12年目の春~三つ子の誕生日~
12年目、梢の子ども達の6歳の誕生日がやって来た。
梢は子ども達の為に豪華な食事を用意する。
そしてそれを見た子ども達は──
雪がかなり積もる冬を終えると──
『春ですよー』
『春ですー』
春がやって来た。
12年目の春。
そして──
「お誕生日おめでとう、晃、肇、音彩」
「「「うわぁ……!」」」
「今日はいつもより豪勢にしてみたわ、食べて」
テーブルに並ぶご馳走とデザートを見て目を煌めかせる三つ子達。
「あれ、お母様、ケーキは?」
「それを食べた後に出してあげる」
「わぁい!」
「何のケーキ?」
「苺のケーキよ」
「わぁ!」
「苺のケーキ好き!」
子ども達はきゃあきゃあと喜んでいる。
「アルトリウスさん達も食べてね、ニンニクは使ってないから」
「気遣い感謝だ」
「アルトリウスはニンニクがダメですからね、ダンピールですし」
「仕方ないことですよね」
「お父様、早く食べよう!」
「早く早く!」
「お腹空いた!」
「晃、落ち着きなさい」
「肇もですよ」
「音彩、分かってますからそんな目で私を見ないでください」
腹ぺこ子ども達にパパ達はタジタジ。
まぁ、仕方ないか。
宴とは違う、
年に一度の自分達のためのお祝いの日なのだから。
いつもと違って豪勢な料理に目を輝かせているしね。
「「「いただきまーす!」」」
「はい、いただきます」
子ども達は普段は出されない鶏肉料理や牛肉料理を食べている。
私がこっそり、食肉用として育てているものだ。
豚肉はわりと頻繁に食べるが鶏肉と牛の肉はあまりない、ジビエ系統はあるが。
ローストビーフやフライドチキンなんかに手を出している。
そしてビーフシチュー何かは一滴も残さないように食べて居る。
それは夫であるアルトリウスさんやアインさん、ティリオさんも同じだ。
普段食べないご馳走にありつけているのだから。
「お母さん、ケーキ、ケーキ!」
「はい、まってね」
私は立ち上がり、魔道冷蔵庫から苺のケーキのホールを出す。
チョコレートの板を三つ並べそれぞれにハッピーバースデーという文字と名前を書いている。
「じゃあ、切り分けるね」
そう言って切り分けて、チョコレートの板を三つ子のケーキにのせる。
「わぁい! チョコレート!」
「これ好き-!」
「音彩も!」
「大事に食べてね」
「「「うん!」」」
そう言って子ども達はケーキを頬張っていく。
「いやはや、この苺のケーキは本当に甘くて美味しい」
「果物を使っているがそれとは違う甘さだ」
「コズエの創作能力は凄いな」
「あははは……」
まぁ、クラフトで作ったから否定はできない。
だって不格好なホールケーキなんてみっともないじゃん?
せっかくの花形なんだから。
ケーキを食べおえた三つ子ちゃん、しかし、まだまだ何か物足りなさそう。
「まだ、食べたい」
「うん」
「食べたいの」
「ええー?」
どれだけ大食らいなのうちの子達、と思っていると扉のチャイムが鳴る。
「はぁーい!」
私は玄関に向かった。
そして開けるとシルヴィーナが立っていた。
「シルヴィーナ?」
「今日はコズエ様の御子様達の誕生日と聞きまして、村の者で料理を用意したのですが……」
「「「食べるー!」」」
「ちょ、こら!」
あれだけ食べてまだ足りないのかこの子達、将来が心配だ。
それに何かほっとしているシルヴィーナがいる。
「ああ、クロウ様に相談してよかった。きっと食べ足りないと言うだろうから用意しておけと」
「クロウェ……」
先読みというか、何で親の私より子どもの事情知ってること多いんだろうね!
文句言いたいけど、今回は助かった!
子ども達は村人達のジビエ料理と、私が教えたフルーツタルトを堪能して満腹になると、子ども達同士と遊んで回り、それが終わるとすやすやと眠ってしまった。
よく食べて良く動き、よく眠る。
まぁ、いいんじゃないかな?
「コズエ」
「なに、クロウ」
夜遅くにやって来たクロウを部屋に入れてホットミルクを出す。
「子どもと夫達はどうしてる?」
「子ども達は三人とも寝ちゃった、アインさんとティリオさんは寝た、アルトリウスさんはちょっと吸血鬼地区の人に呼ばれておでかけ中」
「なるほど」
「ありがとうね、子ども等がお腹を空かせているの予測して」
「何、成長する為に他の子どもより栄養が必要なのを言っただけだ」
「そっか、じゃあこれからは食事に注意しないとね」
「そういうことだ、ところで我にもケーキは」
「用意してるよ」
どうせ、何かに理由つけてケーキねだると思ってたから苺のケーキのホールもう一個実は作っておいてた。
むしゃむしゃと食べている。
お前の胃袋も相当だぞ、と言ってやりたい。
何せ、村の人達が作った料理かなり食ってたからな、私は見ていたぞ。
「コズエ、お前ももう少しは食った方がいいぞ?」
「何で?」
「お前は食べたものを魔力として蓄えることができる、だから何か起きた時の為に蓄えるほうがいい。何せ、お前の愛し子の力で作物は育ってるからな、常に力を行使しているようなものだ」
「分かった……ってなんで今更?」
本当、今更過ぎる内容だ。
もっと早くに聞いておけば良かったと思うような内容なのだ今の言葉は。
「気付いていると思ったのだが、子育てやら何やら見ていると全然気付いてないなと思って言った」
「確認とって欲しいなぁ」
ちゃんと知っているかどうか、いや本当!
「ところで、三つ子の事だが」
「何?」
「既に聖人、聖女としての力と精霊と妖精の愛し子の力を使いこなしている」
「ファ⁈」
思わず奇声を上げてしまう。
「マジで⁈」
「本当だ、無自覚ではなく、自覚ありで使ってる」
「うわ、うちの子達すげぇ」
「だからその分食らうのだ、料理の量を増やしてやれ」
「うん、アルトリウスさん達にも伝えておくわ」
「それがいい」
喜ばしい事だが、少しだけ不安ができた。
「ねぇ、それが原因で連れ去ろうとする奴とか……」
「そんな輩はこの森には入れないし、妖精と精霊を操っても子ども等が撃退するだろう」
「な、なら良かった……」
「それに我もいるしな」
「……そうだね」
何だかんだで頼りになるクロウも居る。
シルヴィーナやアルトリウスさん達も居る。
私も、しっかりしなきゃ、お母さん、なのだから──
子ども達の誕生日を祝いました。
前書きにあるとおり、子ども達はこの話で6歳になりました。
早いですね。
そして大食い、力を行使すると大食いになるようです。
梢はその自覚がないのも無理につながっていたのが実は隠されていました。
これから梢は自分の料理にも気をつけるでしょう。
クロウはちゃんとしていますが、食い意地はってるのでケーキ寄越せとねだります。
梢の甘味は他の甘味と比べものになりませんから。
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