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呪いの解呪

ロガリア帝国から逃げてきたアインとティリオ。

そして呪いによって命の危機に瀕していたアインを梢は自身の作物で救う。

呪いで目の光りを失っていたアインはそのおかげで目の光りを取り戻した──





「では口にいれますよー」

 私はアインさんを抱き起こし、わずかに開いた口にラズベリーを入れた。

 すぐに潰れて口からこぼれたが体内に入っていき、黒い靄が消えていくのが分かった。


「う……」


「アイン様‼」


「こ、こは? ……まぶ、しい?」

 アインさんはゆっくりと動き、目の布を取り外した。

 青い目が現れた。

「見える、見えるぞ……⁈」

「アイン様!」

「その声は、ティリオか?」

「はい、アイン様……!」

「しばらくは医療院でゆっくりしてください、そしてこれからのことを考えてください」

「わかりました」

「待ってくれ」

 アインさんが私の腕を掴みます。

「はい?」

「……お前が助けてくれたのか?」

 私は苦く笑う。



『そうだよ、愛し子様が助けてくれたんだ!』

『愛し子様がいなかったら危なかったよ!』



「‼ 愛し子……⁈ ではここは始祖の森……⁈」

「はい、では休んでくださいね」

 夜が明けそうだったので、シルヴィーナと交代してもらい、私は風呂に入り、ブラッドフルーツを囓り、歯を磨いて棺桶に入って眠った。





 夕方──

「ふぁああ……」

「梢」

「うわあ‼」

 棺桶から出ると同時に目の前にクロウの顔があり、驚いて棺桶の中に転がる。

「び、びっくりしたぁ」

「そこまで驚かんでも……」

「あの二人だが……」

「何か問題でも?」

「いや、呪いと毒を使ってた時間が長かった所為でしばらく安静だろうな」

「うーん」

「まぁ、お前さんの作った作物と加工品なら即座に良くなるだろうが」

「ですよね、じゃあ料理もっていきますか」

 ちょうど良いし、シチューでも作っていくか。

 と私はミルクを使い小麦粉を使ったシチューを作り始めた。

 肉はオーク肉。

 見たこと未だないけど、高級肉らしいし、美味しいからいいだろう。


 多分……


 それに野菜を入れて具だくさんのシチューができました。

 パンは添える。


 それを医療院に持って行ったら子ども達が居た。

「なぁなぁ、兄ちゃんなんでそんなに薬作りが得意なんだ?」

「うらなってほしーの」

 わちゃわちゃといた。

「もう、皆。お家に帰らないと叱られるわよ!」

 シルヴィーナさんが言っても効果無し。

「みんな、もう遅いから一度戻りなさい。そうね、鍋を持ってきてくれたらシチューを分けてあげる」

 私がそう言うと、皆が寸胴鍋を見てうろうろし始めた。

 私は一番小さな子に、スプーンで掬ったのを口の中に入れてあげる、勿論冷まして。

「おいひい‼」

「かーちゃんにいって鍋かりてくる!」

 子ども達はわらわらと散らばっていった。

「食事、作ったんですが食べられますか」

「あの、しちゅーとは?」

「煮込み料理です、牛の乳を使った、スープよりもとろみがある」

 そう言って医療院にある器によそった。

 木のスプーンを渡し、器とパンとそれらをのせる板を出して、ベッドで食べられるようにした。

「どうぞ」

 先にティリオさんが食べた。

「……‼ 美味です」

「そうか」

 次にアインさんも食べる。

「ああ、美味い」

「ところでこの肉はもしかしてオーク肉?」

「あ、使ったら不味かったですか?」

「いや、めったに食べれない高級品だったもので」

 マジかよ、歩く豚型モンスター高級肉だったの⁈

「食べていると体がより楽になっていく」

「私もです、アイン様」


『愛し子の愛情たっぷり入った手作り料理だから効能もたっぷりー』

『たくさん食べるんだよー』


「……おかわり、良いだろうか?」

「勿論です」

「私も……」

「はい」

 二人におかわり分をよそう。

 すると子ども等がやって来た。

「梢さま、シチューちょーだい!」

「はいはい、鍋を頂戴ね」

 子ども達全員の鍋にシチューを配ったが量が量なだけに余った。

「零さないように帰るのよー」

「「「「「はーい‼」」」」」

 子ども達はわらわらと帰って行った。


「一つ質問したい」

「何でしょう?」

 アインさんが問いかけてきた。

「貴方は吸血鬼か?」

「一応」

「一応、とは」

「いや、自分この方血はブラッドフルーツでしか摂取したことが無いんですよ、その上流れ水も平気で家にも普通に入れるし、陽光の下もちょっと熱いなーくらいで平気なんで吸血鬼なん? と問われると微妙な存在でして」

「……愛し子、だからだろうか?」

「多分そうですねー、クロウもそう言ってますし」

 そう言って居ると扉が開いた。

「呼んだか」

「いや、呼んでは……いないのか、いるのか?」

 私は首をかしげる。

「そういえばシチューを作ったそうだな、我にも寄越せ」

「食い意地はってるなぁ、まぁ良いけど」

 シチューを器に盛ってスプーンを渡す。

 クロウはどかっと椅子に座り、シチューを食べ始めた。

「うん、オーク肉と牛の乳が絶妙だな! さすが聖獣の乳だ、それと野菜も妖精と精霊の加護を受けているから濃厚でしっかりとしている、それでいて青臭さはない!」

「聖獣⁈」

 ティリオさんが声を上げる。

「何を驚く、愛し子だぞ。育ててる家畜も普通のじゃない、銀牛に黄金鶏などだ」

「あーもー余計な事いうなクロウ!」

 私は怒鳴る。

「……貴方は、何者だ? 人間ではないようだが」

「我はエンシェントドラゴンよ」

「エンシェント」

「ドラゴン⁈」

 ティリオさん驚きっぱなしだな。

「この村は愛し子に引き寄せられた妖精と精霊達であふれかえっている、それ故豊かだ。まぁ、我は愛し子の存在でここに来たがな」

「まぁ、行くところが無いなら此処で静養するなり、暮らすなり選んでください。貴方達は悪い人達ではなさそうだし」

「何故そんな事を?」


「だって、精霊と妖精があんなに必死に助けてって言うのは初めて見ましたから」


 私はそう言って微笑んだ。

「では、そろそろ寝た方が良いですよ」

「しかし、追っ手が」

「追っ手? ああ、帝国軍の連中か、ご丁重にお帰りいただいたぞ」

「クロウ、それ本当」

「本当だ」

「……なら良いんだけど」

 私は眉をひそめた。

「二度と来ようと思わんだろう」

「いや、やっぱり気になる、何したアンタ?」

「内緒だ」

 精霊と妖精達を見るとお口チャックモードになってる。

 私には言えない事したんだな、と思った。

「まぁ、いいわしばらくは門番宜しくね」

「おうとも」

「じゃあ、ティリオさん、アインさん、お休みなさい」


 そう言って鍋を持って私は医療院を後にした。





 帰る途中月を見上げた。

「そう言えば、夏頃イザベラちゃん達がくるんだよね、もうちょっと土地広げないと」

 私はそう考えながら家に戻っていった。







アインとティリオは療養するようです。

そして帝国の追っ手はクロウが撃退した様子、どうやって撃退したから教えてくれない誰も梢には。

また、夏イザベラが来ることを想定して梢は色々思い描いています。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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