14年目の夏来たりて~いつものお約束~
14年目の夏が訪れ、梢達始祖の森の村へドミナス王国からマリア正妃達、ムーラン王国からはイザベラ達が避暑目的でやって来た。
イザベラと穏やかに話せた梢だが。
国王まで来たドミナス王族達と話すというプレッシャーに負け、相手を全部シルヴィーナに投げだしてしまう──
もう直ぐ14年目の夏を迎える頃となった。
夏、というので定番の手紙が来た。
ドミナス王国と、ムーラン王国。
正妃マリア様と、イザベラちゃんから。
今年も避暑に来て良いかという問いに私は歓迎しますと帰してクロウに文章を見て貰って送って貰った。
そして夏がやって来た。
14年目の夏が。
二つの国の馬車がやって来た。
「コズエ様!」
「こずえさま!」
「こずえさま!」
イザベラちゃんと、イザベラちゃんの子ども達が駆け寄って私に抱きついてきた。
「会いたかったです!」
「あいたかったの!」
「あいたかったです!」
「イザベラ様、マリーローザ様、カナン様、私も会いたかったです」
「わたしさまつけでよばなくてもいいの」
「ぼくも」
こてんとマリーローザちゃんと、カナン君が首をかしげる。
「愛し子様はね、コズエ様はね、私達が王族だからそう扱ってくださるの」
「おかあさま、そんなのいらないよ」
「いらないー」
「でも、此処以外では皆貴方達を様づけで呼んでるでしょう」
「……うん」
「うん」
目線を合わせて諭すイザベラちゃん。
こくりと頷く双子ちゃん。
「貴方達は王族という看板をいつでも背負っているの、他の子達とは違うの」
「でもおかあさま」
「分かるわ、私もそうだったもの」
「おかあさまもおなじだったの?」
「ええ、イザベラと呼んで欲しかったわ、でもコズエ様は様づけで私を呼んだ。私が他でもない王女だから」
「「……」」
黙ってしまう二人。
「大きくなれば、私の言っている事も分かるわ」
「「はい、おかあさま」」
双子ちゃんは聞き分けが良い感じだ。
「イザベラ、元気なようで何よりだ」
「マリアお義母様!」
「「まりあお祖母様!」」
「イザベラ元気にしているのね」
「お母様!」
「「お祖母様‼」」
双子ちゃん達はマリア様とクレア様に突撃しわちゃわちゃと撫でられ満足する。
「マルス様は今回も来られないようですね?」
「ああ、ルキウスが相変わらずだからな」
「……と言うことは」
「いやぁ! ここはいつ来ても良い場所だなぁ!」
「国王が来た」
「うへぇ……」
私はげんなりした表情をしてからそれを隠すように顔を手で叩き軽く気合いを入れ、それから普通に手を叩く。
「シルヴィーナ!」
「はい、コズエ様!」
シルヴィーナがしゅばっと姿を表した。
「王族の方々のお相手宜しく!」
「はい!」
大変だろうけど、王族の方々のお相手はシルヴィーナに任せる。
私の胃袋が大変な事になるからね、じゃないと!
ストレスマッハなんだよ、イザベラちゃんはともかくマリア様とか国王様とかは!
「うーん、受け入れてはいるけど、対応をシルヴィーナに任せっぱなしなのは良心がやっぱり痛む」
クロウの屋敷に入ると、私はテーブルに突っ伏しそうぼやいた。
「お前さんは本当そういう事柄に弱いし、良心も痛みがちじゃの」
クロウはお茶を飲みながら言った。
私はむくれて。
「仕方ないじゃない、マリア様ならともかく国王様だよ! 一国の主だよ、私は只の平凡な村民だよ!」
「一応お前は村長じゃろ、仕事はしとらんが」
「私は畑仕事と家畜のお世話とかしていたいんだよー!」
「本当、お前さんは我が儘じゃの」
「仕方ないじゃん!」
そう言うとクロウは笑った。
「そうじゃ、我が儘でいいんじゃ。お前さんは我慢しがちじゃからの、嫌な事は儂等に任せるといいんじゃ」
「え?」
予想外の発言にぽかんとする。
「書類仕事も、国王の話相手も儂等に任せればいいんじゃ、お前はお前がしたい事をしていればいいんじゃ」
「クロウ……」
「さて、シルヴィーナだけだと荷が重くなっているころじゃろ、儂もいってくるわい」
そう言って老人の姿からいつものあの壮年の男性の姿に変わる。
「梢、お前は好きなように生きて良いのだ」
クロウは笑って言うと、家を出て行った。
私は何か心の中にあるモヤついたものを抱えながら畑に向かった。
「お母様!」
「あら、晃。どうしたの?」
珍しく晃が一人でやって来た。
「イザベラ様の御子様達と肇と音彩が遊んでいます!」
「どんな風に?」
「二人が御子様達に花冠を教えていました!」
「御子様達はどうしてる?」
「苦戦しているけど、なんとか完成させてました!」
「そう、ところで晃。貴方はどうして此処に?」
「僕はお母様の手伝いに来ました!」
「遊んでいてもいいのよ?」
「いえ、だってお母様、一人だと大変でしょう、村人が収穫したのにまだこんなに作物が実ってる」
「まぁ、そうねぇ……」
私は悩む。
「僕はお母様のお手伝いをしたいのです!」
「そう、じゃあお願いね」
「はい!」
私と晃は作物を収穫し、マジックボックスに詰めてから、貯蔵庫に向かい並べていった。
「お母様のお陰で村の皆は飢えないと聞きました」
「まぁ、そうね」
晃の台詞に、私は言葉を濁す。
最初は自分の為だけに色々作ったのだ、あれも欲しいこれも欲しいとなって今は沢山収穫できる。
毎日のように。
これは神々の愛し子の私の力と、精霊と妖精の力もあって起きる事。
某牧場ゲーム以上に収穫でき、収穫中は冬以外季節が関係ない。
希に、冬しか育たない薬草があったが、アレは例外、必要ならビニールハウスで育てればいいから。
結果、村は豊かだ。
その豊かさを、ドミナス王国とは交易で、ブリークヒルト王国には税金として献上しているらしい。
私がいなくなったらどうなるんだろう、と少しだけ思ったが。
私がいるからこの村は成り立っているのは分かる。
居なくなったら──
「お母様?」
「……」
「どうしたんです?」
「あ、うん、何でも無いのよ」
考え事をしていたら晃に声をかけられた。
私が答えると晃はむくれた。
「嘘ですね、あとでクロウおじ様と、お父様達に報告です!」
「ちょっとー!」
それは勘弁してよー!
という心の叫びむなしく、晃はクロウとアルトリウスさん達に報告して、私は「そういう今でないことの余計な心配はするな!」とクロウに怒られました。
だって不安だったんだよ!
梢が徐々に無理しなくなっている傾向がみえます。
シルヴィーナに全部投げは今までしなかったのですが、今回からやってます。
ただ、自分に話しかけられたら頑張って話しますが、そうじゃないときはシルヴィーナに任せてます。
子ども達、もとい音彩はルキウスが来なかったことに心底安堵しています。
梢は未来のことを想像しますが、梢が望めば梢の畑はそのまま、巨大作物を実らせる、果樹は巨大果物を実らせる、お米は稲穂がずっしりというのがずっと続きます。
クロウが村の守護者な限り(梢がいなくなった場合)
なので、余計な心配すんなと梢を叱ってるのです、ただ事情までは話してません。
面倒なので。
梢の心配症も結構なものです。
ここまで読んでくださりありがとうございます
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




