子どもの成長
一二三と海翔の結婚式が終わり、梢は物思いにふける。
子ども達が巣立っていくのは大切だが切ないなと思っているとシルヴィーナが声をかけて来て──
一二三ちゃんと海翔さんの結婚は今やるそう。
春が来たら畑仕事で忙しくなるし、夏は王家のあれこれと畑で忙しいし、秋は収穫で忙しいし、冬が来たら寒いし、なので今しかないらしい。
収穫祭が終わり、一息ついているこの期間が。
木の葉が落ちる中、白無垢姿で歩く一二三ちゃんはとても綺麗だった。
奈緒さんは号泣して、五郎さんが立会人をやっていた。
みんなこうして大きくなって結婚したりして独り立ちするんだなぁと思うとちょっと寂しくなった。
私の子ども達も結婚したり、もしくはやりたい事を見つけたりして巣立っていくのだろうか?
うーん、やっぱりこれも寂しい。
子どもの成長は喜ばしいけど、切ないものでもあるんだなぁ。
「梢様、どうなさいましたか?」
感慨にふけっているとシルヴィーナが声をかけて来た。
「いやぁ、子どもって成長が早いなぁって」
「そうですね、赤子だと思っていたのがあっという間に大人になりますね、他の種族の子は」
そうか、シルヴィーナはハイエルフ、成長が遅いんだ。
「それにしても、梢様の御子様は成長が早いですね!」
「あ、私もそれは思ってる……」
「大きくなったらどんな大人になるのでしょうね?」
「うーん、反抗期が怖いかなぁ……」
「反抗期?」
「あーちっちゃい子がイヤイヤするのの感じで大人に反抗するようになったパターン」
「ああ、分かります。でも、私反抗期無かったので、反抗したのはおじいさんと結婚させられそうになった時なんですよね」
「いや、それは普通は反抗する」
それにも反抗しないなら、親が相当毒親な気がする。
それからおじ専か。
「私はレームが好きでしたから、レームを待ち続けていました」
「……」
「彼を思って祈りの黄色染めの編み物もしていましたが……兄から聞いた話だと、私が村に残した物は全て捨てられていたそうで」
「じゃあ、そう言った物も……」
「いえ、マジックバッグに必要な分だけ持って逃げ出したので、無事でした」
「それでも酷い親だよ」
「長老の命令を聞かなければという強迫観念に囚われていた親でした」
これもまた毒親か。
私は気をつけなきゃ。
というか皆に気をつけて貰わなきゃ。
「シルヴィーナ、私の子だからって特別扱いはしないでね?」
「その件ならクロウ様から、たっぷり言われました。梢の子の成長を阻害するし、他の子の成長にも悪いと!」
「クロウ……」
こう言う時は役に立つからなぁ。
「村の方達もそう言われていました」
「それなら良いんだけど」
「ですので、梢様の子が成長して、私をもし師と仰ぐことがあれば私はビシバシ行きますからね」
「他の子も?」
「勿論!」
「じゃあ、シルヴィーナじゃなくてクロウに頼ろうかな」
と私は遠い目をする。
シルヴィーナのしごきは多分キツい所じゃないと思う。
「そんなー!」
「シルヴィーナはかなり強いの知ってるから怖いの、ビシバシしごかれて我が子が折れたらと」
「はっ⁈」
「レイヴンさんからも言われているのよ、シルヴィーナは天才肌だから教えを請うことはしないようにって村全体で」
「ど、どうりで、クロウ様と一緒に居るのに声をかけられたことが無かったわけです!」
「クロウは教えを請われることがあるみたいだし、実際教えてるみたいだけど」
「クロウ様には敵いません……」
シルヴィーナはがくりと項垂れた。
「ま、まぁうちの子まだまだ小さいからね」
「そうですね!」
「あと、シルヴィーナは子育てもお手柔らかにね」
「それもクロウ様から言われました……」
クロウ先読み早いわね。
いや、私が遅いだけだか。
「まぁ、私はそろそろ家に戻るわ」
「はい、梢様。お体をお大事に!」
帰り道を歩く中で私はふと考えた。
6年目の春に三つ子は生まれて、今9年目の秋。
夏が区切りだから、まだ二歳とちょっと。
……成長早くない?
いや、その早いとしか言いようがない。
来年漸く三歳になるのに、それを超えた動きをする。
私の子だから?
精霊と妖精の愛し子だから?
どっちにしろ、成長が早い我が子が無理をしないようにしっかりしないと。
「ただいま」
「ああ、お帰りコズエ」
「コズエ、お帰りなさい」
「コズエ様、お帰りなさい」
三人にそう言って、私は家に入る。
「式はどうだった?」
「うん、一二三ちゃん、とっても綺麗だったよ」
「そうか」
アルトリウスさんは少し考えてこう口を開いた。
「私達の結婚式は極東式じゃなかったが良かったのか?」
「うん、こっちで良かったよ」
「そうか……」
妙なところで真面目なんだから。
さて、子ども達の様子みないと。
そう思って子ども部屋に向かうと、子ども達はきゃっきゃと遊んでいた。
「晃、肇、音彩、楽しい?」
そうやって声をかけると子ども等は振り返って。
「かーしゃま!」
「かしゃま!」
「かーしゃま!」
と私に突撃してきた。
またしゃべり方が変わった三つ子達。
一体誰が教えたんだ?
つい最近まで「まま」とか「まぁま」だったのに。
と思ってちらっと三人を見ると三人とも顔をそらした。
お前らか。
ふぅと息を吐き出して、子ども等を抱きしめる。
子ども独特の香りがして落ち着く。
「やっぱり子ども達は可愛いわね」
反抗期が怖いけど。
「コズエ、私達は?」
「そうですよ、コズエ」
「コズエ様、私共は?」
と、三人が抱きついてきた。
「はいはい、三人とも大好きですよ。でも、今の一番は子ども達かな」
「でしょうね」
「だろうな」
「そうでしょうね」
そう言ってすり寄る三人。
子どもが一番と言ったけど、三人も一番なの。
とは言わない、余計うれしがられると困るからね、過剰な愛情は毒ですから。
シルヴィーナについての話ですね。
彼女の親は相当今の長老達に毒されています。
シルヴィーナはもう居なくなった長老つまり故人から正しい知識を教えて貰って居たので、そういうのはありませんでした、レイヴンも同様。
だからこそ、シルヴィーナは森を出たのですが。
そして梢の子ども達、成長が早いですね。
もう呼び方が変わっています。
夫三人は一番は子ども達という梢の真意を理解しているので、梢を深く愛しています。
ただ梢は気付いてませんが。
鈍いんですよねぇ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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