ランスロットとネヴィアの子~祝福の宴~
久しぶりにのんびりと村を散策していると、赤子を抱っこしているネヴィアとランスロットと遭遇する。
いつ妊娠して出産したか問いかける梢。
二人はロガリア帝国出身だから祝われるべきではないと言い、それに対して梢は──
久しぶりに村を散策しているとネヴィアさんとランスロットさんに遭遇した。
ネヴィアさんの抱っこ紐の中には小さな赤ちゃんが居た。
「あの、いつ出産を?」
「先日です」
子どもを産んでからめまぐるしい程に忙しかったので妊娠したという情報が来ていなかった。
と言うか、誰も教えてくれなかった。
「あの、どうして妊娠したのと出産したのを教えてくれなかったんですか?」
取りあえず、自分の不手際を置いといて尋ねる。
「私達出身がロガリア帝国でしょう? ですから、あまりこういうのをお祝いするのは良くないんじゃないかって」
「私は気にしすぎだと言ったのですが、ネヴィアがどうしても、と」
「気にしすぎー! お祝い、遅くなったけどやるから何か食べたいものとかある⁈」
「そうですね、今の時期ですと冷静のスープと、パン、それからベリィのアイスが食べたいですね」
「ランスロットさんは⁈」
「え、わ、私も同じので大丈夫です」
私は頷くとお祝いの準備を始めた。
元ロガリア帝国出身だけど、二人はロガリア帝国のしている事を批判していたから幽閉されたり不遇な扱いを受けていた。
だったら、出身地なんて気にすることはないと思う。
私は。
「で、ティリオさんとアインさん、不満はありますか?」
念の為二人にも聞いておいた。
「ありませんよ」
「と言うか、妊娠を知ってましたがお二人からコズエ様に負担がかかるし、ロガリア帝国のしてきた事を考えれば祝われるべき立場ではない、と」
「まぁ事実ではあるけど、二人がそれを負担に思う必要はないと私思うわけ」
「確かにそうですが、あの二人ならそう思うでしょう」
「ロガリア帝国の出身、しかもネヴィアさんは仮にも王族だった、その罪を背負うべきだと?」
私はゴミを投げるポーズをとる。
「そんなもの、折りたたんでゴミ箱に投げ捨てるべき!」
マジでそう。
あの時、この二人はこの森で幸せに暮らして欲しいのに、それを邪魔する要素になることは捨てて欲しかった。
「村で盛大に祝うよ!」
「勿論ですとも」
「はい、畏まりました」
「ところでアルトリウスさんは?」
「今晃達の面倒見てますよ」
「Oh」
やべーやべー。
子どもの面倒も見なきゃなと心から思った。
そして料理の支度をすると、子ども達がわらわらと寄ってきた。
「なにをつくるのおかあさま?」
音彩がてとてととやって来て私に尋ねる。
晃と肇もついてきた。
「冷製スープよ、トウモロコシの。あと、ブラッドフルーツのスープ、これも冷たくして作るの」
「てつだう!」
「「ぼくも!」」
「その前に手を洗ってきなさい」
「「「はーい‼」」」
三人は頷き、家に手を洗いに戻って行った。
その間に、少しだけ作業を進め、子ども達が戻って来たら本格的に作業を進めた。
そちらの方がこの子達も機嫌が良くなる。
子ども等に料理の方法を教えながら、色々と進めていく。
普通のスープ作りとはちょっと違うからね。
そうこうしていると、スープが完成した。
「コズエ様、アイスは用意できました!」
「ありがとう、シルヴィーナ!」
「いいえ! これ位ならいくらでも!」
シルヴィーナは明るいなぁ、この明るさに何度救われた事か。
「母様、愛し子様とどんなお話をしていらっしゃるの?」
「母さん、愛し子様の役に立つってどうすればいい?」
「シルフィ、出産のお祝いのお話をしていたの。レイそれはこれから覚えて行きなさい」
シルヴィーナのお子さんの双子のシルフィちゃんとレイ君だ。
まだ六歳なのにしっかりしてるなぁ……いや待てよ?
ハイエルフの成長ってどんなだったっけ?
……聞くの止めとこ、何か複雑だった気がする。
「コズエ、できたのだろう? 呼んできたぞ」
「クロウ、ありがとう」
クロウが、ネヴィアさんとランスロットさんを連れてやって来た。
「あの、こんなにお祝いして貰わなくても……」
「私が、したいんです!」
妊娠を公にしたときとか、出産祝いでお祝いするのがこの森でやって来た事だと思う。
「ところでお子さんの名前は?」
「トネリコです、女の子です」
「なるほど……」
トネリコ、確か木の名前だけど……
一応、植えては居たけど。
「愛し子様が植えていた木の中にあった名前です。素敵だなと思いつけました」
「そうなんだ……」
「いや、でしたか?」
「ううん! 寧ろ大歓迎! 木も喜ぶよ!」
「ならよかったです」
私は心の中で安堵の息を吐く。
「じゃあ、今日の宴を楽しみましょう!」
「「「「「おー‼」」」」」
そうして宴は始まった。
「ネヴィアさんあかちゃんみせてくださいな」
「はい、いいですよ。音彩様」
音彩は抱っこされてすやすや眠っている赤ちゃんにべったり。
「かわいいねぇ、かわいいねぇ」
頬を緩ませて居る。
それに混じろうとしているルキウス君はマルス様とエリザ様に止められていた。
多分確実に音彩が怒るの目に見えてるんだろうなぁ。
私もそう思う。
「ぼ、僕にも見せてくれませんか?」
「はい、いいですよ」
「カイルおにーちゃん!」
カイル君が少しだけ距離を置いてトネリコちゃんが寝ているのを眺めている。
「カイルおにーちゃんどうしてちかよらないの?」
「僕は、吸血鬼、だからね、だからあんまり近づくと赤ちゃんが泣いちゃう」
「わたしはダンピールだよ?」
「音彩ちゃんは、コズエ様の……愛し子様の御子様だから……」
「そっかぁ……」
しょんぼりする音彩。
「ごめんなさいね」
ネヴィアさんも謝罪する。
「いえ、いいんです。可愛い赤ちゃんを見ることができたから」
「そうですか……」
「うん、赤ちゃん、可愛い……!」
少し騒がしいのに、トネリコちゃんはぐっすり寝てる。
さては将来大物か?
「ネヴィア、先に食事を、私が抱っこしてるから」
「ええ、貴方」
ネヴィアさんはトネリコちゃんを渡して、スープなどに口をつける。
そして満腹になってからランスロットさんと食べるのを交代する。
「んー? 吸血鬼が怖いならこんなにいるのに泣かないのはおかしいと思うんだけど、クロウ?」
「そうだな、おそらく近づいても大丈夫だろう、神の啓示があったし」
「万能だね、神の啓示」
私はカイル君の手を取り、一緒にネヴィアさんに近づく。
トネリコちゃんは泣かない、すやすや。
「撫でさせてあげてもいいですか? 責任は私が取ります」
「ええ」
「カイル君撫でてみて」
「は、はい」
恐る恐るカイル君は撫でるが、トネリコちゃんは寝たまま。
「触れる……!」
「カイルおにーちゃん、よかったね!」
音彩も嬉しそう。
カイル君、良かったね!
まぁただ、むくれているルキウス君だけは、私にもどうにもできない、すまないねマルス様とエリザ様。
梢がかなり余裕をもって村を散策していると、ネヴィアとランスロットの二人の赤ん坊と遭遇。
ロガリア帝国のやった事は許しがたいが、それを批判し幽閉されたりした二人にはその責任を負う必要はないというのが梢の考え。
率先してやったなら償うべきだけど、そうじゃなく批判したりして止めようとしたなら罪はあらず。
そして宴では音彩とカイルが二人の子トネリコに触れます。
音彩は梢の子なので普通に触れますが、カイルはこの森で育ったことが大きな要因となっているので、トネリコに触れました。
後他の吸血鬼の血を引く者達も、梢の加護つきのブラッドワインなどを飲んでいるので他の種族の赤ん坊に触れます。
ルキウスをマルスとエリザが止めていましたが、正解です。
実はルキウスが触るとトネリコは泣き出す未来がありました。
何故か、それはおいおい分かると思います。
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