9回目の冬~冬の梢一家~
秋が終わり9回目の冬がやって来た。
9回目の冬は豪雪で、梢達は雪かきに追われる日々。
その日は梢は子ども達を父親勢に任せていて──
秋が終わりやって来たのは──
『冬ですよー』
『雪ですよー』
冬。
家の子ども達は他の子に交じって雪遊びを覚えている。
一応クロウが監視してくれてるから、私達は雪かきとかに没頭できる。
「ふぅ、今年も豪雪だわ」
「全くだ」
「そうですね」
「ええ」
私達はため息をついた。
いくら春に良い影響をもたらすといえど、限度がある。
神様わかってんのかな?
と、問いかけたくなるが我慢。
余計な事言うと、また余計な事しだすからね。
前回の御供えの件でもう懲りた。
神様の言う通りにするべきでは無いそういうときは。
神様が催促するときは今後絶対しない、なので最近は神様の催促があるかどうか見て御供えをしている。
お陰で前の「サービス!」は現状つくことはない。
というか「お買い得!」見たいな状態で御供えものを欲している時は二度と御供えはしない。
今の村で既婚者勢が全員妊娠したらある意味「地獄」だからだ。
「さて、晃と肇と音彩を呼ばないと、パパ二人が寝る前にホットミルクでも飲んで体を温めさせないと」
私はそう言って公園に移動する。
勿論アルトリウスさん達もついてきた。
「む、梢雪かきは終わったか?」
「一応今日は一段落」
「そうか……晃! 肇! 音彩!」
クロウがそうやって私の代わりに我が子達を呼ぶ。
すると三人は顔を上げ、私達の姿を見ると駆け寄ってきた。
「かーしゃま! とーしゃま!」
「かしゃま! としゃま!」
「かーしゃま! とーしゃま!」
私の足にぎゅうと抱きついてから、自分達のパパ達の足に抱きつき、抱っこされる三人。
「さぁ、お茶とお菓子の時間よ、いったんお家に戻りましょう?」
「あい!」
「はい!」
「あい!」
子ども達は元気よく返事をする。
そして家に帰り、全員の分の銀牛のミルクを暖めて、ホットミルクを作り、子ども達のはお砂糖を入れて甘くしてあげた。
今日のお菓子はクッキー。
普通のだけど。
子ども達は「おいち、おいち」と言いながらクッキーとホットミルクを口にしている。
そして未だ謎なのが、吸血鬼であるはずの晃が私と同じような食生活を送れているのだ。
謎すぎる。
私の子だからか、それとも神様が何かしたのか。
まぁ、晃だけ仲間はずれにならなくて良かったと思うので深く考えない方向で進めている。
「もとちょーらい!」
「もっと!」
「ほちい!」
「うん、待っててね」
私はクッキーの予備を出し、ミルクを温めお砂糖を入れて子ども達に渡す。
子ども達は美味しそうに食べ、飲む。
「あれ、アルトリウスさんにアインさんにティリオはそんなに食べないの?」
「子ども達にまずはお腹いっぱい食べさせたいんだ」
「私も同じ意見です」
「ええ、私も」
少しだけ、家族を思い出した。
父は母の料理、やお菓子をまず子ども達に、私達に食べさせた。
だからお菓子を食べ損ねるなんて事はしょっちゅうあった。
「コズエ?」
「! ううん、何でも無いよ」
アルトリウスさんに言われて私ははっとして笑い、何でも無いように取り繕う。
子どもの頃は幸せだった。
でも、生きるのにはあの世界は適していなかったのだろう。
だから、此処で生きて行くと決めたのだ。
「かーしゃま?」
「どうしたの晃?」
「むじゅかちーおかお!」
「‼」
「らいじょーぶ?」
晃が指摘すると、肇と音彩も「らいじょうぶ?」と声をかけて来た。
いかんいかん、子ども達を不安にさせては!
「大丈夫よ、ありがとう」
やれやれ、我が子達はどうしてこんなに鋭いんだか。
「晃に言われるようでは、駄目だぞ」
「そうですね、しばらくコズエは休むといいでしょう」
「コズエ様お休みください」
この三人、分かってて黙ってたな。
そして子どもが言うのも分かってて今言ったな?
くそ、策にはまった。
「さて、お母さんは休みましょうねー」
とアインさんに姫抱きされて連れて行かれる。
棺桶に入れられる。
「かーしゃま、こえ」
「こえ!」
「これ!」
子ども達が愛用している私が作っているぬいぐるみを棺桶に入れようとした。
「大丈夫よー、くまさんも、うさぎさんも、ねこさんも大丈夫って言ってるから」
「いっれない!」
「いっれない!」
「いっちぇない!」
ぐむ、どうしたものか。
「晃、肇、音彩、ぬいぐるみさん達はお母さんの事を心配する貴方達が心配なようですよ、だから早くねんね、しましょうね」
「あい!」
「あい!」
「はい!」
アインさんが機転を利かせて言ってくれたお陰で、ぬいぐるみは三人の手の中に。
そしてパパ達は子等をベッドに寝かせてあげた。
お昼寝ならぬ夜寝の時間だ。
「さて、私達も寝ましょうか」
「後の事はお願いしますね」
「じゃあ、私起きる……」
「コズエは寝ててください」
「コズエ様は休んでください」
アインとティリオにそう言われ、結局棺桶の蓋を閉められ寝ることに。
あーもー、なんでこうなるんだろうなぁ。
「かーしゃま」
「かしゃま」
「かーしゃま」
ぱちくりと、目を開ける。
子ども達が棺桶の蓋を開けていた。
アインさん達は眠っており、起きて居るのはアルトリウスさんだけ。
「んー……」
起こさないように起きて、子ども達を撫でる。
「おはよう、夜寝はできた?」
「あい」
「あーい」
「はい」
小声で言う三つ子達。
「では下の階へ行こうか」
アルトリウスさんは三人を抱きかかえて出て行った、私も後を追う。
夜寝の後のおやつが用意されていて、三人は美味しそうに苺を食べていた。
いつもの事だけども、夫達、アルトリウスさん達には助けられてるなぁって思った。
梢一家の冬の一日のお話です。
子ども達は健やかに育っています。
そして子ども達にも心配され指摘される梢。
まぁ、今回は仕方ないでしょう、過去の懐かしい思い出に浸っていたのだから。
逆に言うと、それでも心配されるくらい梢は基本まだダメダメです。
子ども達は今のところ受け継いで居ませんが、どうなることやら。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。