子育てと不安
イザベラとロランが来賓の館で過ごすのは不自由だと思い二人の為に屋敷を作った梢。
二人の事をクロウに任せて家に来たると我が子達が三人そろってギャン泣きしているのを見て思わず反転して現実逃避しようとしたが、それは不味いと家の中に入り、家にいたアルトリウスに声をかける──
「イザベラ様とロラン様が暮らしていくのに、来賓の館は不便だと思うんだよね」
「まぁ、確かに暮らすにはちょっとな」
クロウも同意する
「と言う訳でイザベラ様達のお屋敷を作ります!」
「それが良かろう」
「では作るぞー!」
適当な空き地でクラフトをする。
体が自動で動き、屋敷ができあがった。
「よし、早速だけど、イザベラ様達にはこちらに移動してもらおう!」
「待て、梢。もう夜も遅い、明日になったら我が案内する」
「そうだね、じゃあ頼むね!」
「ああ」
私は自分に家へと向かった。
家につくと──
「びぇええええ!」
「おがーしゃまー!」
「びぇええええん!」
うん、何たるカオス。
反転して戻りたくなった気持ちを抑えて頭を抱えているアルトリウスさんの肩を叩き、私が子ども達を抱きしめる。
「どうしたの? 晃も肇も音彩も?」
べそべそと泣きながらも、三人は事情を伝えようとしてくれた。
内容を要約すると、音彩が寝る前に髪の毛を結って貰ったらしい、ティリオさんに。
で起きてそれを見た晃がなんだこれと、引っ張る。
それでギャン泣きして暴れる音彩。
暴れられて訳わかんなくてギャン泣き暴れる晃。
二人を止めようとした叩かれてギャン泣きする肇。
うーん、ちょっとカオス。
わかりやすく要約したらこうなったけど、要約するまでカオスだった。
「晃、音彩はねー、パパに寝る前に髪型を変えてもらったの、髪を結って貰ったの」
「ぐずっ……にゃんで?」
「音彩なんで?」
「ぐず……かーしゃまがもどってきたときに、ってかわいく、して、もらったのに、せっかく、びぇえええ!」
「よしよし」
「だって、まずは晃がごめんなさいしようね」
「ごめんなしゃい……」
「ひっくひっく」
「許す許さないは音彩がじっくり考えようね、次は二人を止めようとして叩いちゃった肇に二人はごめんなさいだよ」
「ごめんなしゃい……」
「ごめんにゃさい……」
「ひっくひっく」
「許す許さないは肇がじっくり考えようね、はい。もう泣くのはおしまい! ケーキ作ってあげるから」
「「「けーき!」」」
全くわかりやすいなこの子達。
私はアルトリウスさんに、三人を抱っこして貰い台所に向かった。
そしてそこでケーキをクラフト能力で作る。
じゃないと作ってられないからね!
苺のケーキを作って私達五人分を取り出す。
残りは寝ている二人の分。
後、クロウが食べたがったら上げる分。
「はい、ケーキだよ」
「「「わぁ……」」」
三人は見つめてから御子様用のフォークでケーキを食べ始めた。
美味しそうに苺などをほおばる三人。
もくもくと食べるアルトリウスさん。
対比が面白いな。
私もケーキを食べる。
うん、これは美味しい。
クラフト様々だね!
機嫌が良くなったらしい二人はやったことを許して、仲直りをしてそして遊んで、朝方になり私達は棺桶に入れて眠らせた。
寝る前にクロウ用のケーキを作って冷蔵庫において紙を書いてクロウ用と置いておいた。
その後、私とアルトリウスさんも棺桶に入って眠りについた。
夕方、目覚めるとクロウが家に居た。
ケーキを食べた痕跡が残っていた。
「お前がいない間に頼まれていたことはやっておいたぞ」
「うん、有り難う。イザベラちゃん達の反応は?」
「嬉々としていたぞ、落ち着いて出産まで待てると」
「それは良かった」
「それと温泉の整備もしておいた、後で見てくるといい」
「うん」
「と、言う訳だからホールサイズのケーキを寄越せ」
ずるっと滑りそうになる。
が、クロウだもんねー食いしん坊だもんねー。
と、なった私は苦笑してからクラフト能力で作った苺のケーキのホールサイズを作り渡す。
どんだけ食えば気が済むのクロウは。
「はいどうぞ」
「うむ」
満足そうに言うクロウ。
ケーキを丁寧な所作で食べてるホールサイズだけども。
その後キョロキョロと周囲を見る。
私は子ども達は何処だろうと首をかしげる。
私が起きたときは既に空いていた。
「ねぇ、クロウ。子ども達知らない」
「吸血鬼とダンピールの子ども等が連れて行ったぞ」
「何処へ?」
「公園」
「ありがとう」
私はそう言って食事を取るのも忘れて公園に向かう。
公園では子ども達をアルトリウスさん達が見守っていた。
「良かった、見守ってくれてるんだ」
「当然だ」
「当たり前です」
「ですから食事をしに戻ってください」
「え」
何で食事を取ってないこと分かっているんだろう。
「顔を見れば分かる、さっさと食事してこい」
「いや、いいよ」
そう言ってブラッドフルーツを取り出すと取り上げられてしまった。
「あ、ちょっと!」
「ちゃんと食事は取れ、魔道冷蔵庫に入れてある」
「う、うん」
しぶしぶ家に戻るとホールケーキを食べ終わったクロウが居た。
「アルトリウス達に追い返されただろう」
「なんで知ってるの?」
「お前が食事を取ってないからだ」
「ぐむぅ……」
私は魔道冷蔵庫からサンドイッチ等を取りだし、暖める物は暖めて食べた。
「うん、美味しい」
三人とも料理がとても上手になった。
アルトリウスさんとティリオさんはともかく、アインさんは当初料理をやった事は無くて悲惨だった。
でも仕方ない。
ロガリア帝国でこき使われてた時のアインさんは視力を呪いの所為で失っていたからだ。
だからティリオさんがお世話をしていた。
数少ない生き残り同士依存し合いながら。
ティリオさんが毒で苦しんだとき、アインさんがよく助けたらしい。
だからティリオさんはアインさんを様付けして呼んでいる。
アインさんはいい加減止めてもいいんじゃないかと言ってるけど中々そう簡単にはいかないっぽい。
私もそろそろ様づけは止めて欲しいんだけどもこっちもそう簡単にはいかない。
まー子どもの育成でぶつかった時は強制的に直して貰おうか。
その位で考えている。
多分来なさそうだけど。
別の意味で子育てで大変な思いしそうだな。
でも、アルトリウスさんやアインさん、ティリオさん達と一緒に頑張れたら。
いいなぁ。
イザベラとロランは無事屋敷を作って貰いそちらで住むことになりました。
出産まで無事だと良いのですが…
そして梢は子ども達がギャン泣きしたのを見て一回何があったかと脳がフリーズしたので反転して現実逃避しました、子ども達が三人家の中で泣き叫ぶ理由が分からなかったからです。
ですが、梢もこれでもお母さん、ちゃんと子ども達に事情を聞き、それぞれに対応します。
ケーキで泣き止むのはめったに食べれないからです、あんまり食べさせると後々苦労しそうなので。
ただしクロウは例外。ホールケーキを遠慮無く所望します、食いしん坊なので。
そして夫達は、梢のことに関しては見抜くのは相変わらず凄いです。
梢は吸血鬼だし多少の無理はいいでしょー程度に考えてますが、夫達はそうはいきません。
いいから休め、ちゃんと飯食え、寝ろ、休め、と思っています。
あとティリオの様づけ、これ多分治りそうにないですね。
後々苦労しそうですが……
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