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夏の終わりの別れと定住

忙しい夏が終わると秋がやって来た。

国王であるアルフォンスと、フローリア前公爵であるロッズが帰りたくないと抗議し始めた。

その様子に梢は頭を痛める。

アルフォンスは国王だから帰らせられたが、既に隠居済みのロッズの処遇に悩んで居るとクロウが──





 夏は忙しかった。

 私は畑仕事や畜産、養蜂など、あれこれとやっていたけれども。

 シルヴィーナにはいつもの仕事+王族への接待をお願いしていたので心苦しかった。

 私が接待なんかしたら、私の胃袋が壊れかねないので。

 マリア様だけならまだしも、アルフォンス陛下はあれこれと質問してきて私の頭痛の元になるので勘弁だ!


 なので、私は畑仕事とか子育てとか村人の要望で私しかできないことをやったりする等、忙しくも充実した日々を過ごしていた。


 そして夏の終わりが近づいてきた──


『まだ夏ですよー!』

『もうじき秋ですよー』


 夏と秋の精霊と妖精がわらわらと空を飛んでいる。

 なのでー


「もう帰らなきゃ行けないの?」

「夏だけの約束だからね」

「そうね、帰らなきゃ行けないわね」


 イザベラちゃん寂しそう。


「コズエ様」


 イザベラちゃんは私に抱きついた。


「イザベラ様?」

「私が王妃になるまで来てもいい?」

「勿論ですよ」


 私は笑顔で返す。


「ええ、ではまた」

「来年の夏をお待ちします」


 私はそう言ってイザベラちゃんとロラン王子の馬車を見送った。

 さて、こっちは片付いた。

 問題は……


「儂はもう帰らんぞ!」

「フローリア前公爵殿も言っているし、私も帰らん!」

「馬鹿なこと言ってないで二人とも帰るぞ!」


 あ、アルフォンスさん、マリア様に叩かれた。


「そうだ、馬鹿親父とアルフォンス陛下は帰れ!」


 イリスさん、キツいね。

 特にお父さんであるロッズさんに。


「息子はもう大丈夫だから、儂はここに残る!」

「そんなこと言って、フローリア公爵は父が居ないと困ると言っていたぞ!」

「儂はもう年寄りじゃ! だから終の棲家を此処にしたいんじゃ!」

「こんな役に立たない老人の終の棲家にされる始祖の森の状況考えろ!」

「役に立つぞ! 書類関係は任せるんじゃ!」

「ボケ老人が何を抜かすか! 大人しく別荘に引っ込んでろ!」

「フローリア前公爵、貴方が何かしでかさないかが心配だからご子息は引っ込んでいて欲しいんですよ、別荘に」

「あの馬鹿息子、何を抜かすか!」


 口論に終わりが見えない。

 私はチラリとクロウを見ると、クロウは言った。


「別にここを終の棲家にしても良いのでは無いか?」

「「エンシェントドラゴン様⁈」」

 わーお、二人とも驚いているよ。

 私もビックリだけど。

「ただし、その老人は一人で自分のことをできるような輩では無いから我が見繕って世話役を連れてくる」

「エンシェントドラゴン様、こんな老人の頼みを聞いていただき、感謝いたします」

「何、書類関係の手が欲しかっただけだ」


 実は書類とかそういうのの人手足りなかった?

 クロウやレイヴンさん達もやってるみたいだけど……?

 うーん、手伝った方がいいのかなぁ。


「コズエ、お前の手伝いは要らぬ。お前書類関係を扱うのは苦手だろう?」

「うぐ……」


 ぐうの音も出ない。

 元の世界でも書類関係は苦手だった。

 何が必要で、何が不必要か分からない。

 今も。


 成長してないなぁ。


 と、自分にげんなり。


「コズエ、どうした?」

「いや、役立たずで、ごめん」


 私がそう言うとクロウは面食らった顔をして、険しい表情になった。


「一体いつ何時、我がお前を役立たずと言った?」

「え、だって……書類仕事できないし」

「その分畑仕事などで頑張っているだろう、養蜂もお前以外はできない」

「それは、その」

「できる者ができる事をやればいいのだ」

「……うん」


 私は自信なさげに頷いた。

 クロウは呆れたようにため息をついたが、それ以上言わなかった。


「と言う訳で、老人、働けるうちは書類担当してもらうからな」

「それくらいお安いご用です、エンシェントドラゴン様」

「ところで、住む家は……」

「イリスお前の家──」

「お断りだ!」


 娘さんに拒否されしょんぼりするロッズさん。

 まぁ、仕方ないよね。

 結婚否定されたり色々まだ確執……というかイリスさんが許してない。


 こう言うのって親の方が許さないもんだと思ってたけど、こういうパターンもあるのかなぁ?


「あ、新しくお屋敷を作りますので……」

「イリス、いい加減許してくれんか」

「許さん」


 イリスさん、めっちゃ強気だなぁ。

 どうしてなんだろう?


 とか悩んで居たら、マリア様が耳打ちしてきた。


「イリスはフローリア前公爵夫人にそっくりでな、フローリア前公爵を尻にしていたのだ。だからイリスはここまで気が強いのだ」

「あー……」

「クレアはどっちにも似てないようで、芯のある部分は母親であるフローリア前公爵夫人にそっくりだ」

「なるほど」


 ロッズさんの奥さんに似てるのね。


「あれ、ロッズさんの奥さんは?」

「十年前に亡くなっている」


 私が此処に来て九年目だから一年前に亡くなっているんだよね。

 もう少し生きてたらイリスさんと再開できたのに……残念というか悲しい。


「最期まで出て行ったイリスを心配していたよ、だから死ぬ前に結婚を許さなかったロッズ殿には恨み言を言ったそうだ」

「あー……」


 母親として、貴族ではなく、ただの母として吸血鬼という存在と添い遂げたいと願った娘の幸せをイリスさんのお母さんは願ったのだろう。

 だから側に居て欲しかったのだろう、危険な目に遭わないように。

 だが、結婚を許さなかったロッズさんの所為でそれは叶わなかった。


 私もそういう恨み言を言ってしまうようになるのだろうか?

 子どもの幸せを純粋に願えるようになるのだろうか?

 今はまだ分からない。


 ので、取りあえず、人間の居住区にロッズさんの屋敷を建てた。


「老人、お前の屋敷まで案内しろ。我が見定め信用できる者のみ連れて行く」

「わかりました」


 ロッズさんはクロウに乗って飛んで行ってしまった。


「くそ、あの馬鹿親父と毎日顔を合わせる羽目になるのか!」

「相当根に持ってますね……」

「母は許してくれたのだが父が断固として許してくれず、私とグレイスは駆け落ちしたんだ。お陰で母の死に目にも会えず、孫も見せてやれなかった!」

「……」


 大丈夫かなー、村の中で険悪な空気にならないかなー?


「イリスさん、気持ちは分かりましたが、それで村の空気を悪くなさらないように」


 レイヴンさんが釘を刺した。


「分かっている……」


 イリスさんは気まずそうな顔をしていた。


 残った私達で、マリア様を見送る。

 マリア様は来年も来るとおっしゃっていた。

 アルフォンス陛下は来年も来たいと言って、マリア様にはたかれ仕事しろと言われて連れて行かれた。


 来年はどんな夏になるんだろうな?

 不安になる今日この頃。







いつもならイザベラとしんみりとしつつも来年の再会を待つ梢ですが、アルフォンスとロッズに頭を痛めます。

アルフォンスは馬鹿言ってるんじゃ無いと言わんばかりにマリアにしばかれて馬車に乗せられましたが(実は)ロッズはそうは行かず。

イリスとロッズの確執(一方的にイリスが毛嫌いしている)件もあるので梢は胃が痛い。

さらに、書類関係の話が出て、自分は何もできないと卑下しますが、養蜂や畑の大部分は梢じゃないとできません。

作物も巨大作物が実りませんし、蜂蜜もたっぷり採取できません。

梢は自分を卑下しすぎなんですよねーそういう環境に以前居たので中々戻らないのが悲しいところですが。

またロッズの奥さんの話も出ましたが、奥さんはイリスとグレイスの結婚を認知しました、じゃないと娘の安全が保証できないですし。

その時はイブリス聖王国とかもあったので。

それは恨み言をロッズに言いたくなりますよね、死ぬ間際でも。

確執が無くなるのかどうかはわかりませんね。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます!

次回も、読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
まぁた梢ちゃんは後ろ向きになってますねぇ〜。梢ちゃんはそこにいてくれるだけでみんなが明るくなれる太陽のような子なんだよ。そんなに卑下しないでね(;ω;)みんな梢ちゃんの良さを分かっているから…^ ^ …
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