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逃亡してきた者達

村人の怒濤の出産ラッシュでスローライフを送れてない事に気づいた梢。

今日こそスローライフを送るぞと意気込むも、森の入り口に誰か倒れている気配を感じ取り向かう──





 行商さん達が立ち去り、私はせっせこ赤ちゃんの服を作っては赤ちゃんが生まれた家に渡していた。

 最初はどんな素材でできているか知っていた為か皆断ったけど、私があげたいからと言うと受け取り、赤ちゃんに着せてくれた。

 靴下も、手袋も、服も、可愛いく、かつ邪魔にならないデザインにできて良かった。


 赤ちゃんの服を着せたら夜ぐっすり寝てくれるようになったらしい、良きかな良きかな?

 後、頭を動かさないとぺたんこになるから頻繁に向きを変えてあげてねと教えてみると皆驚いていた。


「うわーやわこい!」


 吸血鬼だからと触らないようにしていたのだが、どうぞどうぞと押されて赤ん坊を抱っこする羽目になった。

「すやすや寝てるねぇ」

「はい、よく寝て、良く乳を飲んで、出すんです、泣き出す時はその時なのでコズエ様に言われたように頭がぺったんこにならないよう気をつけてます」

「それがいいよー、はい返すねー」

 吸血鬼が抱っこするから泣き出すと思ったが、私が愛し子だからか、吸血鬼でも泣き出さなかった。

 吸血鬼にだっこされたら普通泣かない?

 とか尋ねたら、普通なら泣きますねと、シルヴィーナに言われた。

 愛し子様々だね。


「コズエ様」

「ラカン君? フィネちゃん。どうしたの?」

「お母さんが……」

「まさか」

 慌てて家に向かう。

 破水していた。

「ギャー! シルヴィーナ、ルズおばあちゃんさがして連れてきてー!」

「はい!」

 私はある知識総動員して、出産の準備をする。

「ぜぇ、はぁ」

「おんやま、もう来たのか、はやいねぇ」

「お、おばあちゃん、おねがいっす、こっち余裕がなかったんですよ」

「いやいや、よくここまでじゅんびしてくれたねぇ、あたしにまかせとけぇ」

 と言ったのでルズさんに全部任せて私はラカン君達と無事の出産を祈った。


 ほぎゃあほぎゃあ


「よっしゃ産まれた!」

「かかあは⁈」

 旦那さんが慌てて言う。

「だいじょうぶじゃよ」

 産まれたばかりの赤ん坊を抱っこしているラカン君達のお母さん。

「あかちゃんの着るの作らなきゃ」

 私は家に戻った、そして朝方できたので、シルヴィーナさんに渡して棺桶に入った、ここ最近こんなんばっかだな私。





「スローライフおくれてねぇ」

 げっそりとした顔で言う。

「今日はスローライフ送るぞ」

 食事を取って、外に出る。

 と、森の入り口で誰かが倒れている気配を感じ取る。

「二人……か大人……気配的には怪しい気配はないし、嫌な感じもない、妖精と精霊がまとわりついているし……なんか不安そう」

「どうしました?」

「始祖の森の入り口で誰か倒れているんです、シルヴィーナさん。付いてきてくれます?」

「はい、勿論ですよ」

 私達は始祖の森の入り口へと移動した。

 すると倒れている二人の男性。

 一人は金髪に目を覆い隠していて色白、もう一人は茶色の長い髪で金髪の人を背負っているように目を閉じている。

「おいしょっと」

「私が一人背負いましょうか?」

「いやいいよ」

 二人を背負い、そのまま医療院に向かった。

 二人を寝かせ、一端シルヴィーナさんに任せる。


『愛し子様、愛し子様』

『二人を助けて、二人を助けて』

『二人はいいように使われてきたの、そして処分されそうになったの』

『だから助けて、僕らの「愛し子」を』


「分かったわ、助けるから」

 妖精と精霊を撫でる。


 そして、シルヴィーナが寝る時間になりそうなので代わり、治療に当たる。

 教えて貰った癒やしの魔法を使う。


癒やしよ(ヒール)


 傷は癒えたが、目を覚まさない、何か疲弊するものがあるのではと思い体を調べる。

 指輪があった。

 なんか嫌な気配のする指輪が。


『それ、隷属の首輪よりももっと強力な指輪!』

『一度はめたら外れない‼ 壊して愛し子様』

「なるほど」


 私は二人の指輪を破壊した。


『流石愛し子様』

『愛し子様、凄い!』


 褒められて悪い気はしないが、これでそろそろ起きるだろう。

 そう思い、ホットミルクを用意する。

 銀牛のホットミルクに、蜂蜜入り。


「んぐ……あ……」

「う……あ……」


 うめき声が聞こえた。


「大丈夫ですか?」

 紅い髪の男性が緑の目を見開き、腰のナイフを私に向けるが、私は微笑んだまま。

「安心してください、ここは始祖の森の奥の方です」

「始祖……の……森……? 逃げられたの、か……? だが……指輪が……」

 男性は指を見て目を見開いた。

「ない、指輪が、ない?」

「あ、その指輪なら壊しましたよ」

 私は指輪の破片を見せる。

 紅い髪の男性は、目を布で覆った人の指を見た。

「その方の指輪も壊しましたよ、精霊と妖精達が物騒だから壊せって言ってたんで」

「で、では貴方なのですか? 始祖の森の愛し子は⁈」

 私はそれに困ったように笑う。

「それよりも、貴方達はどこから逃げてきたの?」

「……ロガリア帝国」

「‼」

 噂に度々出ていた帝国だ。

「何故?」

「──私達は、どこかから誘拐され、暗殺者として育てられた……けれども逃げようとしたが、指輪の呪いで逃げられなかった。そして一人、また一人死んでいき、残ったのは私と、アイン様のみ……アイン様は命がけの呪いで指輪の呪いをかけ、妨害し私達は逃げてきたのだ……」



『嘘はいってない、全部本当!』

『だから助けて! 愛し子様!』



「アイン様って、その目を覆っている人?」

「ああ、呪いの代償に視力を失ってしまっている……」

 なんか黒い靄がかかっていてやな感じ──



『大丈夫だよ、愛し子様ー!』

『愛し子様の作物とか果物、ジュースがあるよー』

『呪いの代償も解けるよー!』



 妖精と精霊達が騒いでいる。

「取りあえず、これ飲んでください」

「白い液体?」

「ホットミルク、牛の乳を温めたものです、蜂蜜入りです」

「こんな大切なものを……すまない」

「いいえ、毎日手に入りますから」

「毎日?」

「ははは、お気になさらず」

 紅い髪の人はホットミルクを飲むと、ふぅと息を吐いた。

「力が湧いてくるようだ、それに体が温まる……」

「ところで、貴方のお名前は? あ、私は梢って言います」

「ティリオだ」

「ティリオさん、ですね。それにしても、アインさん目覚めが遅いですね」

「やはり呪いが……」

「呪いにはこれ、取れたてのラズベリー!」

「な、なんだその赤いものは⁈ ベリー⁈ 見たことがない‼」

「美味しいですよ、お一つどうぞ」

 と一つ渡すとすんすんと嗅いでから口にした。

「‼ 何だこの濃厚な甘さと後味の良い酸っぱさは……‼」

 感動しているところ悪いが、これをアインさんの口に入れねばならない。

 ちゃんと口の中に入るかなぁ?

 ちょっと不安になる私だった。







ロガリア帝国からなんとか逃げ出してきた二人、アインとティリオ。

隷属の指輪を破壊し自由になったものの、アインはまだ目を覚まさない。

梢はアインの呪いを解呪すべく作物のラズベリーを取り出します。


ラズベリージャムにすると美味しいので好きです。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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