ムーラン王国の状況と、始祖の森で梢達家族は
クロウからムーラン王国の反国王派閥が今回の事態を引き起こしていると伝えられる。
梢は、クロウがその為にムーラン王国に度々向かうといい、森の守りはシルヴィーナやアルトリウス達に任せると言われ、梢は関わらないように釘をさされる──
招かれざる来訪者がどうなったかは知らないけど、クロウ曰くムーラン王国の、反国王派閥の者達が送り出した刺客らしいことがわかった。
王弟関係でも色々あったのに、反国王派閥となるとかなり大変じゃ無いか、これ?
「だから国内では色々と激しい動きが起きている」
「……イザベラちゃん達無事に帰れるよね?」
私は不安になってクロウに尋ねる。
「安心しろ、梢。我と神々が国王側についているのだ」
「ならいいんだけども……」
三年経ったら国の情勢がひっくり返って帰れませんなんてことは止めてよね?
まぁ、そうなったらそうなったでイザベラちゃん達を無事に始祖の森で保護するけど、それは最悪の事態の場合だからね?
「まぁ、国王派の後ろにはドミナス王国があるからな。その気になればムーラン王国など一夜で灰燼と化す」
「ちょっと怖い事言わないで」
普通に怖かったんですけど?
「何せ、王太子妃はドミナス王国の元王女だ、イザベラに何かあったら容赦なくドミナス王国はムーラン王国を滅ぼすだろう」
それがいいことかは分からないが、そうならないことを祈る。
いや、いいことじゃないな。
かなり最悪の事態だ、ここはムーラン王国の王族派の方々に踏ん張って貰わないと。
「くれぐれもイザベラちゃんには言わないでよね」
「ロランなら良かろう」
「それはね……」
ロラン君の国の事だ、しっかり把握して貰わないといけない。
クロウはロラン君を呼びつけ話をした。
「──というのが現状だ。もし反国王派閥が勝ったらムーラン王国は火の海になるのを覚悟しろ」
「──はい、父上と母上にも言われました。万が一現国王と王妃である私達の派閥が負けたら、確実にドミナス王国の怒りを買うことになるでしょう、と」
「それが分かっているなら良いのだ」
政略結婚らしいとは言え、ロラン君もイザベラちゃんも愛し合っている。
二人が不幸になるのは避けたい。
「梢、そういうことで我は頻繁にムーラン王国に行くことになっている。森の守りはアルトリウス達とシルヴィーナに任せている」
「私は?」
「キマイラなどのモンスターならともかく、人相手だとお前は加減してしまう。招かれざる者達に加減は不要だ」
「う゛」
図星をつかれる。
私はそういうのができない。
怖いし、痛そうだからだ。
そういうのを思っちゃいけない相手でも思ってしまう。
だからできない。
「コズエ様、貴方様に負担を掛けてはイザベラに怒られてしまいます」
「そういうことだ、お前はお前で子育て等に勤しんでいろ」
「はいはい」
子育てだって楽じゃないのだぞ。
と、言いたいが論点が違うと言われそうなので言わないでおく。
私は家に戻り、お菓子を食べている子ども等を見る。
「かーしゃま、くっき、おいし!」
「おいし、おいし!」
「くっきー!」
子ども等は事前に作って置いたクッキーにご満悦だ。
小さい子用に食べやすくしてあるのも良かったのかなと思う。
「コズエ様、お帰りなさいませ」
「ティリオさん。あれ? アルトリウスさんとアインさんは?」
「何かクロウ様が森の外にまた来たと言ったので外に出ましたよ」
私は意識を集中させると、黒い塊が複数見えた。
悪意の塊、イザベラちゃん達を害するもの達。
「私は行かないほうがいいよね」
「ええ、そうですね」
ティリオさんははっきりと言った。
「ところでティリオさんはなんで家で子ども達を?」
「アイン様に頼まれたのですよ、あとアルトリウスさん」
「ああ……」
二人から頼まれたのなら断れないだろう、ティリオさんは。
「おなかいぱい!」
「ねんねー」
「ねんね!」
「その前に歯磨きしてお風呂入りましょうね?」
私は三人に言うと、音彩の歯磨きとお風呂を私がやり、ティリオさんが晃と肇の歯磨きとお風呂をやった。
そして棺桶の中に寝かせる。
「おやしゅみなさい」
「おやしゅみ!」
「おやしゅみなさい!」
子ども達は直ぐに眠りについた。
本当寝付きいいな、びっくりする位。
棺桶の蓋を閉めると、私とティリオさんは食堂でホットミルクを飲んでいた。
すると、二人が帰ってくる。
「お帰りなさい、アルトリウスさん、アインさん」
「お帰りなさいませ、アイン様、アルトリウスさん」
そう言うと雪を払いながら、二人は言う。
「ただいま、コズエ、アイン」
「ただいま戻りました。コズエ、アイン」
何をしたかは話し合わず、最近子ども達はどうだとか色々話し合った。
あと、イザベラちゃん達についても。
そして夜遅くなるのでアインさんとティリオさんが寝ると、子ども達が起きる。
「何して遊ぶ?」
子ども達を寝室から連れ出して私は聞く。
「「「こうえんでこうもりおにごっこ!」」」
最近吸血鬼やダンピールの子達の間ではやりの遊びだ。
蝙蝠になって鬼ごっこをするという遊びだ。
でも、この子達は他の子とは遊べない。
理由は簡単。
この子達は速すぎるのだ。
つまり年不相応の動きをするので同年代や子ども達では遊べないのだ。
こう言うところだけは凄いんだよなぁと我ながら思う。
私達は公園に行く。
吹雪は止み、綺麗な月が照らしている。
「じゃあ、始めるよ、私が鬼。よーい、どん!」
「「「きゃー!」」」
子ども達は蝙蝠になり飛んで行く。
私は3秒数え、蝙蝠になって、後を追う。
子ども等を次々と捕まえ、蝙蝠の私の胸元にはしがみついている小さな蝙蝠達がいた。
私は人の姿に戻り。
「はい、今日は蝙蝠鬼ごっこはこれでおしまい。戻りなさい」
と言うと、子ども達は姿を戻した。
そして私にぎゅーっと抱きつく。
「ぎゅーして!」
「ぎゅー!」
「ぎゅーぎゅー!」
私はにっこりと笑い、ぎゅーっと抱きしめる。
「はい、ぎゅー!」
そう言うと、三人は嬉しそうにしていた。
そんな私をアルトリウスさんが抱きしめる。
「私も混ぜてくれないか?」
「うん、いいよ!」
「とーしゃまもぎゅー!」
「ぎゅー!」
そうしてハグしあう私達。
月光に照らされた私達は、とても幸せだった。
翌日夕方、ハグの仲間はずれになったと言ったアインさんとティリオさんと子ども等を交えてまたハグをしたのは言うまでも無い。
だからなんでバレたんだろう、と思っていたら今回は子ども達が報告していたらしい。
じゃあ、そうじゃない場合はなんでバレるんだ?
と首をかしげる私だった──
ムーラン王国ちょっとやばめの事態になっています。
イザベラとロランが悲しいことにならないと良いのですが……
イザベラに何かあったら確定でドミナス王国が動いてムーラン王国おしまいです、それを避ける為にクロウは動いて居ます。
一方梢の子ども達はすくすくと育っています。
コウモリに変化したら他の子達では追いつけない位早く移動できるので母親の梢が遊び相手になるしかありません。
ハグがばれたのはこどもたちが二人に報告したからです。
梢の子どもは正直ですから。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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