春が終わり、13年目の夏が来た~音彩は喜ぶ~
6歳になった梢の子ども達は元気いっぱいだった。
そんな子ども達だが、イザベラとロランの件には不満がいっぱいの様子。
梢がなだめたつもりだったが──
六歳になった子ども達は相も変わらず元気元気。
元気いっぱいすぎてこっちが振り回されちゃう。
それでも私達の事は気にかけたくれるし、イザベラちゃん達の事は気にかけてくれる。
優しい子だ。
ただね──
「何でイザベラ様とロラン様は二年前後経過したら帰るか別れなきゃいけないの」
「それはロラン様の国で問題があって、それをどうにかできなかったらそうなる可能性が高いのよ」
「何それ!」
「酷いよ!」
「お母さんも酷いと思う、でも……産まれというのはそれだけでそのヒトを縛ってしまうの」
「「「むー」」」
子ども達納得はしてくれない。
何かやらかさないといいんだけど……
はい、フラグでした。
子ども達やらかしました。
クロウが眉間にしわを寄せてました。
「あの三つ子には喋らん方がよかったな」
「マジか」
どうやら子ども達、妖精と精霊を使ってムーラン王国とドミナス王国でやらかした様子。
内容はこうだ。
「「「イザベラ様とロラン様を引き裂く要因全部潰して!」」」
精霊と妖精達は見聞きして判断して大臣や国民に攻撃等をしかけていた様子。
正妃マリア様からクロウが即座に相談を受け、子ども達を問いただして発覚した。
子ども達は。
「「僕悪くない!」」
「私も悪くない!」
との事だった。
クロウが直々に叱りつけて、止めさせていた。
「我が敏感な問題故丁寧に扱っていたのにお前達が強引に力でどうにかしようとしたから事態は悪化しかけたのだぞ? そこを理解できぬなら手を出すな!」
と、ガチなクロウに叱られ半べそかいて三つ子は私の元にやって来た。
「「「クロウおじちゃん怖い!」」」
よほど怖かったのだろう、しばらく私にしがみついていた。
ちなみにこの時はパパ達はイヤイヤモードに突入して私じゃ無いとダメな感じになっていた。
クロウと同じ男性だからだろうか?
それでアルトリウスさん達ガチでショック受けてた。
まぁ、仕方ないよ。
クロウに凄く怒られてたんだから。
でも、次の日になったらパパ達にも近づくようになったけどね。
代わりにクロウには絶対近寄らない。
クロウが姿を見せると私の元に逃げ込んでくる。
どんだけ叱ったのだと思うが、ソレも仕方ない。
イザベラちゃんとロランくんはかなり大変な状況なんだから。
勝手に手を出さないように言っておくべきだったとは思う。
子どもって予想外の事ばっかするよね、本当。
まぁ、そんなこんなで多忙な春は終わりを告げた。
そしてやって来たのは──
『夏ですよー』
『夏だよー!』
13年目の夏がやって来た。
そして勿論、手紙がその前にやって来た。
ドミナス王国から。
私はイエスの返事を出して、そのまま手紙を送った。
そしてやって来たのが──
「おお、愛し子殿!」
「あれ?」
アルフォンスさん達だった。
「ルキウス様と、マルス様達は何かあったのですか?」
私が問いかけると、アルフォンスさんは笑ったまま。
「ルキウスの事だが、マルスから聞けば愛し子殿の娘に熱中しすぎて嫌われているとか!」
「ええ、はい」
私は苦笑いを浮かべる。
「ルキウスにも、愛し子の愛娘は諦めよと我らも言っているのだが、中々言うことを聞かなくてな、仕方ないから婚約者となる貴族の娘達と婚姻関係ができるまで森に来ることを禁じたのだ」
「うへぇ」
ちょっと罪悪感が湧く。
「愛し子殿のせいでは無いぞ、あれほど嫌われているのに、自覚せぬルキウスが悪い。もう少ししたらマルスとエリザを王宮に残して、他の側妃達の子等は来させるようにする予定だ」
「はぁ」
良い事なのか、悪いことなのか分からない。
「お母様、このおじ様は?」
とことこと音彩がやって来た。
「ドミナス王国の国王様、ルキウス君のお祖父様って言えば分かる」
「ルキウス……」
あ、すっげぇ嫌そうな顔をした。
とてもじゃないが、見せられないお顔だ。
そんなにルキウス君が嫌いか、音彩。
「愛し子殿の娘さん、お名前は」
「音彩……御坂音彩」
「ネイロか。極東の呼び名だな」
「ええ」
「ルキウスの何が気に入らんのかね?」
「やめてっていうことばっかりするの! しつこいの!」
アルフォンスさんにネイロはこれでもかと言わんばかりに抗議をする。
「それは、ルキウスが悪いなぁ」
「……おじ……国王様は、私をルキウスのお嫁さんにさせたい?」
「相思相愛であったなら、応援のしようがあるが、お嬢さんがそこまで嫌っているのならできないなぁ」
「ルキウスは、当分こない?」
「だろうな」
「やったぁ!」
音彩は私に抱きついた。
私は抱っこして、音彩を撫でる。
「すみません、国王様」
「いや、よいのだよ。愛し子殿の愛娘には森のものがよかろう。いや、愛し子殿の御子は森の民と結婚するのがよかろう」
「お手数おかけしてすみません」
うーん、確かに私の子を外にだすとかなり危険だ。
晃は吸血鬼、肇と音彩はダンピール。
どちらも忌避される存在だ。
だったら、村の中での結婚のほうがいいだろう。
うちの子たちよ、結婚相手はトラブルのない相手を頼むぞ。
ど、心の中で祈った。
「ルキウスの件はすまぬな、もっと早めに対応するべきだった」
「いえ、いいんですよマリア様」
マリア様にお酒をつぎながら言う。
ちなみにお酒はシードル。
「それにしても、ルキウスが来ないと知っただけであそこまで楽しそうにしているのは初めて見た」
「ネイロ様は、それほどストレスがかかっていたのね」
クレア様もシードルを飲みながらしみじみと言う。
「まぁ、そういうこともありますよ」
「次来る時は愛し子様に何かしないといいのだけど」
「……確かに」
来るなら婚約者達と来て婚約者と交流してくれ。
音彩とは普通の交流を頼む。
そんな事を考えながら、私もシードルを飲み干した──
はい、子ども達やらかしました。
ちっちゃい子故にやっちゃうんですよ、融通が利かない感じに。
でクロウ激おこ。子ども達がトラウマになるくらい叱りつけたご様子。
それ位ムーラン王国の件はさじ加減が難しいのです。
そして夏、ルキウスを置いて来訪してきました。
国王と正妃、側妃達が来ました。
国王は音彩の意見を子どもだからですまさず、尊重しています。
ルキウスは……多分無理でしょう、音彩以外が見えなくて他の貴族の令嬢の良い点が見えてない。
これはこれなさげなフラグ。
梢もルキウスのことは頭痛の種、どうにかしてほしいと切実に願っています。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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