11年目の夏~我が子達~
クロウがフィリアと梢の子ども達に力の使い方を教え、梢は子どもの世話と畑仕事、家畜の世話などをしているとあっという間に夏が近づき、ドミナス王国から手紙が届く。
梢は来訪してもいい許可の手紙を出すと、夏に入って直ぐドミナス王国の王族達──正妃マリア達がやって来て──
子ども達とフィリアちゃんは聖女、聖人としての力のコントロールを覚えながら日々を過ごしていた。
晃達は無理をしないようにクロウにキツく言われるときもあった。
そういうときは、無理をしないで遊び回るというのが子どもらしい晃達のリフレッシュだと思う。
あと、お菓子を私におねだりするのが。
「「「かーさま、きょうのおかしは?」」」
なんて三人そろって聞くからちょっとお菓子作りは力を入れてしまう。
ただ、無理をしている時はレシピ本を見てアルトリウスさん達が作ってくれる。
というか、作らないように他の二人が私を押さえ込む。
ソファーで抱きかかえられている私を見て、子ども達は──
「「「だっこ! だっこ!」」」
と、おねだりをする。
可愛い。
しかし、私一人で抱っこするには少々子ども達は大きくなりすぎた。
なのでもう一人が抱っこを手伝ってくれる。
子ども達はそれで満足する。
畑仕事に、子ども達のお世話、家畜の世話などをしていると──
「もう、こんな季節か」
手紙の封を切る。
ドミナス王国からの手紙だ。
「今年はマリア様、クレア様、マルス王太子ご家族がいらっしゃるのか」
産まれて一歳くらいになった子ども達を連れてくるのか。
大丈夫か?
馬車が早馬といえど、子どもが大人しくしてられるか?
などなど、考えているが、来るのを決めちゃったなら仕方ない。
私は受け入れるだけだ。
なのでお返事を書く。
そしてクロウに持って行って貰う。
「さて、準備しますか」
私は来賓の館の整理などを行った。
そして迎える夏──
『夏ですよー!』
『夏ですよー!』
元気に飛び交う夏の妖精と精霊達。
外は暑いが、家は涼しいので、家に避難することもできる。
でも、私は日中活動ではなく夕暮れ時から活動する。
だが、暑いものは暑い!
水分補給などはしっかり行う。
スポーツドリンクっぽいものも作ってあるので問題無いだろう。
そして──
馬車がやって来た。
ドミナス王国の馬車が。
「ようこそいらっしゃいました」
私は出迎えて会釈をする。
「うむ、愛し子様。久しいな」
「愛し子様! イザベラは⁈」
「こちらに」
血相を変えているクレア様をイザベラちゃん達が住まう住処に案内する。
「お母様!」
「イザベラ!」
大分お腹が大きくなったイザベラちゃんを、クレア様が抱き寄せる。
勿論お腹を押さないように。
「無事で良かったわ……!」
「ロラン様とお義父様とお義母様が守ってくださったの!」
「それは良かったわ……」
クレア様は安心したように言う。
ロラン君と、マリア様は別室でクロウを交えて話しているようだ。
私はそれは後で聞こうと思う。
多分物騒な単語が飛び出している可能性が高い。
「私もロラン王太子とマリアとエンシェントドラゴン様と話してくるわ」
「はい、お母様」
そう言ってクレア様も部屋を出て行ってしまった。
部屋に居るのは私と──
「イザベラ、良く無事だったね」
「はい、マルスお兄様」
「イザベラ、体は大丈夫?」
「はい、エリザ義姉様」
「イザベラおばさま、だいじょうぶですか?」
「ええ、大丈夫よルキウス」
マルス王太子と、エリザさんと、ルキウス君だった。
将来的な側妃もとい現王太子妃の二人と、その子どもは今休んでいる最中らしい。
まぁ、早馬とはいえ大変だろうし、仕方ない。
「愛し子様、ネイロは何処にいらっしゃいますか?」
ルキウス君が尋ねてきた。
「音彩なら、今なら公園で遊んでいる時間帯ですが……」
「ありがとうございます!」
ルキウス君はとっことこ、と走って行ってしまった。
「全くルキウスは……」
「ネイロ様が自分に脈がないのをまだ理解できないのかしら?」
「他の女児には目もくれないから……」
「ははは……」
多分音彩は今回もつれないと思うぞ、ルキウス君。
ドミナス王国の令嬢と結婚した方が早いぞ多分。
そんなことを思って居ると、予想通りしょんぼりして帰って来た。
「ルキウス、どうしたの?」
「『あそびのじゃましないで!』と怒られました……」
「あー……」
これは脈なしだな。
だって、音彩吸血鬼やダンピールの子じゃない村の子が遊びたいって言うとすぐに「なにをしてあそぶ?」って言うもの。
音彩、ルキウス君のこと好きじゃ無いんだろうな。
ただそれにしても露骨すぎる。
後で聞いてみるか。
そう思いながら部屋を出ると、クロウと鉢合わせする。
「ちょっといいか?」
「あ、うん」
頷き、クロウの屋敷へ移動する。
「マリアと話し合ったが、三年経っても現状のまま混乱しているようならムーラン王国をドミナス王国の属国にする意見で話が固まった、現国王もそれに同意してる」
「うへぇ」
やっぱりなんかロラン君には厳しい話だろうなぁ。
母国が属国になるのは嫌だろうに。
「だからそうならないように我が働きかける」
「クロウ忙しいんじゃない?」
「そこは神々にもお頼みした」
「あー……」
なるほど、困ったときの神頼みね。
「最悪お前にも手伝って貰うかもしれない」
「手伝うのはいいけど、人殺しとかする気はないよ」
「分かっている」
ならいいのだけど。
取りあえず、話を終えて家に戻ると音彩達がプリンを食べていた。
「「「かーさま!」」」
「帰ったよ。所で、音彩。聞きたい事があるの」
「なぁにかーさま」
「ルキウス君──音彩に話しかけてきた村の外から来た子どう思う」
「じゃま」
うわぁ、即答だ、直球だ、剛速球だ。
「まえからねいろにかってにはなしかけてきていやなの!」
「へ、へぇ」
「それにおひめさまにねいろはきょうみないの、ねいろはかーさまのおてつだいをするのがおおきくなってからのゆめなの!」
「「ぼくも!」」
無邪気故の残酷さというものもあるけれど、無邪気だからこそ嬉しいのもある。
いずれ変わるかもしれないけれども、私のことを思ってくれることは喜ぼう。
ただ、ルキウス君に関しては向こうに原因があるっぽいからこれ以上嫌われたくないならもうちょっとどうにかして貰おうか。
うん。
「かーさまもぷりんたべよ?」
「そうだね、食べようか」
私はプリンを魔道冷蔵庫から取り出し、椅子に座り、スプーンで食べる。
「ああ、美味しい」
「おいしいね!」
「うん!」
「おいしい!」
子ども達とこうして過ごす時間はかけがえのないものだ、だから大事にしたい。
そう思う夜だった──
子ども達は無理しないようにリフレッシュを覚えている様子。
そしてドミナス王国、正妃マリアはロランとクロウと色々会話し、三年というタイムリミットをもうけることになった。
そしてイザベラの母クレアはイザベラを心配している様子、それはそうでしょう。
クロウも色々頑張る様子だけども、ただヒトをころころしたら解決ーとはいかないので結構大変なのです。
そしてルキウスと音彩。はい、脈が一ミリどころか可能性すらありません、それ位音彩はルキウスを毛嫌いしています、毛嫌いしているけど「あっち行けしっし!」程度で終わらせているのは梢達の教育のたまものなのかもしれません。
ちなみに、他の子も入れて遊ぼうなら音彩も我慢して遊びますが、音彩限定なので「あっち行けしっし!」状態なのです。ルキウスは音彩のことになると周囲が見えなくなるのが難点、治らないといずれ大変なことが起きるかもしれないぞ?
また、音彩達は今のところ外の世界に興味はないです、何せ森の世界が凄いからです、というか梢が地味に凄いのも子ども等が森で梢の手伝いをしたいと発言した理由。
将来的に本当にどうなるか分かりませんが、良き方向になればいいなーとか思ってます。
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