様と、お母様が頭を抱えておりましたわ、ふふ」
「コズエ様、このような楽しい祭りに参加させてくださり有り難うございます」
「いえいえ……」
ロラン君の言葉に首を振る。
「あ、花火!」
「そうね、花火ね」
花火が打ち上がる。
空を彩るそれを眺めていると子ども達が言った。
「「「また来年、みようね!」」」
「ええ、勿論」
期待に膨らんだ目で見つめるので、私は肯定した。
来年も、このようにお祭りができますように。
そう祈った──
お祭りの話です。
梢が面倒くさいのから逃亡しているのが分かります。
祭りの全般は五郎に任せ、王族はシルヴィーナ。
それに+αで相談に来た一二三に色々提案してその後は彼女に任せてます。
お祭りは地元の祭りや宵宮を参考にしています。
……宵宮通じるひといるんだろうか?
それはともかく、花火は五郎達善狐が上げたものです。
梢は少しだけ郷愁に浸りつつ、来年もまたこの光景をみたいなと思っております。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




