イザベラ達の帰国~そして13年目の冬に~
ムーラン王国の問題が解決し、帰れるようになったイザベラだったが、体力が落ちて帰れなくなっていた。
なので梢達はイザベラが体力をつけられるよう手伝い──
イザベラちゃんの件が問題なくなったので私は気が楽になった。
が、イザベラちゃんの体力の問題が出て来たりしたので見守る。
イザベラちゃんの子ども達は大人しく、静かな子達だ。
が、お母さんの為ならとお母さんであるイザベラちゃんを連れて歩き回っている。
子ども特有の無尽蔵とも思える体力にイザベラちゃんは振り回されているが、お母さんであるというプライドでなんとか乗り切り、体力は結構ついてきた。
「イザベラ様、調子はどうですか?」
「コズエ様、ええすっかり元通り。ムーラン王国の料理も食べられるようになりましたし」
「それは良かったです」
イザベラちゃんは嬉しそうに言った。
「もうすぐ冬ですね……」
「ええ、その前に帰ることになりそうで寂しいけれども……」
「またいつでも来て下さいね?」
「ええ!」
そして、冬になる前にイザベラちゃん達は帰っていった。
村の作物などのお土産を沢山持って。
正確には私達が持たせたんだけどね。
神様が持たせていいって言うから。
「コズエ様、皆様、お世話になりました」
「またいつ来てもいいんですよ?」
「ええ、ありがとううございます」
「エンシェントドラゴン様、此度は王国の改革の件手伝ってくださり有り難うございます、お陰で私はイザベラ達と引き裂かれずにすみました」
「礼ならコズエに言うが良い、コズエが引き受けねば我も神々も何もしなかっただろう」
おい、マジですかクロウ、あと神様達。
「コズエ様、本当に感謝致します」
「あ、うん、まぁ私はきっかけ、作っただけだから……」
本当それ。
クロウと神様達が関わるきっかけを作っただけ。
だからどうか、ロラン君、イザベラちゃんを幸せに。
「ロラン様、イザベラ様達をどうか幸せに」
「……はい!」
「マリーローザ様、カナン様、元気でいてくださいね」
「「あい!」」
音彩がイザベラちゃん達の子どもにそう言って頭を撫でている。
……不敬罪に当たらないかなこれ?
と不安になりつつ、微笑ましそうにみているイザベラちゃんには何も言えない。
イザベラちゃんは二人を抱っこして馬車に乗った。
ロラン君も。
「では、また来ますね」
「はい、またいらしてください」
そう言って馬車を見送る。
馬車はあっという間に遠ざかっていった。
「……」
少ししんみりしてしまう。
「イザベラちゃん、元気でね」
私はそう呟いて家に戻った。
数日後、イザベラちゃんから手紙が届いた。
前よりも過ごしやすい環境になり、子ども達も嬉しそうで、ロラン君は仕事漬けではなく子育てに参加してくれる環境らしい。
勿論、乳母達が基本面倒を見るが、イザベラちゃんが現状最も子ども達を理解しているので、イザベラちゃんも子育てに参加する。
そしてイザベラちゃんの負担を軽くする為に、ロラン君も仕事の合間をぬって、参加する、みたいな感じらしい。
とにかく、今が楽しいし、今後も楽しみで仕方ないことが書かれていた。
クロウと神様に頼んだかいがあったと思って、クロウにはホールケーキ、神様達にはお酒とおつまみセットをお供えした。
どうか、イザベラちゃん達がまたトラブルに巻き込まれたら助けてくださいますように、と。
あと、マルス君達も。
ドミナス王国もムーラン王国もどうか穏やかであってほしい。
勿論始祖の森があるブリークヒルト王国もそうだけど。
何より、穏やかな日々が続くのがいい。
トラブルはない方が安心する。
そうしてやって来たのは──
『冬ですよー』
『冬ですー』
冬だった。
精霊と妖精が飛び交う。
子ども達は他の子ども達と雪遊びに夢中だ。
「コズエ様」
「ミュリーさんに、リィナさんに、クリューネさんじゃないですか」
ルフェン君達の奥さん達だ。
「実は私達、漸く子どもを授かりまして……」
「おめでただけど、大丈夫⁈ 外寒いよ⁈ 体大事にしてね⁈」
喜ばしいが、今は冬、寒い。
「安定したのでご報告に……」
「そういうときは呼んで! お母さんの体に何かあってからじゃ遅いの!」
と、私は叱る。
「「「すみません……」」」
「嬉しいけど、無理にこんな寒い外にでちゃだめよ、足場悪いし、あったかくしても冷えるところは冷えるんだから」
「ミュリー! だからいっただろう、俺が報告に行くって!」
「ルフェン……」
「家に居なくて他の連中と探し回っていたんだ、ダメだろう。こんな寒い時期に」
「三人とも、ルフェン君の言うとおり、気をつけて帰ってね。お祝いの品は後で持って行くから」
「コズエ様、すみません」
「いいのよ」
私はカラカラと笑い、奥さん達に、予備で持っておいたマフラーを巻いた。
「そういうわけだから、体に気をつけてね。このマフラーはあげるから」
「あ、ありがとうございます!」
「もうしわけございません!」
「本当、すみません……!」
「謝らないで、体を大事にして欲しいだけだから、お母さんとお腹の子供の体なんだから」
そう言って私は立ち去る。
後はルフェン君達に任せよう。
「お母様」
家に帰ると音彩がいた。
「あら音彩。晃と肇は?」
「寒くて先に帰ってきたの。あ、ちゃんと言ったよ?」
「うんうん、ホットミルク飲む? 砂糖で甘くしたのを」
「飲む!」
元気よく言うので私はミルクを温め、カップに注ぎ、砂糖を入れてテーブルにちょこんと座っている音彩に渡した。
「はい、どうぞ」
「お母様、ありがとう!」
音彩はそう言ってホットミルクをちびちびと飲み始めた。
「美味しい?」
「うん!」
私は音彩の頭を撫でた。
春になれば七歳になる子ども達。
既にしっかりしているというか、したたかというか、まぁ色々あったが、子ども達が健やかに育っているなら嬉しいことこの上ない。
「「ただいまー!」」
「あ、晃に、肇も帰って来たのね。お帰りなさい」
「お帰り、晃兄様、肇兄様」
少しビックリした。
音彩が晃と肇を兄と認識していることに。
「寒かったでしょう?」
でもそれを誤魔化しての頭の雪をはらってあげる。
「うん、晃兄様と他の子と遊んでたらすっかり冷えちゃったよ」
「だからお母様、温かい飲み物が欲しいな」
「ホットミルクでいい?」
「「うん!」」
私はホットミルクを作り、晃と肇にカップに注ぎ砂糖を入れたものを渡す。
二人はくぴくぴと飲み干していた。
「何をしていたの?」
「人間の子とはかまくら作りと、そりで滑ったり」
「吸血鬼とダンピールの子とは雪合戦したりしたよ!」
「そう」
「音彩はかまくら作り終わったら寒いって言って先に帰ったけどね」
「うん」
「だって寒かったんだもの。今日は冷えるわ」
「そうね、今日は冷えるわね」
そう言って、私も暖めたミルクを飲んだ。
甘く優しい味がして、体が温まるようだった──
イザベラの帰国。
梢は関連した国々で問題が起きないことを祈ってます。
そして冬になり、ルフェン達の妻が妊娠しました。
報告にいくとルフェン達が言ったのですが、自分の口で報告したかったようです。
そして梢と子ども達はホットミルクで体を温めます。
そうして家族の時間を大切にするようです。
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