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前の愛し子との通話

神様と通話してもまだ晴れない梢に、神様は前の愛し子との会話を進めた。

そのやりとりで、前の愛し子は神界で穏やかにくらしているようで、安心したが──





 違和感が消えないから不安になって神様に電話した。

『梢や、お前さんは気にしてるようだが、お前さんと前の愛し子とは関係がちーともないからの』

「いえ、それを聞いて安心しました」

 安堵の息を漏らす。

 悲惨な死を迎えた彼女と私が別物であって良かった。

 まぁ、雷直撃して死んだのは一緒だけど。

「彼女はどうなったのですか」

『今神界でお前さん達を見ているよ』

「マジすか」

『話してみるかの?』

「いいんですか?」

『よいとも』

「じゃあ」

 そう言って少し待つと、若い女性の声が聞こえた。

『もしもし、愛し子さん?』

「貴方も愛し子さんでしょう? えっと……」

『ふふ、意地悪しちゃってごめんなさい梢さん。私はマリーよ』

「マリーさんですか……」

『死んでからこうしてこの世界を見ているの』

「はぁ」

『精霊と妖精達は元気?』

「元気ですよめちゃくちゃ」

『それはよかった、それと……』

「それと?」

『貴方を愛してくれる人はいる?』

「? よく分からないです」

『ふふ、ちょっと鈍感ね、もうすこし心の機微に鋭くならなくっちゃ』

「はぁ……」

 なんかつかみ所がない。

『じゃあ神様に代わるわ』

「あっはい」

 また神様に代わる。

『このように穏やかに暮らしている』

「それは良かったです」

『だからお前さんは気にせずのんびりやるんじゃぞ』

「はい」

 私は通話を切り、休む事にした。





「マリー良かったのかの?」

「ええ、あの子には──梢には、孫には教えたくないんです」

 マリーは首を振った。

「あの時の雷でデミトリアス様達が管理するもう一つの世界に転移して、髪の毛も目の色も変わり、鞠子と名乗り夫と久司と過ごした時間はかけがえのないものでした。子にも、孫にも恵まれました。だけどその中で、梢だけは生きづらそうにしていました」

 マリーは淡々と述べる。

「梢はいつも『お祖母ちゃん、この世界って生きてるの辛い』と愚痴っていました」

 マリーは悲しげに言う。

「そしてあの日、私に手紙を渡して立ち去りました。中身は遺書でした、自殺する気だったんです、あの夏の日に」

「じゃから儂等に頼んだんじゃな。梢をあちらの世界に飛ばすように」

「ええ、ただ吸血鬼になりたいなんて願望があったのは驚きでしたけど」

「それなー」

「今、あの子はなんだかんだ幸せに過ごしている。それで十分なんです」

「夢の中でこうして梢の様子を見に来ているんじゃよな」

「ええ、梢の様子をどうしても見守りたくて」

「このまま黙ったままでいくのか?」

「ええ、お祖母ちゃんが若返ってるなんて思いませんし、ここだと髪の色とかも戻ってますから」

「なるほど」

「では、起きますね。梢が亡くなって息子夫婦がまだ立ち直れていないのですから励まさないと」

「大変じゃの」

「いいえ」

 マリーはにこりと笑った。





「んあ?」

 夕方いつも通り目を覚ます。

「ふぁああー」

 欠伸をして棺桶から出て食事を取り、ジャージに着替えていつも通りの仕事をする。

「コズエ様ーお手伝いしますー!」

「ありがとー!」

 ルフェン君達が収穫を手伝ってくれた。

 お裾分けが目当てなのは分かっているが毎日のように実るのだこれ位良いだろう。

 ブルーベリーも大きい実がたわわになっている。

「あの、コズエ様」

「いいわよ、ちょっとくらいなら」

「わぁい!」

 皆ブルーベリーを頬張る。

「美味しいー!」

「美味しいなぁ」

「おいちい!」

 微笑ましくて笑ってしまう。

「こら! 食べてばっかはいけません!」

「げ! シルヴィーナさん‼」

「コズエ様も甘過ぎですよ」

「毎日実るんだからいいじゃない」

「もう」

「ほら、かっかしないの。ブルーベリーのジャムあげるから」

 と、私はアイテムボックスからブルーベリーのジャムをシルヴィーナさんに渡した。

「……もう」

 ジャム類が好物なシルヴィーナさんはむくれる。

「いいなぁ、ジャム欲しいなぁ」

「皆にも後で上げるからね」

「わぁい!」

「本当、コズエ様は甘いんですから」

「ルフェン!」

「あ、アルスさん」

 ルフェン君達の親御さんがやって来て子ども等に拳骨をした。

「いってー!」

「いたい!」

「いちゃい!」

「お前達、コズエ様にたかるんじゃないとあれほど言っただろう! コズエ様、本当に申し訳ない……」

「だって、家のブルーベリーコズエ様のところみたく毎回実をつけないし……いってぇ!」

「普通はそうなんだ!」

「まぁまぁ、あまり怒らないであげてください、私も助かってますから」

「コズエ様、甘い、甘過ぎですよ、そんな態度では帝国の連中が来た時──」


 カンカンカンと鐘の音が響いた。


「帝国の紋様が付いた馬車だぁ!」

「シルヴィーナさん」

「はい!」

「我も出るか」

「クロウ」

 私達は村人に避難指示を出して森の入り口に向かった。

 聞いた話だと、樹に火をつけて路を進もうとしていたようだ。

 なんて酷い事を。



 ドラゴンと盾の紋様が書かれた馬車の前に私達は立ち塞がる。

「ここから先はお帰り願おう」

「愛し子を出せ! 愛し子を寄越せば帰ってやる!」

「誰が貴様等に愛し子を渡すか」

「愛し子様を渡さない」

 兵士達が出て来たが、シルヴィーナさんが跳躍し、全員の鎧ごと矢で射貫いた、すげぇな。

 残った兵士はクロウが叩きのめし、全員を馬車の中にぶち込んだ。


「く、くそう! 貴様だけでも!」


 私は伸ばされた手を握り、へし折った。


「ギャアアアアア‼」


「今すぐ帰れ、じゃないとバラバラにしてやるぞ。いいな」


 怒りを露わにすると、リーダー的立場らしいそいつは何度も頷き馬車に乗り引き返していった。


「ふぅ……」

「ちょっと情報収集がいるな」

「クロウ、お願い」

「お願いします、クロウ様」

「うむ」

 クロウは巨大なドラゴンになって飛んで行った。

「じゃあ、帰ろうか。私達も」

「はい!」


 村に戻り、無事撃退したことを報告すると、何かされなかったかと皆に心配された。

 まぁ、愛し子だし、仕方ないかぁ。



 ちなみに、遠出の狩りに参加していたアルトリウスさんはこの事を聞いてショックを受けていた。

 何で、と聞くと。

「役に立てなかった……!」

 とのこと。

 いつも役に立ってるからそんな事無いですよ、と慰めておいた。

 その時村人達の視線が生暖かいものだった。

 何故だ。







神様と前の愛し子だけが知る情報、前愛し子は梢の祖母だった発言。

また、梢に当たった雷で梢の世界に転移してきたことを知る。

どうやら神界にいるときだけは若返っているようですね。

どうやって神界にいるのかは不明ですが。


そして帝国の連中がやって来ましたが追い返しました。

シルヴィーナがかなり強いのも発覚、クロウは言わずもがな、梢はしっかり自己防衛できてます。

が、梢が愛し子とは気づいていない様子。

情報収集の結果何かわかるのでしょうか。


それと、アルトリウスが凹んだのは何故でしょうね。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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