12年目の秋~無理した梢~
秋が近くなり、ドミナス王国の王族の者達が帰って行く事になった。
だが、ルキウスが駄々をこねて帰らないといい、困り果てるマルス達。
そんなルキウスをつまみ上げて馬車に連れて行くマリア。
動じないマリアに感心する梢は、馬車を見送る──
少しずつ涼しくなり、秋が近づいて来た。
「では、そろそろ戻るとするか」
「僕、まだ戻りたくありません!」
「ルキウス、お前は王族なのだぞ、革命が起きた訳じゃ無いのだ、戻るぞ」
「いーやーでーすー!」
ジタバタと暴れるルキウス君をひょいと抱きかかえてマリア様が馬車に乗り込む。
マルス王太子とエリザさん達が頭を下げて同じように馬車に乗り込んで、森を立ち去っていった。
「マリア様、強い……」
「正妃を名乗ってるだけはあるな」
「そういうものかなぁ?」
クロウの言葉に私は首をかしげる。
「しかし、ルキウス君。年々音彩への執着が増してるというか……」
「確かに」
ルキウス君には悪いが、君は貴族の御息女達と結婚して貰いたい。
うちの子を王族に出す予定はさらさら無いのでね。
「ところで、音彩は何をしている──」
音彩の方を見ると、お邪魔者が居なくなったと言わんばかりにカイル君にべったりしている。
「カイルおにーちゃすきすきー♪」
なんて言っている。
これはどう見ても脈なし確定だぞ、ルキウス君。
と、本人の居ないところで思った。
「これは、ルキウスの望みは叶わないな」
「クロウ、敢えて口にしてなかったことを言うのはやめて」
「だが、本人は居ないだろう?」
「居なくてもよ」
ルキウス君、結構哀れに感じるから。
「音彩、帰るわよー!」
「はーい! カイルおにーちゃん、ばいばい。またね」
「うん、またね」
機嫌よさげに私に音彩は抱きつき抱っこをねだってきた。
私は音彩を抱っこして、そのまま家に戻った。
そして食事中機嫌良さそうな音彩がカイル君と遊べたのを楽しげに報告して、晃と肇がそれを頷いて聞いていて、ちょっと複雑そうな顔をしているティリオさんがいた。
食事を終えてダンピールと吸血鬼の子等と遊びに出掛けた晃達を見送り、私はアルトリウスさんと話をした。
「──てなことがあってね」
「なるほど、音彩はカイルを今は好いているのか」
「そういうことになるでしょうね」
「……」
「どうしたのティリオさん」
複雑そうな顔で無言になっているティリオさんの顔を見る。
「あの子がいつか嫁に行くのを考えると複雑です……」
「婿取るのもあるのかもしれないわよ」
「いえ、晃達がいるのでそれはないでしょう」
「そうかな」
まぁ、結婚するしないは本人達の問題だ。
ただ、相手を見誤ることはないだろう。
けれども、今は純粋に子ども時代を楽しんで貰いたい。
危なくない範囲で。
大怪我なんてされたら心臓が持たないからね。
そんなこんな日々を過ごしていると、秋が訪れた。
『秋ですよー!』
『秋ですー!』
精霊と妖精が飛び交っている。
「あきー!」
「あきだよー!」
「しゅうかくなのー!」
子ども達はせっせこと収穫作業に勤しんでいる。
収穫作業の前はクロウの勉強とかで大変なのに。
これぐれたりしないよね?
反抗期酷かったら私寝込むよ?
いや本当。
「おかあさまどうしたの?」
「なにかかんがえごと?」
「おなやみ?」
子ども達が不安そうに近づいて来た。
私はなんとか笑顔になって、
「晃達は、皆と遊ばなくていいの?」
「うん」
「まだ、そこまでかげんできないし」
「だからのこったさくもつしゅうかくするの!」
「無理してない、三人で遊んでていいのよ?」
私は不安になって言う。
三人はぽかんとしていたが、顔を見合わせて頷いたかと思うと私に抱きついてきた。
「ど、どうしたの?」
「ぼくたちはすきでおかあさまのおてつだいしてるの!」
「だからそんなこといわないで!」
「わたし、おてつだいすきなの!」
私は子ども達を抱きしめた。
本当いい子達で、愛おしい。
「ほんとう、いい子過ぎて心配よ、お母さん」
「だいじょうぶだよー」
「そうそう」
「あそぶときはあそんでるしー」
とちょっとずれたことを言っているがそんな所も愛おしい。
可愛い私の子ども達、どうか健やかに──
「子ども達はもう寝付いた」
子ども達の遊びを見守り、眠るまでアルトリウスさん達と見守っていた。
ティリオさんとアインさんは日中で生きる存在だから大分前に眠ってしまっている。
「私達もそろそろ寝ないと、もう直ぐ夜明けだわ」
アルトリウスさんに言うと、アルトリウスさんは手を取り、私を寝室の棺桶に誘導した。
「お休みコズエ」
「お休みなさい、アルトリウスさん」
そうして秋の一日は終わりを告げた。
そして夕方。
「おかあさま!」
「おきて、ゆうがただよ!」
「わたしたちのじかんだよ!」
と、子ども等が先に起きて私を起こしに来た。
「ああ、ごめんね。疲れてぐっすり寝てたみたい」
「おかあさま、だいじょうぶ?」
「おつかれ?」
「まなのみとりらりすのみのじゅーすのむ?」
「心配してくれてありがとう、大丈夫よ」
と、言いつつ、マナの実とリラリスの実のジュースを飲む。
体が軽くなった。
やっぱり季節の変わり目は疲れるなぁ。
「さて、今日もお仕事頑張りますか」
「おかあさま、おとうさまたちからのことづてー」
「ことづてー」
「え、何?」
「もしまなのみとりらりすのみのじゅーすのんだらこういえって」
「⁇」
「「「おかあさま、あなたはほんじつおやすみのひです、やすんでください」」」
「げぇ⁈」
しまった、しくじった!
「というわけでかんおけに」
「ごーごー」
「おやすみおやすみー」
「ちょっとまって……うわ何、力つよ!」
子ども達に押されて再び棺桶で休まされる私。
「やっぱり無理してましたか」
「そうみたいですね」
「ああ」
待機していたアルトリウスさん達に覗き込まれそう言われると、叱られる羽目になった。
うわーん、無理してたつもりないのにー!
ルキウスの音彩への執着はクロウ達が話している通り年々酷くなってます。
それも、音彩がルキウスを嫌がっている理由の一つです。
また、マリアは梢の作物やワイン等でかなり健康になり、また年不相応な若さを保てるようになっているのでマルス達よりかなり強いです。元々武に長けた人なのです、実は。
音彩はカイルの事が大好きです、無自覚ですがloveが混じっているかと。
そしてティリオが複雑なのは父親特有のアレです。
さて、秋になり梢は結構寒暖差の生で疲労が蓄積してました。
なので子どもを使って夫達は梢が無理しているのかどうかを見てました。
そして見事引っかかる梢。
秋は色々ありすぎて無理してる自覚が薄くなるんですよ梢は。
結果はごらんの通りですが。
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