梢の影響力
ムーラン王国から帰宅した梢。
イザベラがまだ滞在したいと言ってきたので、梢もまだムーラン王国のごたごたがあるしな、と受け入れる。
それをどうにかするべく、クロウがムーラン王国に向かったのを見送り──
ムーラン王国から帰宅し、戻るように説得したところイザベラちゃんがもう少しだけ居たいと拒否。
どうやら子ども達との雪遊びが楽しかったらしい。
「どうしよう?」
楽しそうに遊んでいるイザベラちゃんを無理矢理帰らせるのはちょっと嫌だ。
「国王に、ゴタゴタがちゃんと決着するまでは帰らせんと言っておく、実際まだごたついてるだろうしな」
と、クロウは言ってドラゴンの姿になり飛んで行った。
「大丈夫かな?」
色んな意味で。
「ロラン様、貴方が言ったこと聞いたんだけど?」
「若輩者の言葉をお聞きになったのですか?」
「国王様と王妃様からだけど」
「お恥ずかしい、我が国は長い歴史のあるイブリス神を崇める国です、あのイブリス聖王国には負けません」
「もう無くなったけどね」
「ええ、イブリス神は人間至上主義ではない、数多の者を照らす太陽そのものなのです、それなのにその輝きを人間が独占しているような形は嫌だったのです」
「ふむふむ」
「だから、私が王になった暁には優秀な人材は種族問わず受け入れる方針を打ち出しました、それをイブリス聖王国に思考の近い叔父上は受け入れたく無かったのでしょう」
「厄介だねぇ」
「叔父上のような思考のものはまだ居ます、イブリス聖王国のように呪われていないだけで──」
「いっそ神様もそいつら呪ってくれれば良いのに」
「そううまくいきますかね」
「知らない、ごめんね」
とお話していると、スマホが鳴り出した。
慌てて私は自宅に戻り、自室にこもる。
「はい、梢です! わざわざスマホで話すとかどういう事ですか⁈」
『すみません、思考に直接語りかけると貴方の反応が変な風に見られると思い……』
イブリス神様だ。
それはお気遣いどーも!
「で、何の用ですか!」
『イブリス聖王国のものは呪いましたが、ムーラン王国の者、イブリス聖王国と思考が似通っている者は呪っていませんでした! なのでこれから呪いますね!』
「え、ちょ」
『では、要件だけですが失礼します!』
通話が終わる。
「……」
そんな軽々しく呪っていいものなのか?
てか神様それでいいのか?
とか、考えているとまたスマホが鳴る。
「はい、もしもしー」
『おお、梢か』
「神様ですか」
『そうじゃよ、儂、デミトリアス神、神様じゃ』
「あのーイブリス神様、呪うって軽々しく言っちゃってるけど、いいんですか?」
『ま、仕方ないの』
「仕方ないんですか…」
『まー割と昔からお告げだし取ったし、それでも無視しとったのは連中だからのぉ』
「はぁ」
『だが、ここまで改革を進めると次期国王が言ったのはお前さんのお陰じゃぞ』
「マジですか」
私は聞き返した。
『そうじゃ、ロランも偏見はもっとったんじゃが最愛の婚約者で王太子妃の予定のイザベラが種族問わず付き合うようになったのは梢、お前さんのお陰じゃ』
「まー確かに、うちの村種族問わず受け入れてますからね」
納得いくと言えば、納得がいく。
『そんなイザベラのイザベラの母国と考えに感化されて、ロランもドミナス王国のように差別を撤廃することにしたのだ』
「なるほど」
まぁ、納得は行くけど、納得いかないような。
『梢は善人だからのぉ、それによほどのことをしてない限りスルー力が強いからの』
「褒めてますそれ」
『褒めて居るぞ、ではなー』
通話がまた終わる。
私はスマホを仕舞い外に出るとロラン君がいた。
「ロラン様、どうしたんです?」
「イブリス神様からお告げがあったんです! 差別する者達に呪いあれ、手を取りあう者に祝福あれ、と!」
「そ、それは、よ、よかった、ね?」
良かったのかは分からないが、ロラン君は嬉しそうに頷いていた。
一週間ほど、ロラン君とイザベラちゃんは滞在して帰って行った。
その一週間、クロウは帰ってこなかったが、特に問題が起きなくて良かった。
「あ゛──」
私はテーブルに突っ伏しつつ、たまに手紙をチラ見した。
「何の手紙ですか?」
「イザベラちゃんとロラン王子の結婚式の招待状、私とクロウの分。旦那の分は要らないと前々から実は頼んでたからアインさん達のは無いよ、ごめんね」
実は旦那達を連れていくのは止めておいて欲しかったのだ。
理由は恥ずかしいから。
「恥ずかしいから私達を連れていかないのは分かりますが、クロウ様はいいんですか?」
「エンシェントドラゴン様だもんね、それにアイン達連れて行くと赤ん坊の世話を村人に任せないといけないでしょう? それだと持て余しそうだし」
「確かに、あの子らの世話は大変ですからね」
「そゆこと」
私が行かないというのは無い。
何せイザベラちゃんと約束をとっくの昔に交わしているからだ。
それを違えるのは不味い。
「あー春になるのが憂鬱だー」
差別派が呪われて居なくなったと聞いたが、その分そうじゃない人達の負担が増えて大変だったそうだ。
イブリス神様そこら辺考えてくれないとなぁ、と思わざる得ない。
クロウに後で聞いたところ、イブリス神様の別側面は災いの神らしいのだが、それを一番理解しているのは吸血鬼達。
他の者は理解していない。
何せ、イブリス神様の怒りは様々だ。
呪いだけで無く日照りで作物を台無しにすることもある。
が、多くがネロ神と喧嘩していると思われて二人の神に許しを請うらしい。
ネロ神様からすると「なんで?」案件らしいけど。
「それにしても今年も雪は凄いなぁ」
「その分大地も潤うだろう」
「そうだね」
クロウの言葉にそう返す。
「さて、温室に向かうか」
私は温室に向かう、そこで作ってた作物を収穫して加工する。
パイナップル何かは加工しないと舌とかが痛くなるもんね。
カカオはチョコレートに加工。
その際、銀牛のミルク等を使用することで、最高品質のミルクチョコができる。
まだ、小さいから蜂蜜はちょっと上げる勇気はない。
バナナなら良さそう。
そう思い離乳食にバナナをあげる。
勿論細かく潰し、刻んでミルクに浸す。
晃はブラッドフルーツの離乳食を。
作ったら、晃が駄々こねた。
どうやら同じものじゃないと嫌みたい。
こっちの方が栄養があるのに、と思いつつバナナの方を上げるとペロリと平らげた。
アレちょっと待って?
そういや晃、吸血鬼よね?
いや、前苺食べてたけど?
どうなってるの⁇
と私の中で大量のハテナマークが浮かぶ。
『それは儂らの加護の影響じゃー』
『そして梢ちゃんの子という状況もあるわー!』
神様とディーテ様の声が聞こえた。
なに、そういう加護を晃達にあげたたの?
『そういう事になるのー』
『大丈夫、梢ちゃんの為になるものだからー』
そして声が聞こえなくなり私はため息をつく。
晃を見て大丈夫か様子を見ているアルトリウスさん達に言う。
「神様の加護と、私の子だからだって、だから普通のもの食べられるんだって」
「そうなのか?」
「神様が語りかけてきた」
「コズエ様、よくありますよねそういうの」
「まぁね」
私は空笑いをして三つ子の頬をむにむにと触る。
「可愛いんだけど反抗期が怖いなぁ」
お決まりの言葉を呟いた。
ムーラン王国、問題は一つ解決です。
他にも問題があるかもしれないので。
そしてイブリス神、梢が思うとさくさく呪うなーと思われますがこれでも我慢してたんですよ。
そして三つ子達はすくすく成長中。
梢は今から反抗期が怖いと思いながら子ども達と接してます。
反抗期はどうなるんでしょうね、あるのか、ないのか。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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