13年目の春~七つのお祝いに~
13年目の春がやってきた。
それはつまり、梢の子ども達の誕生日をお祝いする時期ということになる。
三つ子の誕生日、梢は質も量も豪華な料理を作り、デザートの苺のケーキをつくって精一杯子ども達をもてなす──
冬は餅つきや、温かいスープをみんなで堪能しつつ、楽しく過ごしていた。
まぁ、たまにちょっとやらかして叱られることもあったけど……
そんなこんなで13年目の春が訪れた。
つまり──
「晃、肇、音彩。七歳の誕生日、おめでとう」
「「「ありがとうございます!」」」
三人はわくわくしながら何かを待っている。
「だから今日は特別ごちそうよ」
「わぁい!」
「やったぁ!」
「ごちそう、ごちそう!」
ビーフシチューと鶏の香草焼きなどなど……普段は質より量が多いので今回は量も質も重視して作った物。
ただ、晃達の本命はまだ出していない。
食べ終わった後だ。
満腹にならない程度の量を出して居るから安心。
ごちそうを食べ終えた晃達は私を見つめる。
「お母様、アレはまだ?」
「今出しますよ」
「本当?」
「本当よ」
「わぁい!」
私は冷蔵庫からホールケーキを出す。
生クリームと苺で飾り付け、スポンジの間に苺をたっぷり挟み、チョコプレートを三つ並べたショートケーキのホールを。
子ども達の分だけ大きく切り、私達の分は小さく。
それでも大きなケーキなので充分だが。
晃達のカットしたケーキの上にはそれぞれに「誕生日おめでとう」の文字を書いてある。
「「「ほわぁ……」」」
こういうケーキはお祝い事以外食べないので子ども達は好んで食べてくれる。
ケーキを見てうっとりしているのもその証拠だ。
「食べていいの?」
「いいのよ、勿論」
「「「わぁーい! いただきます!」」」
子ども達はゆっくり味わいながら食べ始めた。
うっとりとした表情を浮かべてケーキの味を堪能した居る。
いやはや、クラフト能力で作っただけあるわ。
私の手作りじゃこうはいかない。
まぁ、誕生日の日くらい子ども達が美味しいものを食べる為に、ずるしてもいいよね?
それに七つのお祝いだ、盛大にいこうじゃないか。
「「「ごちそうさま!」」」
「おいしかった?」
「はい、とても美味しかったです!」
「お母様、また作って下さいね!」
「約束ですよ!」
「ええ、勿論」
貴方達が落ち込んだり、何かを成した時は必ず作りましょう。
それが母親としての務め。
子ども達は満腹になったのか、ソファーに座ってゆっくりしていた。
ティリオさんが後片付けをしてくれ、私も休憩していた。
「料理なら私も手伝うのに……」
「まぁ、そうなると多分味が落ちてしまうでしょうね」
「あはは……」
アルトリウスさんとアインさんがそう言った。
確かにそうなる。
クラフトで他人の手を借りることは可能だが、そうすると料理の味や質が落ちてしまうことがありうる。
何せ神様に貰った能力なのでね。
仕方ない。
私はクラフト小屋に行き、ジュースを取りに行く。
クラフト小屋は外見はそのままだが、中は魔法で改築できるらしくジュースを作る場所もある。
ちなみに作ろうと思えば作れる納豆は作ってない。
あれ作ると、下手すると善狐さんの地区の味噌小屋と醤油小屋とかの菌が絶滅する。
醤油と味噌が造れなくなる。
なので納豆は作らないようにしている。
一応醤油と味噌も私は造っているが、売る用では無く自宅で消費するように作っている。
万能な小屋で、今も改築を続けている。
私しか入れないのと、中を見られないらしい。
クロウ達が中を見ようとしたら真っ暗で何も見られなかったらしい。
子ども達も同じだった。
完全に私の領域らしい。
私が死んだらどうなるのか、と少しばかり不安になるが大分先の事だ、後の事は後で考えよう。
……この世界の吸血鬼ってどれ位生きるんだろう?
何もなければ不老不死なのかな?
とかちょっと考えるが、すぐやめた。
きっと今の私を生き飽きた時が死ぬときなんじゃ無いかと。
それならそれは無いだろう。
毎日が楽しくて仕方ないからだ。
子ども達の成長を見守るのも楽しいし、アルトリウスさん達との語らいも楽しい。
夏に王族の方々が来るのはちょっと大変だけど、それも楽しくはある。
だから精一杯生きよう。
今を満喫しよう。
「愛し子様、ご相談があるのですが……」
ファルスさんがやって来た。
まだ、ごたごたしているので帰れていないのだ実は。
「ファルスさん、どうしたんですか?」
「フィリアが年相応に成長し、もう直ぐ20になるというのでお祝いをしたいのですが、何をしたいのか思いつかず……それに渡したいものがありますし……」
「そうですね、良ければ私がフィリアちゃんの晴れの服……じゃなかった、特別な時に着るドレスと、ケーキをプレゼントしましょうか?」
「よろしいのですか?」
「いいですよー気分転換になりますし、ただ今日は疲れたので明日でいいですか?」
「勿論です!」
「あ、ちょっと待って」
そう言って帰ろうとするファルスさんにドレスのカタログを渡した。
「それからドレスを選ぶようお願いしてください」
「はい」
ファルスさんは帰って行った──
それから翌日。
「愛し子様!」
「フィリアちゃん、ようこそ‼ ドレスは決めた?」
「あの、二つまでは絞れたんですけど……」
「いいのよ、二つくらい! 教えてくれる?」
「えっとね……」
フィリアちゃんが選んだのは白いドレスと、水色を基調としたドレスだ。
「うん、分かったわ。ちょっと待っててね」
そう言って体のサイズをクラフト機能で覚える。
そのまま服飾部屋に移動しクラフトでドレスを二着作った。
「はい、どうぞ。今日はお祝いが他にもあるから好きな方に着替えてきて」
「はい!」
フィリアちゃん達の家に行き、着替えたフィリアちゃんは白いドレスを纏っていた。
私は苺と生クリームたっぷりのケーキをホールでテーブルに置く。
「余ったら魔道冷蔵庫に入れてくださいね」
「はい」
「じゃ、後はファルスさん、頑張って!」
「は、はい!」
私はその場を後にした。
翌日二人の指にはおそろいの指輪がつけられていた──
『梢、お前さん最近はケーキ作りにはまっとるのか?』
「ケーキ作る機会が多いだけよ」
『儂もたべたいのぉ』
「はいはい!」
苺のケーキのホールサイズ特盛りならぬ特別に大きいサイズをクロウの前に置いた。
『うひょー! ありがたいのうぉ』
「ゆっくり食べてね」
そう言って外へ出た。
「あー平和だなぁ」
夕焼け空を眺めながら呟いた──
子ども達の誕生日が訪れました。
七五三は、5歳にやったからいいだろうという考えで、家で祝福すれば無問題と梢は考えてクラフトで料理に祝福を沢山そそいでいます、つまり加護を。
より、子ども達はすくすくと育つでしょう、ちなみに梢のは無自覚です。
お祝い=祝福と捉えているので、クラフトで作った料理に加護が大量に入っているのに気付いていません。
クロウは知ってますが止めません、別に悪い事が起きるわけじゃないので。
子ども達は年に一度のこの日を特別に思ってます。
クラフト小屋の話が出ましたが、あそこは梢しか入れません、正確には神々の愛し子以外入れないんです。
クロウは開けれますが、中身が真っ黒で何もみえません、見えるようになるのは梢が死んじゃった時でしょう。
梢が生まれ変わってくるまで、クロウは多分村を守り続けるでしょう、梢が死んだら。もしもの話ですが。
そしてフィリア、まだ国がゴタゴタしていて帰還できません。
なので、村でファルスさんが色々とお祝いをしました、色々と。
ラストのクロウは久々のおじいちゃんモード。
おじいちゃんになっても、食欲はかわりません、食いしん坊です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




