10年目の冬の訪れとイザベラ達の来訪~ムーラン王国の問題~
冬の訪れと共に梢宛に手紙が届く。
イザベラからの手紙だったため、嬉々として読もうとしていたが──
「リザードマンさん達、冬ごもりの準備は万全ですか?」
「はい、愛し子様のお陰です」
「それは良かったです」
精霊と妖精達が秋の終わりが近い事を告げていたので、尋ねてみた。
「冬ごもりの間の事は私達に任せてください」
「いつも、すみません」
リザードマンさんは頭を下げた。
そして冬が訪れた──
『冬ですよー!』
『冬です!』
冬の精霊と妖精が飛び交っている。
雪が降り始めている。
今年も積もりそうだ。
そんな事を考えていると、手紙が来た。
「イザベラちゃんからだ」
内容は結構大変なものだった。
どうやらイザベラちゃんが妊娠したらしい。
それは良いことなのだが、イザベラちゃんの命を狙おうとする者が現れ、王宮は混乱しているらしい。
これでは胎教によくないと言うことで、王太子であるロラン君と、イザベラちゃんを始祖の森で子どもが出産して三歳くらいになるまで二人を住まわせて欲しい。
との事だった。
「──って手紙が届いたんだけど、クロウどうすればいい」
『梢、儂に聞くよりお前さんの心に聞くのが良かろう』
「私は……イザベラちゃんを助けたい!」
『なら受け入れるのが良かろう』
「うん! じゃあ、受け入れる旨の手紙書くね!」
そして手紙を返して数日後──
「コズエ様!」
「イザベラ様」
顔色が少し悪いけど、精一杯元気を演出しているイザベラちゃんがいた。
私はお腹に負担が来ないように抱きしめて言う。
「イザベラ様、無理なさらないで」
「大丈夫よ、私元気ですもの!」
「嘘は分かります、色々と大変だったんでしょう?」
そう言うと目元にじんわりと涙を浮かべたので私はイザベラちゃん達を来賓の館へ連れて行った。
その時、森に入れない人が一人でたので察したクロウがその人を連れてムーラン王国へと飛んで行った。
あ、イザベラちゃんに悪意ある人いたんだ。
と、少し黄昏れつつ、怒りも覚えた。
其処までしてイザベラちゃんを不幸にするつもりならこっちも徹底抗戦だ、と。
「どうしてなの? 皆に祝福されたと思ったのに……」
涙を流すイザベラちゃんにハンカチを渡し、涙を拭いて貰う。
イザベラちゃんの背中をさするロラン王太子。
そして戻ってくるなりあきれ顔になっているクロウ。
「クロウ、王宮はイザベラ様に悪い感情を持つ者を一掃したんじゃないですか?」
「王宮関係ではな、だが王弟の関係者でイザベラに悪意を持つ者はまだ残っていたらしいので悪意ある連中を対応してきた」
あ、処分したんですね。
聞きませんが分かります。
「クロウ、お疲れ様」
「なら甘い菓子を作れ」
「へいへい」
全くこの食いしん坊ドラゴンは。
「戻っても大丈夫?」
「また出てこないか毎年確認することになったから取りあえず、子どもが生まれて三歳になるまでは始祖の森で暮らして欲しいとのことだ」
「で、本音は」
「『自分達の至らなさで息子と義娘であるイザベラを守れずにいるのをどうか許して欲しい』とのことだ」
「私大丈夫ですわ! だって、コズエ様とクロウ様達がお守りするこの森に入ってくる悪い人は居ないんですもの!」
「まぁ、そうだな」
「イザベラ様、お守りもっています?」
「はい!」
イザベラちゃんはブレスレットを見せる。
少し黒ずんでいる。
「ちょっと黒ずんでますね」
そう言って私が新調しようかなと思って渡して貰うと、ブレスレットが光り、そして綺麗なピカピカな状態になった。
「え、何これ?」
「浄化されたのだ、イザベラを今まで守って劣化していたのを浄化し、強化した」
何それ怖い。
と、思いつつも、イザベラちゃんに渡す。
「まぁ、ピカピカになったわ! ロラン様もお渡しになって」
「あ、ああ」
ロラン君のブレスレットもイザベラちゃんの奴ほどじゃないけどくすんでいた。
持つと光って、綺麗になった。
「お返しします」
「有り難うございます」
「イザベラも、ロランも、思っていた以上に過酷な場所にいたのかもしれんな」
クロウがしみじみと言う。
そこでしみじみ言うな。
かなり重い内容なんだぞ。
ドラゴン様には通じないのかそういう人のあれこれが。
「我とて人の心くらい分かる、しみじみ言ってるように見えるがかなり憤っているのだぞ」
「え、そんな風に見えない」
「だろうな」
クロウが呆れた顔をした。
「我が怒ればイザベラの胎教に悪いから我慢しておるのだ」
「あ、気遣ってくれてたんだ」
「当然だ」
クロウは胸を張る。
「しばらくイザベラの警護は我がやろう、人間達はロランの警備に集中せよ」
「で、ですが……」
「イザベラが狙われたら、即座に対応できるのは我だ、どんな場合であってもな」
「と、言う訳でイザベラ様のことはクロウに任せてください」
「わ、分かりました……」
警備を担当する人達は、エンシェントドラゴンには敵わないのが分かっているのか了承してくれた。
「酸っぱいものが欲しいわ」
「蜜柑でいいですか?」
「蜜柑! ええ、大好きよ!」
私は来賓の館を出て、蜜柑を取りに行く、そして蜜柑の皮をむき、渡す。
「んー! 甘酸っぱい! 美味しいわ!」
「良かった。あ、宜しければ皆さんも食べてください、沢山あるので」
そう言って箱に入った蜜柑を置く。
皆、興味津々に食べてる。
「お、美味しい……!」
「果物ならムーラン王国は負けないと思ってたのにこれは完敗だわ……」
「ふふ、だってコズエ様が作ってる果物ですもの」
イザベラちゃんは嬉しそうに言った。
「苗木をもらえるなら欲しいな……」
「三年後お帰りする時にお渡ししますよ」
「今から楽しみですね」
ロラン君にそう言うと、ロラン君は蜜柑を頬張った。
「うん、美味い!」
「でしょう?」
イザベラちゃんとロラン君は笑い合う。
まだ若い二人だけども、これからの苦労はできるだけ排除してあげたいと思った。
だって、二人の道のりは茨のように見えたから──
ムーラン王国で緊急事態発生につき、イザベラとロランと従者達が避難してきます。
森に入れなかった者がどうなったかはクロウと神のみぞ知ると。
イザベラ結構精神参ってるのが梢には分かっているのかなり優しく対応しています。
イザベラもその梢の優しさに甘えています。
さて、三年間でどうにかなるんでしょうかね?
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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