9年目の夏~国王来訪~
春、子育てのお陰で慌ただしく過ぎ去っていった。
そして夏になり、ドミナス王国とムーラン王国から梢に手紙が届き──
春は慌ただしく過ぎ去っていった。
畑仕事に、三つ子のお世話。
三つ子は寝てる時間が長いとは言えど、遊ぶ時は短時間にとんでもない位遊ぶのでちょっと疲れる。
そしてお腹が空くと寝ていても起きるし、遊ぶのも止めるし、沢山食べる。
逆流して吐き出さないか心配だ、それで窒息することもあるし。
確かあるよな、とにかくまだまだちっちゃい子なんだから気は抜けない。
子どもはミサイル弾頭の如く生き急ぐ存在だからね。
ついでに世界の中心は自分的なノリもある気がするし。
私の子どもの頃どうだったかなー……
お母さんには手のかからない子だと言われてたけど、その事を深く聞きたくてもと、思って神様にお願いして一回お母さんの精神を夢の中でこっちに来て貰った。
お母さん、初孫に狂喜乱舞。
あてにならなかった。
本当は子育てのアドバイス聞きたかったんだけど、そんな暇なし。
お祖母ちゃんモードになって我が子らを愛でる愛でる。
その上「ばぁば」とか呼ばれたもんだから更に五月蠅くなった。
もうね、夢で疲れるとかなんなのもうって思った。
なのでお母ちゃんが役に立たないので、お祖母ちゃんを呼んだ。
お祖母ちゃんは子どもによって違うからアドバイスできないと困ったように言った。
その上で子育てに正解はないけれどもちゃんと向き合って愛情を注いであげて、と言われた。
うん、お祖母ちゃんを呼ぶべきだったな最初っから、アドバイスは無かったけれど大分気が楽になった気がするし。
まぁ、孫見せられたからお母さんにはそれでいいか。
あっちで生きてたら孫どころか結婚もできなかっただろうしね。
そんくらい生き辛かったから。
それに三人の旦那さん達と結婚もできないしね。
なのでこちらの世界で良かった。
春の終わりにドミナス王国とムーラン王国から手紙が来た。
ドミナス王国からはロッズさんとマリア様、ムーラン王国からはイザベラちゃんとロラン王子が来るという内容だった。
そう言えばアンネさんとマーガレッタさん妊娠去年してたから子ども生まれてるよね、だから来られないんだろうね、クレア様も。
マルス王子も、エリザ様とその子どもも。
イザベラちゃん達は通常通りだが、今までと違いドミナス経由ではなくムーラン王国からこちらに来るのが違う。
が、来てくれるのは嬉しいので、返事の手紙を書き、問題ないかクロウ達に見て貰い、クロウに運んでいって貰った。
そして──
『夏ですよー』
『夏ですよー』
夏が訪れた。
いつも通り来るとドミナス王国の馬車とムーラン王国の馬車が。
「梢様!」
「イザベラ様!」
馬車から降りてきたイザベラ様は私に抱きついた。
「ようこそいらっしゃいました!」
「来たかったの! いつも王太子妃として頑張ってるから息抜きをしてらっしゃいってロラン様のお父様とお母様が!」
「イザベラは立派に王太子妃の仕事をやっています」
ロラン君はしっかりとした表情で言った。
「愛し子様」
馬車から降りてきたマリア様が苦い顔をしている。
「実はな、マルスが王太子として立派だから今回此処に来たいとわめく輩がいてな」
「まさか……」
マリア様が呆れているように言うなら一人しかいない。
「いやぁ、実に活気のある村だ!」
「アルフォンス陛下⁈」
イザベラちゃんのお父さんであり、ドミナス王国の国王陛下であるアルフォンス陛下が馬車から降りて周囲を見渡していた。
「あ、あのーお仕事はいいんですか?」
「マルスと大臣達がきっちりやってくれるだろう!」
「アルフォンス、緊急の出来事があったらお前だけ帰らせるからな、再三言ったが」
「分かっているよ、マリア」
マリア様は盛大にため息をした。
大丈夫かなぁ、マルス王太子とお妃様達。
と、不安になりつつも、いつも通りやっていくしかないと決め、笑顔を顔に貼り付けて、皆を見る。
「では、来賓の館に案内します!」
そう言って来賓の館に案内した。
「夏場なのに、涼しい館だ、冬はどうなる?」
「熱を逃がさず暖かいですよ」
「ほほぉ! 作り方に興味があるな!」
「ははは、多分普通の木で作っても上手くいきませんよ、始祖の森の木等を使ってますから」
私は笑って誤魔化す。
多分普通の木でも作れるんだろうが、それは私の「クラフト能力」があっての事だろう。
そうじゃないと多分作れない。
流石にお城を建て直すなんて言い出すことはしないだろうし、私はそれ以上踏み込ませなかった。
「末永い付き合いをしていきたいものだ」
アルフォンス陛下がそう言った。
「はぁ」
どうしてか分からず気の抜けた返事を返す。
「私が国王の座を退けばマルスが王になる、そうしたらマルスの子等がこの森と交流を持つだろう」
「そうだといいのですが」
私吸血鬼という立場だから子ども達が忌避しないか?
普通なら?
「イザベラはロラン王太子が国王になるまでこの森に訪れるだろう、子どもが生まれても」
「はぁ」
そうかもしれない。
「そうなったとき、貴方という存在が子ども達の導きになって欲しい」
「私、ただの吸血鬼ですよ」
「ははは、愛し子様が何を仰いますやら」
カラカラとアルフォンス陛下は笑っている。
「いつかの苦難の為に、この森を知っておく必要がある、他の種族でも交わって暮らす事ができる事を知っておく必要があるのですよ」
「……」
まぁ、確かに。
こんなに村人が増えたちゃったなぁと我ながら思う。
「見たこともないものを畏怖するのは当然、今まで忌避してきたものを受け入れるのはしにくい。だからこそ、この森が必要なのです」
「はぁ」
「貴方は多くを受け入れ、多くの人に受け入れられこうして過ごしている」
「……」
「だから、その貴方こそ見習うべきだと知ってほしいのです私の孫達には、子孫には、我が王族の血を引く者達には」
「そう、ですか……」
「本来なら他の国々も見習っていただきたいが、そうもいかないでしょう」
「まぁ、そうです、ね」
見習う程のものかな?
「コズエ様ー収穫一通り終わりましたー! 後は僕達じゃ手に負えないものですー!」
村の子どもの声が聞こえた。
「分かったわー! じゃあ家で使う分持って行って後は貯蔵庫へー!」
「はーい!」
そう返事をすると、わくわくとした表情でアルフォンス陛下は言った。
「手に負えない物とは?」
「見てみれば分かりますよ」
土に埋まった巨大作物を見て、子どものようにはしゃぐ陛下を見てマリア様が拳骨で殴ってた。
何か色々大変なんだな、うん。
王太子であるマルスではなく、国王であるアルフォンスがやって来ました。
梢、理解してないけど、結構疲労してます。
テンションについて行けてないんですよ、アルフォンスの。
アルフォンスは、初めて見る村に凄いはっちゃけてる、なのでマリアも結構頭を痛めています。
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