村の宴~相変わらず成長が早い子ども等~
秋のある一日。
収穫で作物のぎっしりつまった保管庫を見て梢は思う。
そうだ、ピザを作ろう、と──
「それにしても今年の秋も豊作だね、色んな意味で」
保管庫にぎっしりつまった食料達を見ながら私は呟く。
「増築しても多分余るなぁ、よしポトフとピザを作ろう」
ピザと言っても元の世界の私の母国で魔改造されたピザである。
そんな事言っても誰も知らないだろうけどね。
勿論私も言うつもりはない。
材料を用意して、ジュースとお酒とかも用意して、準備万端。
作り始めて焼き始めると良い匂いがしてきた。
ポトフもあのよい香りがし始めた。
「コズエ様? まだまだ?」
「早く食べたい!」
「良い匂い!」
村の子ども達が寄ってきて空腹だと言い始めている。
早く食べたいと。
「はい! まず第一弾できたわよ!」
釜からピザを取りだし、大皿に乗せて運んで貰う。
「あー! 食べたー!」
「はやいものがち!」
「コラー! まだまだ作るから順番は守りなさいー!」
「「「はーい!」」」
私は黙々とピザを焼く。
そして口を赤くしたり緑にしたりした子ども達がピザを皆に運んでいく。
「梢様、手伝いましょうか?」
「うーん、嬉しいけどピザの具知ってるの私だけだから持ち運びを手伝って欲しいなぁ」
一二三ちゃんが申し出たので、焼きたてで並んでいるピザをチラ見する。
「畏まりました」
一二三ちゃんや善狐の子等が運んでいく。
これならもう少しペースを上げても大丈夫だ。
そう思ってどんどんピザを焼いていく。
ちなみにニンニクは一切使ってないのでダンピールの子等は食べられるようにしている。
ブラッドフルーツのピザも試しに作って食べて貰い吸血鬼の方々もOKが出たので作ってはいる。
吸血鬼の方々はブラッドフルーツとブラッドワインのスープをポトフ代わりに飲んでいる。
飲み物はブラッドワインだけどね。
「もうそろそろお開きかな」
夜遅くになっているのが分かるので、お開きにする為声を掛ける。
作った物は全て空になった。
ピザも残ってない。
「はーい! 今日の宴はお開きですー! 皆さん帰って寝ましょう!」
と言うと、皆さん帰って行きます。
残った数名が洗い物のお手伝い。
それが終わると家に帰っていきました。
「あ゛ー今日は疲れた」
「お疲れ様、コズエ」
「大丈夫ですか、コズエ」
「無理していませんか? コズエ様」
「あー大丈夫大丈夫」
私の事を気に掛けてくれるアルトリウスさん達の言葉に手を振って否定する。
「ところで晃達は?」
「晃達なら……今公園で子ども等と遊んでいる」
「そっか」
私は様子を見に行こうとした。
が、少しふらついてしまった。
「コズエ、戻るぞ」
アルトリウスさんがそう言うが私は困った、だって子ども達の様子を見たいのだ。
「え、でも子どもの様子を見たいし……」
「仕方ない……」
「うわ⁈」
姫抱きされた!
割と恥ずかしい!
「え、えっとおんぶとかは?」
「却下だ」
「ひぇええ……」
「アルトリウス、貴方だけズルいですよ」
「では次の機会」
「わかりました」
「ティリオもそれでいいな」
「は、はい……」
ティリオさん、拒否っていいのだぞ?
とは思うけれども口に出す雰囲気ではない。
夜の公園に来ると、吸血鬼やダンピールの子等が遊んでいる。
そして──
ふよふよと飛んできた三匹の蝙蝠。
蝙蝠は私の胸にしがみつくような体勢になった。
「えっと、もしかして晃に肇に音彩?」
と尋ねるとぼふんと煙が出て三つ子が私の腕の中にいた。
「おっとと……」
落とさないように抱きしめる。
「かーしゃま! とーしゃま!」
「かーしゃま! とーしゃま!」
「かしゃま! としゃま!」
子ども達はキャッキャと笑って居る。
フレア君がやって来て興奮したように話す。
「凄いんですよ! コズエ様の子ども達! 私達が吸血鬼に変化すると直ぐに真似たんです!」
「へ、へぇ」
「私なんか十歳になる直前に漸くできたのに……まだ三歳のコズエ様の子ども達は直ぐできたんです」
すげーな我が子達。
私なんか吸血鬼の子等に言われなかったら、できないままだったぞ。
「皆凄いねぇ、でもあんまり人前でやったら駄目よ?」
子ども達は興奮しつつも頷いた。
分かってくれたのだろうか?
いや、多分分かって無いのかもしれない。
「じゃあ、お家、帰ろうか」
私は三人を抱きかかえたままアルトリウスさんから下りようとしたが、アルトリウスさんがそれを許さず。
なので私は晃を抱っこしたままアルトリウスさんに抱っこされ、アインさんに肇は抱っこされ、音彩はティリオさんに抱っこされ、という風になった。
なんでだよ本当。
口をゆすがせて綺麗にして、そして寝室の棺桶に寝かせる。
するとすやすやと疲れたのか直ぐ眠ってしまった。
「では私達も休みますね」
「はい、では」
「アインさん、ティリオさんしっかり休んでね」
「はい」
私とアルトリウスさんは部屋を出てリビングでブラッドティーを口にしていた。
「アルトリウスさん、私達の子の成長本当早いね」
「そうだな」
「だからちょっと不安なの、巣立ちも早いんじゃないかって」
「それは、どうだろうな」
「分からない?」
「私は巣立つ前に居場所を失ったからな」
「……」
やらかした。
アルトリウスさんが森に来たのは家をイブリス教の連中に襲撃されたからだった。
「ごめんなさい……」
「謝る必要はない」
「でも……」
「君と出会えて、今がある、それだけで十分だ」
「うん……」
私は静かに頷いた。
本当にアルトリウスさん達の傷を癒やせてるのかな、私はそれが不安になった──
梢の魔改造もとい日本の魔改造ピザが村で好評だったという話と。
梢はやっぱり無意識に無理してるので旦那達が行動するという事と、子ども達の成長が予想以上に早いという話です。
吸血鬼の子が変化を覚えるのは10歳位なので梢の子は段違いで早いです。
最期に梢がやらかしたと思っている内容については次回答えみたいなのが出る予定です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




