暑い夏の一日~イブリス神の不調~
その日はいつもなら過ごしやすい夏の日なのに、猛暑日となっていた。
家の中は涼しいが、外に出ると暑いことに三つ子文句を言う。
梢はそのことに対して──
「「「暑ーい!」」」
ご飯を食べて早々、外に出た三つ子達は不満を言ってきた。
そりゃそうだろう、今年の夏は珍しく暑い。
神様に抗議したところ、色々ありすぎてイブリス神様が熱暴走起こしたので暑いらしい、定期的に雨を降らせるからそれでしのいでくれとのこと。
まぁ、それでも限度はあるので、なんとか涼しいお家で過ごしたい様だ。
お外に出たいが、暑いので出たくないのだろう。
私は大急ぎで冬の妖精の手を使って、冷えるマフラーを使った。
勿論、UVカット仕様。
しかも薄手。
それを作っている最中、子ども等はアイスを頬張っていた。
「はい、これ、涼しくなるように冬の妖精と精霊さんの力を使って加護をつけてあるらしいから」
子ども達は首に巻いていく。
「涼しーい!」
「ひやひや!」
「冷たーい!」
きゃっきゃとはしゃいでいる。
「これなら大丈夫そう?」
「うん!」
「行こう!」
「うん!」
子ども達は嬉しそうに帽子を被って外へ出て行った。
「それにしても、どうしてこう上手くいかないのかしら」
夏場だし、食欲がいまいち。
ブラッドワインも何かものたりいない。
「あ、そうだ、ざる中華!」
私は故郷の料理を思い出す。
「夏っていえばざる中華だよね、よし作ろう! 製麺機もあるし!」
私はクラフトでざる中華を作る事にした。
家族は麺にのりをトッピングするけど、私はしない、シンプルイズベスト。
黄色い麺に、つゆをつける……
長兄と爺様はぶっかけてたけどね。
一応氷を入れて冷たくしておこう。
つゆは少し濃いめに作ってあるし。
「おや、コズエ。見慣れない食べ物だが」
アルトリウスさんが家に戻ってきた。
「ああ、ざる中華っていうの。ニンニクは使ってないから大丈夫安心して」
「なら、いいんだ」
「「「お母様、お腹減った!」」」
子ども達がばんと扉を開けて入って来た。
それに続いてアインさんとティリオさんも戻って来てくれた。
「おや、コズエ。それは何ですか?」
「ざる中華っていうものです、夏場にはこういうのがいいかと」
「ありがとうございます、コズエ様」
「いいえ」
私はティリオさんやアインさんと話していると子ども達はつゆに麺をつけて啜っていた。
「おいしい!」
「おいしい‼」
「おいしい!」
嬉しそうに食べて生き、あっという間に麺は空になる。
「「「おかわり!」」」
「はいはい」
私は麺を湯がき、水で冷やして水気を切って器に盛り付けて出す。
「麺がちゅるちゅる!」
「美味しい!」
「つゆ美味しい!」
子ども達、食レポになってない食レポをするが可愛らしい。
私も食べたが、懐かしさで少しだけ泣きそうになったのは内緒だ。
「王族の人にも出したら」
「いや、流石にローカルフードを出すわけにわ……」
「「「ローカルフード?」」」
「ああ、うんこいっちの話」
危ねー、危ねー。
しかし、王族の人もバテてるだろう。
ならば逆に辛いものをだしてはどうだろうか。
そう思い立ってカレーライスを作った。
「辛い!」
「でも美味しい!」
「もっと食べたい!」
評判は上々だったので、カレーライスを持って行く。
「愛し子様、どうしたのです? 凄く食欲をそそる料理の匂いがしますが」
マリア様が言うので鍋を見せた。
「これはスパイススープ……よりもスパイスが入っていて更にドロドロしていますな」
「カレーっていうんです、この料理は」
「ほぉ」
「お米に乗せて食べてください」
「分かった」
私は更に乗った村産の米の上にルゥをかけて出す。
すると、レモン水を飲みながらマリア様達は完食していった。
「心地良い辛さだ、旨みもたっぷりある、良いな」
「お気に召したなら幸いです」
私はそう言って家へと戻った。
「「「お母様!」」」
「どうしたの?」
子ども達が駆け寄る。
「イザベラ様食欲ないんだって」
「どうしよう?」
「どうしたらいい?」
そう言われて考え込む。
「ガスパチョなら、いいか。スープだし、この季節にはぴったりの冷たさだ」
「「「?」」」
また名前の知らない料理が出て来たので?マークを飛ばす我が子等。
私もそこまで作り慣れてないから、クラフトで作るよ。
そしてクラフト実行し、ガスパチョをつくる。
それを冷たいままで保管できるアイテムボックスに入れて、イザベラちゃんの屋敷へ向かう。
「イザベラ様! 食欲がないんですか?」
「ええ……コズエ様、暑すぎてないの」
少しやつれた様子だった。
「イザベラ様、食べたくないかもしれないけど食べてください。でなければ倒れてしまいます」
そう言って私はボックスから鍋を取り出し、皿にスープをそそいだ。
「わぁ、美味しそう」
「どうぞ」
イザベラちゃんはスプーンですくって食べ始めた。
「美味しい、甘みと酸味ですっきりするわ。トマトの味もいい……」
「それはよかった」
イザベラちゃんはスープを飲み干すと顔色が良くなった。
「本当、今年の夏は酷暑ね。イブリス神様がお怒りなのかしら……」
「あークロウ曰く、イブリス神は寝込んでてこうなってるらしいから」
「あら、そうなの?」
「だからお怒りとかないから、気にしないで」
「……そうよね、ここには神々の愛し子であるコズエ様がいるんだもの、お怒りになるのはおかしいわ」
「はははは……」
空笑いを浮かべて私はロラン君の分もイザベラちゃんに渡してその場を後にする。
そして自室で果物をお供えする。
「どうか、イブリス神様がいつも通りに戻られますように!」
願いを込めて。
その直後頭に響いた。
『梢ーいつもすまんの、お供え物は熱で寝込んでるイブリスの奴に食わせるからの。余った奴だけ儂等でいただくわい』
さようですか──
『全くムーラン王国のゴタゴタで寝込むとはこいつもメンタル弱いのぉ』
なんですと?
ムーラン王国ごたついてるの?
『そうじゃよ、エンシェントドラゴンの奴がかなり必死になっているからのぉ』
無くなったらイザベラちゃん達が不幸になるからです!
『そうならぬよう、儂等も尽力するぞ』
お願いします、と私は神様に祈った──
三つ子は夏を楽しみたいのに暑いのが嫌だそうです。
なので、冷たい小川とかで子ども等と遊んでいるでしょう。
吸血鬼の子ども達とは多分家の中で遊ぶでしょうが。
夕暮れ時になっても猛暑なので日中はかなり大変だったならイザベラは体調を崩すのも仕方ない、何せ食欲が湧かないのだから。
そしてムーラン王国、ごたごたはまだ続いていますが、イブリス神がぶっ倒れる余力ことができるということは解決も近いのかもしれません。
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