中々悪癖が直らない梢
梢は一日休まされた後、ブラッドワインとサンドイッチを食して外に出た。
そこでも、子ども達に食べたものを聞かれ正直に答えると──
「しくじった……」
強制的に休まされた翌日、私はため息をついてそう言って食堂へ向かった。
ブラッドワインとサンドイッチを食べ、外に出る。
子ども達が作物を収穫していた。
「「「おかあさま‼」」」
私の姿を見るなり駆け寄って来た。
「もうへいきなの?」
「平気よ」
「なにたべたの?」
「テーブルに置いてあったサンドイッチとブラッドワインを頂いたわ」
「なら、だいじょうぶ!」
「「「ねー?」」」
三人は顔を見合わせてニコニコ笑っている。
「どうして笑っているの?」
「おとうさまたちのやくにたてたから!」
「ぼくたちおかあさまむりしているのみぬくのちょっとたいへん!」
「だからみぬけてよかったの!」
「は、ははは……」
私は苦笑するしかなかった。
父親達……もといアルトリウスさん達の指示で私の疲労具合が見抜けて母親である私を休ませれたのがかなり嬉しいのだろう。
そしてそれを父親達に褒められたのだろうな。
いかん、ますます私の包囲網ができあがってる。
どうしよう。
「コズエ」
「うぇあ⁈」
呼ばれたので振り返るとアルトリウスさんがいた。
「コズエ、もう体は大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫よ!」
「おかあさま、ぶらっどわいんのんで、さんどいっちたべたって」
「用意しておいたものか、それだけだと言ったか?」
「うん、それしかいってない!」
「……」
アルトリウスさんは家に入った。
少しするとでて来て、
「ああ、それ以外は口にしてないな」
「なにしてたの?」
「母さんが嘘をついて他のもの──マナの実とリラリスの実のジュースを飲んでたりしたか確認だ」
「飲んでたの?」
「いや、飲んでいなかった。たまに母さんは誤魔化すからな私達を」
と言って視線が四人分こちらに向けられる。
私はそっぽ向いた。
アルトリウスさんは嘘は言っていないからだ。
四人のジト目にはちょっと耐えられない。
「コズエ、起きたのですか?」
「コズエ様、お体は無事ですか」
「もー! 心配しすぎ! 大丈夫だって!」
アインさんと、ティリオさんもやって来たので私は頭にきたので大声を出してしまった。
子ども達びっくりしてる。
まぁ、そうだろう、大声を上げるなんてことは控えてたから。
子ども達が目を潤ませる。
あ、しまった。
「「「びぇああああああ‼」」」
ギャン泣き。
罪悪感MAX。
それぞれのお父さん達が抱っこしてあやし始める。
「晃、あれはお前達に向けられたものじゃないぞ?」
「そうですよ、肇、だから泣き止んでください!」
「音彩、お母さんは怒ってませんよ、怒ってませんよーだから泣き止んでくださいな!」
「ど、どうなさったのです⁈」
シルヴィーナがやって来た。
「いや、久々大声で文句言ったら、子ども達が怒鳴られたと勘違いしてギャン泣きしはじめてどうしたものかと……」
「ああ……」
私はなんとか怒ってないことを子ども達に言ってあやした。
1時間かかったが、漸く泣き止んでお菓子を今食べている。
「つ、疲れた」
「あれほど大泣きしたのは赤ん坊の頃以来だな……」
「ですね……」
「本当に……」
「うかつに大声が出せなくなった……」
三人に文句を言う時は小声じゃないとダメだな、うん。
「はぁ~三人とも心配症すぎる……」
私が小声で文句を言うを、三人は盛大にため息をついた。
「なによ」
「コズエ、本当自覚無いのは悪いぞ」
「その通りですね」
「ええお二人のおっしゃる通りです」
と呆れられた。
なんでじゃ、ちくせう。
「コズエ様、自分の体の不調は知覚できるようにした方がいいですよ」
「だから無理してないってばー。シルヴィーナまで……」
「いや、お前は自分の体の状況を知覚しそれに合った態度を取るべきだ」
「クロウまでもか……」
味方がいない。
そんなに無理してるかなー私?
「そんなに私無理してる?」
「親になってから無理の度合いが増えた格段に」
「そうですね」
「はい」
「子どものためにと無理をしてらっしゃいます」
「あと、村の事を色々考えたりとかな」
ぐむぅ。
一理あるから反論できない。
「梢、村を思うのも、子らを思うのも、良い事だ。だが自分を削りすぎてしまうのは良くはない」
「でもさぁ……」
「お前にはアルトリウス達という夫と、我ら、そして村人達がいる、頼り、頼られ、それができる間柄だろう」
「うーん?」
そうなんだろうけど、なんかなー、他のご家庭も自分の子どもの事で大変なのに、私の子を押しつけるのはどうかと思うし……
「おかあさまーおそとであそんできていーい?」
「いーい?」
「カイルおにいちゃんとあそびたい」
子ども達がおやつを食べ終えてそう言った。
「あー、うん。いいよ。でも迷惑はかけちゃダメよ?」
「「「うん‼」」」
ぱたぱたと走り去る三つ子達。
「やっぱり子どもは元気なのが一番よね」
「梢そう言って話をずらそうとするのはいかんぞ」
「ちっ」
舌打ちする私。
「いいじゃん、子どもの事なんだから。ところで、ティリオさんはカイル君と音彩が仲良くすることに文句はないの?」
「子どもですし、それに村の中で育った子なら文句はありません」
考えが変わったようだ。
「へー」
「ただ、王族には絶対嫁がせませんが」
あ、ルキウス君のことだー。
相当神経質になっている、ここは変わってない。
「まぁ、神経質になるのもしかたないか」
「当然です、クロウ様」
「梢、お前は何でもかんでも悩みすぎだ。わかったら悩みをちゃんと我らに打ち明けろ」
「はーい」
「信用ならん返事だな……」
「はい!」
「それでいい」
全く、なんて面倒なドラゴンだ、クロウは。
早くなんとかならないかなぁ?
ムーラン王国のことだってあるし、イザベラちゃん達の事もある。
相談できるのは確かにアルトリウスさん達にシルヴィーナ、クロウだけなんだよねぇ。
正妃マリア様に相談するの手紙出すのはちょっと違う気がするし。
まぁ、無理しないよう頑張って行くか。
梢は色々やることが多いと認識しているから無理しちゃう癖が中々抜けないのですよね。
心配ごとも多いのもあります。
夫達は、梢を信用していますが、無理する事に関しては信用してません。
だから確認とか色々しております。
それに対して梢も心配されすぎて我慢できず大声で怒鳴りました。
結果、子ども達がギャン泣き。
親総出であやす羽目に。
普段そういう声をださない梢の反応だったから子ども達はびっくりして泣いちゃったんですよね。
クロウやシルヴィーナも梢の無理する癖には心配しています。
クロウに至っては悩みを抱えているのを見抜いていますが、梢の悩みは割と深刻な内容が多いです。
イザベラのムーラン王国の件とかそういうの。
クロウに頼るしかないなぁと思いつつ、相談できる相手の少なさと、どうにもできない歯がゆさに梢は悩んでいます。
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