13年目の秋~クロウからの吉報~
夏の暑さ落ち着いてきた頃。
梢は神々から話をきいたり、料理作りや、畑仕事などに精を出していた。
そして、イザベラの体調管理のほうにも気をつかっていて──
夏の暑さが中盤頃落ち着いてきた。
普通は盛りのはずなのだけども。
デミトリアス神様に聞いた所、イブリス神様の頭痛の元が無くなり、熱が引いたとのこと。
神様も大変だなぁ。
と、黄昏れつつ色々と料理を作ったり、畑仕事に精を出したり、畜産業にも精を出したり、三つ子達と遊んだり色々している。
イザベラちゃんには私が作った料理を作って持って行っている。
いやね、ムーラン王国から入ってきた料理の為の食材とスパイス、そのスパイスに毒が入っているって聞いちゃったイザベラちゃん寝込んで、ムーラン王国の料理が食べられなくなっちゃったのよ。
だから私が作っているってわけ。
私の料理には毒なんか入らないからね!
入っても浄化、もとい解毒されちゃうし!
ただ、これができるのはここに居る間だけなんだよね。
だからイザベラちゃんも少しずつ食べる訓練をしている。
毒入れた奴に関してはクロウが処したらしい、生死は不明。
まいっか。
それより、期限だ。
ムーラン王国に残された時間は少ない。
なのになんで馬鹿なことばっかやってくれる連中がいるのか。
秋がきて、冬になれば期限切れ。
ロラン君とイザベラちゃん達の運命が決定してしまう。
「い~や~だ~」
棺桶の中でもだもだする。
正直気にしたくない内容だが、気にせざるを得ない。
「……料理作ろう」
そうして、中華がゆを作って持って行く、杏仁豆腐付きで。
「イザベラ様」
「あ……コズエ様」
「大丈夫? 今日は顔色悪いよ」
イザベラちゃんはいつもより顔色が悪かった。
「出された料理に毒が入ってる気がして、吐いてしまったんです」
「あー……仕方ないよね、じゃあこれ食べて」
「これは、お米?」
「中華がゆ、とデザートの杏仁豆腐。美味しいよ」
イザベラちゃんはレンゲを使って熱いかゆをすくい、ふーふーと冷ましながら食べて居た。
中華がゆを食べきる頃には顔はピンク色にほてり、汗ばんでいた。
そのあとスプーンで冷えた杏仁豆腐を堪能していた。
「美味しかったわ、コズエ様」
「よかったです」
「……」
「イザベラ様、不安なのですね」
「ええ……」
イザベラちゃんは寝ている子ども達を見つめて言う。
「ムーラン王国の改革が成されなければ、お父様とお母様はムーラン王国を攻め入るでしょう。そしてムーラン王国は属国となり、王国の形を失います。そうなったら私とロラン様は引き離される可能性が高いでしょう。そして私と子ども達も」
「イザベラ様……」
「……デミトリアス神様、どうか小さき者の願いをおききどとけ下さい、私と家族を、ロラン様と子ども達を引き離さないでください」
「イザベラ様……」
神様マジでどうかしてよ‼
と思いながら食器などを下げて家に、戻りお供えのお酒とチーズなどと一緒に紙を送った。
内容は──
『たのみますから、イザベラちゃんとロラン君とお子さん達を引き離さないでくださいー! 一緒に居させてくださいー!』
という物だ。
マジで困った時の神頼みしかできない。
クロウもかなり頑張ってくれるが、無理なときは神頼みしか無い。
『よしよし、わかっておる、儂等にまかせよ』
神様の声が聞こえた。
どうか勝ち確でありますように!
と過ごした夏の日々だった。
夏の終わりが近づくと、ドミナス王国の方々は帰って行った。
クレア様とマリア様達はイザベラちゃんを気にかけている様子だった。
そりゃあ幸せになると思って嫁にだしたのにトラブルに巻き込まれてるからね。
よろしく頼みますとクロウにお願いして帰って行った。
そして夏が終われば──
『秋ですよー』
『秋ですよー』
タイムリミットがまた近くなった。
ぐおおお、神様本当信じていいんですよね⁈
そんな事を気にしつつ今日も料理。
「お母様、ご飯食べた?」
「これが終わったらゆっくり食べるよ」
「本当?」
「本当本当」
子ども達の疑いの目を背中にちくちく感じながら、今日はビーフシチューと焼きたてのクロワッサンを持っていく。
「コズエ様」
「今日は顔色が良いですね、ビーフシチューとクロワッサンを作ってきたんです」
「有り難うございます」
イザベラちゃんはここで三年近く暮らしているし、夏場は来ているからこの村の牛肉の美味しさは理解している、だからビーフシチュー。
「美味しそう……頂きます」
イザベラちゃんは野菜を食べ、スープを飲む。
「ああ、野菜はほろほろとくずれ、スープは濃厚……お肉も柔らかい」
そう言ってからパンを食べる。
「このクロワッサン、本当美味しいわ」
「それは良かったです」
「……もう、秋なのね」
イザベラちゃんは外を見て黄昏れるが、ロラン君が子ども達の面倒を見ているのをみて頬を緩ませた。
「この幸せがずっと続けばいいのに」
「イザベラ様……」
「コズエ様、大人になるってとっても残酷なことなのね」
「……そうかもしれません、ですが子どものままでは居られないのも事実です」
「そうよね……」
なんとかイザベラちゃんを勇気づけてあげたいが問題の部外者である私では励ましにくい。
どうやって励ましたらいいのか……
私はイザベラちゃんにかける言葉が見つからずその場を後にした。
「秋か……」
一人呟く。
そう、実りの秋で喜ばしい季節のはずなのだけども、今回は喜べない。
寧ろ喜べなさすぎて辛い。
イザベラちゃん達の件はそれほど重い。
冬まで残りわずかな時間でどうやって──
『梢』
「うわ⁈ クロウじゃん、どうしたの⁈」
ドラゴンの姿のクロウがやって来て、着地し、人の姿に変貌するとにやりと笑った。
「良い案件を持ってきたが聞きたいか?」
「そりゃあ、聞きたいよ、良い案件って?」
「神々の力添えもあってムーラン王国の改革が達成された! これで、イザベラ達は無事にムーラン王国に戻ることができるぞ!」
「‼ ソレ本当⁈」
「嘘はつかぬ」
『そうじゃよー儂等もがんばったんじゃよー』
神様の声も聞こえる、嘘じゃ無い!
あ、でもと言うことは……
「そっかイザベラちゃんとまたしばらくお別れか……」
「そうだな、イザベラとロランにも伝えよう」
クロウはそう言って居なくなった。
イザベラちゃんは、クロウの言葉で元気になった、が体力が落ちているので、冬まではしばらく体力回復の為の訓練をすることになった。
それが終わったら少しの間イザベラちゃん達とお別れ。
寂しいけれども、イザベラちゃんの幸せを願うなら仕方ないよね。
神様、ありがとう。
私はその日のお備えを豪勢にした。
感謝の意味を込めて──
はい、まずはイザベラ達は無事に国に戻って家族として暮らすことができることが確定しました。
クロウと神様達の力添えがかなり役立ちました。
そして相変わらず無理して無いか子ども達にも見張られる梢。
無理はしてません、ただ精神的にクロウの報告を聞くまでイザベラの前では明るいですが、陰鬱で億劫な日々を過ごしていました。
無事に家族と帰るのはまだ時間ありますが、イザベラ達は引き裂かれることなく一緒にいることができます。
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