陽光熱~知らぬ間に残されていた呪い~
封印されていたエンシェントドラゴンが不死性を持って居なかった事を問う梢。
それを説明するクロウ。
二人がやりとりしていると、涙目になった音彩が抱きついてきた。
事情を聞くと──
「ねークロウ」
「何だ?」
クロウの屋敷で、クロウの食堂の椅子に座り、テーブルにつっぷしながら話をしていた。
「クロウってエンシェントドラゴンだよね、エンシェントドラゴンは確か不老不死なんだよね」
「その通りだ」
「アレは不死じゃなかったけど?」
アレ、とは先日森を焼こうとした封印されていたエンシェントドラゴンである。
「奴は封印された時不死性を神によって剥奪されている」
「神ってデミトリアス神様」
「ああ」
「じゃなきゃ大惨事だったよねー」
「全くだ、まぁ神々も手助けしてくれたから大事に至らなかったが」
「本当それねー」
あの日から、皆からしばらく休めと言われている私は休んでいる。
で、今日は休みの一環としてクロウの所に来て色々話している最中だった。
「かーさま!」
音彩が紅玉のように赤い目に涙を一杯ためて私に抱きついていた。
「どうしたの?」
「カイルおにーちゃんとアルトリウスとーさまが……」
どうやら、突然カイル君とアルトリウスさんが倒れたそうだ。
酷い発熱で苦しんでいるとのこと。
「ちょっと不安だ、見に行くぞ」
クロウが言うので家に向かう。
すると、アシュトンさん達は倒れていた。
「アシュトンさん⁈」
倒れているアシュトンさんを触ると、酷い熱だった。
「不味いなこれは陽光熱だ」
「え? 陽光熱? 別にアシュトンさん達は陽光を浴びてないはずよ?」
「ダンピールなら希になるが、陽光熱は此度はあのドラゴンが吐き出した炎の残滓を陽光の光と誤認した吸血鬼とダンピール達全員がなっているはずだ」
「え⁈」
私は見て回った。
クロウが言った通り吸血鬼とダンピールの方はみんな激しい熱で苦しんでいた。
音彩が言ったとおり……アルトリウスさんも。
あの時の嫌な予感はコレか!
「なんで私の私の子ども達は平気なの⁈」
「……お前は神々の愛し子で、子ども達はそのお前の血を引いてるからだ」
「なるほど……ってそれはいいから治療薬は⁈」
正直かなり焦っていた。
「冷月花と、マナの実、ブラッドフルーツだ」
「マナの実とブラッドフルーツはあるけど、冷月花なんて初めて聞いたよ⁈」
「お前が神から、与えられた物で買えるだろう」
「あ」
そうだ、スマホあるじゃん。
私はスマホを取りだし、冷月花の種を購入。
「冷月花はその通り冷えた場所でしか生えない、冬の精霊と妖精の力を借りるのが良いだろう」
「ビニールハウスー!」
私はそう言って新しいビニールハウスを作り、冬の妖精と精霊を呼び寄せる。
「冷月花を早く咲かせてね! 沢山!」
『まかせて!』
『うん! 頑張る!』
私は地面に種を植える。
すると10分もしないうちに芽を出して花を咲かせた。
私はそれを収穫し、アイテムボックスへ入れてクロウの屋敷に戻る。
「クロウ!」
「収穫できたか?」
私は収穫した分を見せた。
「うむ、十分だ。調合するのだが──」
「クラフトね、分かってる」
私はクラフト画面を開く。
すると月血剤と書かれている薬があった。
「月血剤? であってる?」
「うむ、それだ」
「じゃあ、クラフト開始!」
クラフトを開始すると、調合のアイテムが出て来て私は無我夢中で調合していた。
すると、瓶数本ができた。
吸血鬼の家族分と、アルトリウスさんの分。
「他の連中は我が持って行く、お前は先にアルトリウスに持って行け」
「ごめん! でもありがとう!」
私はそう言って屋敷に戻る。
発熱し、苦しんでいるアルトリウスさんは棺桶の中でうめき声を上げている。
「とーさま! しんじゃやだ!」
「アルトリウス、しっかりしてください!」
「アルトリウスとーさま、しっかりして!」
「アルトリウスさん、なんとか持ちこたえてください!」
「アルトリウスとーさまー! びぇええええ!」
「ごめん、薬作るの遅くなった!」
「コズエ!」
「コズエ様!」
「「「かーさま‼」」」
私は瓶の蓋を明け、グラスに注ぎ、瓶をティリオさんに渡す。
アルトリウスさんを抱き起こし、グラスに口をつけさせ、飲ませる。
体温は一気に普通のものに戻り、呼吸も落ち着き、眠りに落ちた。
「あれ、なんで眠ったの?」
「月血剤を造りになられたんですよね、アレは吸血鬼やダンピールには睡眠作用が副作用としてあるんです」
「あ、これ、副作用で睡眠作用あるんだ」
慌ててたからそこまで見てなかったや。
「かーさま! とーさまたすけてくれてありがとう!」
「当たり前でしょう、私の夫で、貴方のパパだもの」
そう言って晃を撫でる。
「じゃあ、私他のヒト達どうなったか聞いてくるから!」
「ええ、コズエも無理しないで」
「むりはめー!」
「めー!」
「はいはい……」
無理はしませんよ、しかしどうして即座に出なかったのか……
ちょっとクロウに聞かなければ。
私はクロウの屋敷に向かった。
「コズエ、こちらは既に終わったぞ」
「治療?」
「と、始祖の森を覆うあのドラゴンの炎の残り香を消した」
「炎の残り香?」
そういやそんな事言ってたな。
「あのドラゴンの炎の残滓で、ずっと陽光が差しているという状態を疑似的に演出していたようだ、結果陽光熱が発症」
「なるほど……あれ、もしかして気付かなかったの?」
「見えないものだから気付くのに遅れた、結果がこれだ」
「……ならしゃーないか」
私はため息をつく。
「でも、二度とこんなのはゴメンだね!」
「全くだ!」
クロウはそう言ってシードルを取りだし、二つ分のグラスに注ぐ。
「たまになら良かろう」
「そうだね」
私はシードルを飲んだ。
久しぶりのお酒だが、美味い。
子育てしてからお酒と縁遠い生活してたからね。
「そろそろ酒を解禁してもいいのではないか?」
「そうだねー、子ども達には大人の飲み物だからで通じそうだし」
夜の晩酌で色々やるのもいいだろう。
夫婦の時間も大切だしね。
クロウと飲んでると嫉妬されちゃいそうだし、明日以降にでも皆と飲むか──
不死でなくなっても、吸血鬼に大打撃を与える方法をしっていた為、今回の事態が起きました。
クロウは何か違和感あるなぁ、程度だったので気付かなかったのです。
そしてクロウはその違和感を森と神々から聞いて全て消し去りました。
梢はお薬作りと素材集めで頑張りました。
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