梢叱られる~13年目の春の終わり~
春、畑仕事等で忙しくしている梢。
子どもたちは勉強の真っ最中。
ふと、時の流れを感じた。
13年の月日は長いようで梢には短く──
春がやって来て畑仕事で忙しくなった。
子ども達も手伝ってくれるが、子ども達は大きくなったら独り立ちできるようにクロウの勉強会を実地して貰っているのでそっちを優先。
クロウは村の子ども達に読み書き、計算など色んな事を教えてくれる。
大人達も混じって勉強を教わることが初期はあった。
時の流れを感じる。
最初は小さかったルフェン君達は今結婚してもう直ぐお父さんになる。
そして同じように小さかったイザベラちゃんも結婚して王太子妃になっている、子どももいる。
13年も経過しているのだ。
「ああ、長いようで短いなぁ」
一人呟く。
「何が長いようで短いのですか」
「あ、ティリオさん」
ティリオさんがやって来た。
「いやぁ時が経つのは早いなぁと。私がここに来てもう13年経ったんですよ」
「そうですね、私も同じくらいですからね」
「でも、昨日の事のように思い出せるや」
「私もです、コズエ様。貴方への恩と愛は確かにここにあります」
「ティリオさん……」
ちょっとばかり恥ずかしいや。
あの日、始祖の森にアインさんをおぶってやって来たティリオさん。
助けを求めてやってきた二人を、私は突き放すなんてできなかった。
だから持っているもので助けた、それだけの話。
二人がいつから私に恋をしたなんて知らないけれど。
私への恩を感じたのはあの時からだと思う。
アルトリウスさんもそうだ。
助けを求めたから私は受け入れた、助けた。
リサさんも。
本当色々あった。
イブリス神が怒ってイブリス聖王国を呪ったり、神様がデミトリアス聖王国を滅ぼしちゃったりとかもう色々、この13年で色んな事が起きた。
最悪な国、ロガリア帝国が滅んだりしたりしたしね。
他にもムーラン王国でもドミナス王国でも色々あった。
そして関わった人達は結婚し、子どもを産んだりしている。
私も結婚して、子どもを出産したりしたしね。
本当、色々あった。
「ティリオさん、私と同じく年を取らずにずっと生きることになったけど、本当良かったの?」
今更なことだが聞いてみる。
「いいんですよ、私はこの命をコズエ様に捧げております」
「……」
「それにクロウ様に聞いたのですよ、あの誓いは神々の愛し子しかできないと、だから選ばせたと」
「クロウめ……」
重要な情報をやっぱり隠していたか。
あんにゃろう。
「『本来は不要な契約だが、コズエは吸血鬼、お前は人間、コズエは一人になる恐怖に耐えられないだろう』と、クロウ様がおっしゃっていました」
そうか、だから吸血鬼の伴侶の人達は私みたいな事していなかったんだ。
伴侶と別離の覚悟をしていて、伴侶を人間のまま愛しているから──
今更気付くなんて私頭が回らないなぁ。
「何か馬鹿でごめんね、普通なら気付く事に全然気付かないんだもの」
「クロウ様はおっしゃいました『コズエは自分の事で手一杯なはずなのに他人の事まで手を出すから頭が回らない』のだと」
「あんにゃろう」
クロウめ、言いたい放題言いやがって!
事実だから否定できないけどさ!
「そんなコズエ様だから、皆手伝おうという気持ちにより一層なるのです、自分の事をおざなりにしても他人を助けようとする貴方を助けたいと」
「そうかな?」
「そうですよ」
「コズエ様は今のまま──いえ、少しは自分を省みられるようにしてくだされば嬉しいですね」
「うー……」
そんな事言われてもなぁ。
25年生きてきたのを13年経っても治らなかったんだぞ?
無理じゃ無い?
「ティリオ、コズエと何を話しているのです」
「アイン様、色々とですが、一番はコズエ様の無理しすぎる件ですね、ご自分を省みないのは良くないと」
「それは良くないですね」
ひーお小言言う人物がまた一人増えた。
「コズエ、貴方は自分が特別なのをある意味理解しているようで理解しきっていない」
「どういうこと?」
なんじゃそりゃ?
「貴方は神々の愛し子として様々な力を持たされている、その力を活用しているが、その活用具合が無自覚なものばかり」
「うぐ……」
い、言われてみればそうかもしれない。
「この土地が豊かなのも、貴方の作った作物が規格外なのも、全て神々の愛し子による貴方によるもの──にも関わらず、それ以上に動こうとする、体は手一杯なはずなのに」
「て、手一杯じゃないよ⁈」
声が裏返ってしまう。
「コズエ、貴方はいい加減、自分が無理な範囲を覚えるべきです。動けるから無理してないーじゃなくて、動けてるけど無理してるんですよ!」
「ひぇ……」
アインさんに叱られる。
丁度通りがかったアルトリウスさんに助けを求めるような視線を送るがアルトリウスさんは首をふり、口パクでこう言った。
『今回は自業自得だ』
と。
そんなー!
そうして無理をしないように監視される日々が始まり、春の終わりが近づいてきた。
するとルフェン君とミズリー君がやって来た。
「「コズエ様!」」
「うわ! どうしたの二人とも、そんなに血相変えて!」
「ミュリーが産気づいたんです!」
「リィナも!」
「わわ! 大変だ!」
私は慌ててルズお婆ちゃんを呼びに行った。
勿論他の助産婦?の子達も。
出産はスムーズに終わった。
ルフェン君所は男の子で、ミズリー君のところが女の子だった。
名前は決めており、ルフェン君はアルト、ミズリー君はドロシーだって。
ルフェン君は名前からちょっと分かるとおり、アルトリウスさんから取ったんだって。
父親から取るか悩んだらしいけど、父親を除いて一番信頼できる大人はアルトリウスさんだったからそこから取ったらしい。
アルトリウスさんは父親からとったらどうだと言ったらしいけど、最終的には許可したそう。
こうやってみんな親になったりしていくんだろうなぁと少し黄昏れる。
そうして春は終わり、夏がやって来た──
梢の話です。
梢は13年間で色んなことに出来事に遭遇しました。
そう思う中で、梢が無自覚に力を行使し、無自覚のまま、無理をしていることティリオとアインから告げられ、監視されたりします。
アルトリウスは自業自得ということで助けてはくれません。
無理をするのは、前の世界、異世界転生するまえの梢は無理をし、我慢をしなければ生きられなかったからです。
それ位、苦しいほど梢にはあまり良くないものでした。
だけど今の世界で梢は生き生きと過ごしています、ただ本人もちょっと自覚はあるらしく、25年治らなかったのが13年で治るのかと考えてますし。
多分、この悪癖はいずれ直るかもしれませんね。
ここまで読んでくださりありがとうございます
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださると、うれしいです。




