愛し子と引き継がれたもの
梢が目を覚ますと、子ども等は既にいなかった。
クロウの指導に戦々恐々する梢だが、子ども達は楽しんでいるようだった。
またクロウは指導する中でガネーシア王国に働きかけていた──
「ふぁあ……」
夕方目を覚ます。
子ども達は私より早く起きて居るらしいので居ない。
子ども達の棺桶は空っぽ。
最近クロウがみっちりと訓練しているようだ。
遊びたい盛りなのに、酷ではないかと思い子ども達に聞いた所──
『ぜんぜんたいくつしないよ!』
『おもしろいよ!』
『これでやくにたてるね!』
等などの発言。
可愛いし、嬉しいしで頬がにやけそうになった。
フィリアちゃんも──
『ふぁるすさまのおやくにたちたい!』
と、恩人だけじゃなっく、恋慕の情を抱いて居るファルスさんへの思いを告げてきた。
ファルスさんは幸せ者だろう。
と、思ってファルスさんに聞いてみた。
「フィリアちゃんはファルスさんの事が大好きみたいですね」
「ええ、ですが。彼女が聖女に正式に認定されたら私は彼女と離れなければなりません」
「はい?」
「そういう風習なのです、聖女が悪用されない為の」
ファルスさんが聖女を悪用するとは思えないけどなぁ。
と思って居たらクロウが割り込んできた。
「だが、お前もフィリアを好いているだろう。だからそこも含めてガネーシア王国に脅しをかけている所だ」
クロウ、脅しって……
「お前と聖女は相思相愛だ、引き離すことは不利益となる、と言ってな。引き離すなら我が直々にこの地を燃やすぞともな」
おーい、クロウ!
ガチの脅しじゃ無いか!
「その上で、聖女と神官を始祖の森に永住させるぞ、とも言ってやった」
この天上天下唯我独尊ドラゴンは!
いや……其処まででは無いか。
どっちにしろ、勝手に話を進めてくるなクロウは全く。
しかも、フィリアちゃんとファルスさんの意思を無視して。
まぁ、ある意味では尊重しているんだけど……
「それにしても愛し子様は本当に神々の愛し子であるマリー様に良く似てますね。肖像画そっくりです」
「え、ガネーシア王国にも聖女マリー……じゃなくて神々の愛し子マリーの肖像画が?」
「ええ、数多く残っています」
お祖母ちゃんの肖像画は信仰の対象になっており、特別な日にしか拝見できないらしい。
「だから、驚きました。愛し子様が髪や目の色が違えど、マリー様にそっくりだったことに」
「あ、あはは。私も肖像画を見たことあるんですが、そっくりでびっくりしました」
嘘をつく。
だってその人は私のお祖母ちゃんだから。
お祖母ちゃんのお陰でこの世界にこれて、私は愛し子になった。
でも、これは内緒。
誰にも言ってはいけない。
クロウは知ってるだろうけど、言わないからそういうこと。
「今の愛し子様がお姿を現したら生まれ変わりだと思われるでしょう」
「それは困りますね」
本来生まれ変わりのものを譲渡したからそれがバレてはいけない。
「いとしごさまー」
「フィリアちゃん、どうした……すごいね、籠いっぱいの果物!」
籠の中には色んな果物が入っていた。
「ふぁるすさまといっしょにいただいても、いいですか」
「ええ、いいわ」
「ふぁるすさま、いっしょに、たべましょう?」
「ええ、そうですね、フィリア」
ファルスさんはフィリアさんの頭を撫でる。
フィリアちゃんは嬉しそうにする。
そして籠一杯の果物をファルスさんが背負って持って行った。
「なんでフィリアちゃん重そうなのに持てたんだろう」
「聖女の力と魔法の基礎として身体能力強化がある、それで持てたのだ」
「クロウ」
クロウが解説しに現れた。
「フィリアは筋がいい、ここに来るまで無自覚にだがファルスを守っていたのだろう、自覚すればすぐ使いこなせた」
「それは何より……ってうちの子は?」
「お前の子はな……」
私の心臓がどきどきと言う。
クロウが渋い表情をしているからだ。
「肇は筋がよい、だが音彩と晃はどうも暴発させがちだ」
「なんで肇は筋がいいのかしら?」
「妖精と精霊の愛し子である父の真似をしていたのだろう。それで基礎ができている、アルトリウスとティリオは愛し子ではない」
「あー……」
確かに、アインさんは愛し子だけども、アルトリウスさんは妖精と精霊と会話できて力を借りられるけで愛し子とはちょっと違う、ティリオさんは愛し子だったかもしれないけど、今は愛し子ではない。
その証拠に、ティリオさんは妖精と精霊の声が聞こえない。
見ることもできない。
「ただ、父親達のやっていることはできるぞ」
「はい?」
「晃は闇と夜の精霊と妖精を使役して狩りなどで相手の視界を奪うことができる」
「それ凄くない?」
「音彩は父親よりも良い薬を作る事ができる、妖精と精霊の声が聞こえる分な」
「普通に凄いわ」
「まぁ、暴発はそれで帳消しできる程度だな」
クロウは呆れたように呟いた。
何に呆れているのかは分からない。
「あのー何に呆れてるの」
「そして三人とも悪いことに、お前の無理しがちな所を引き継いでいる」
「げ」
おもわず「げ」とか行っちゃったよ。
「うっそでしょう? まだ四歳よあの子達⁈」
「お前の無理しがちなのを見て『あ、やっていいんだ』と学習したらしい」
「NOOOOOOO‼」
頭を抱える私。
よりによって引き継いで欲しくなかった箇所が引き継がれてしまっている。
しかも原因は私。
「なので強制も兼ねている、無理をしたら叱っている」
「ま、まだ四歳なんだからほどほどにね」
「子どもは体力が有り余っているからこそ叱らねばならん、無理が分からないからな」
「うぐぅ」
反論できない。
取りあえず、私の真似はしないように私からも言おう。
今直そうとしている癖だからって。
「「「かーさまー!」」」
子ども等の声に振り向く。
子ども達が籠を背負って駆け寄ってきて私に抱きついてきた。
「かーさま、ぼくたくさんとったんだよ!」
「ぼくもしゅーかくしたんだよ!」
「わたしもやったんだよ!」
「「「すごいでしょ‼」」」
元気に言う我が子達が愛おしい。
「晃、肇、音彩、お前達また無理をしたな?」
そんなことを思っていると、それを崩すようなクロウの声。
子ども達の顔色がわるくなる。
「「「クロウおじいちゃん……」」」
「梢のその真似だけはするなと言ったはずだ、馬鹿者!」
クロウの怒声に子ども達は萎縮する。
「「「ぴぃ‼」」」
「ちょっとクロウ、そんなに怒鳴らないであげてよ。悪いのは私なんだから」
抱きついてきた子ども達の頭を撫でながら私は反論する。
「なら、お前も改善する努力をせよ!」
「うーん、どこかの誰かさんがことある毎に甘味でかいの所望しなきゃ少しは楽なんだけどなぁ?」
私は嫌みたっぷりに言い返す、これ位は成長してるんだぞ?
「ぐ」
事実でもあることを言われてクロウが口を閉ざす。
わりと本当の事だ、クロウ用のでかいお菓子を作るのあれ、クラフト使ってるけど疲れるんだよ、何故か。
家を建てる時とは別の意味で疲れる。
「晃、肇、音彩、クロウに怒られたことは。お母さんも直そうと努力してることなの、だから真似はしないようにね」
と言うと三人はこくこくと頷いた。
これで大丈夫だといいんだけど……
大丈夫、かなぁ?
子ども達、梢の悪癖を真似する。
いやぁ、それはクロウも怒りますね、真似するなって言ったこと真似してるんですから。
梢は頑張って改善中です、がクロウに言ったように甘味をクロウが所望するので疲れてしまうところが実はあったり。
そしてガネーシア王国のいざこざにフィリアとファルスが巻き込まれないように始祖の森で保護宣言してきています。
それ位色々あるんですよ。
後、ガネーシア王国に梢を連れて行かないのは愛し子マリーとよく似ているからです、そして愛し子だから生まれ変わりともてはやされるでしょう。
クロウはソレを望まないし、梢も望みません。
また、子ども等には特技が色々とできています、将来にいかせるのなら良いでしょう。
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