梢の三つ子達について
夏が過ぎ、落ち着いたかと梢は思ったが、何故かドミナス王国の貴族だけでなく、ブリークヒルト王国の貴族の達が混じって助けを求めてきたのだ。
人数も増え、内容も頭が痛くなるものだから梢は精神的に疲れてしまい──
秋、収穫の秋、実りの秋が訪れる。
これで子育てとか色々いつも通りになると思って居た。
だがしかし、そうは行かなかった。
「愛し子様、お助け下さい!」
「愛し子様、匿って下さい!」
──と、ドミナス王国だけだったのがブリークヒルト王国も混じって助けを求める人数が増えたのだ。
悪人はいないので村にいれたが、子どもに会わせると何が起きるか分からないので三つ子達は家に鍵を付けてお留守番、アインさんが見張り。
私やクロウ、シルヴィーナ、ティリオさんは話し相手。
アルトリウスさんはちょっと吸血鬼系のおたくで色々話しがあるらしくそっち。
なのでアインさんが見張り。
相談内容は、夫が子どもを差別するという話題から、愛人作ってるとか、白い結婚だとか色々ありすぎて私の頭はパンクなう。
なので──
「頭クラクラするー……」
自宅へ運ばれ棺桶の中で休んでいる。
「コズエ、貴方は無理しすぎですよ」
「お世辞でもありがとー……」
「褒めてません」
アインさんにデコをたたかれる。
「あいた」
「全く、無理するからこうなるのです……ってこら! 三人ともベビーベッドから出ようとしない!」
アインさんが三つ子ちゃん達のお世話をしている。
ベビーベッドから落ちたら危ないからね。
「はいはい、待ちなさい」
そう言ってキャッキャとはしゃぐ子等の声が聞こえる。
よたよたと歩く音も聞こえる。
「ん?」
三つ子が私の顔を覗き込んでいた。
「あーぶぅ」
「きゃっきゃ」
「きゃぁうー」
「こら、晃、肇、音彩、お母さんを困らせるんじゃありません」
そう言ってアインさんが引き剥がそうとすると。
「「「ふぎゃああああああ!」」」
ギャン泣き。
「アインさんーそのままでいいよー」
「しかしですね……」
「視線は気になるけどね、我慢するわ」
「はぁ……」
アインさんは晃を先ほどの位置に戻すと、晃は他の二人と一緒に覗き込んで居る。
布にくるまれた小さな手でおでこを撫でるが、悪い気はしない。
私はそのまま、疲れていたので眠りに落ちた。
「だぁうー?」
「あうー?」
「あーう?」
眠ってしまったコズエを見て、子ども等は不思議そうにしていた。
「何処まで賢いんですかね、我が子達は」
アインはそう言って子ども達に言う。
「お母さんは、いま、疲れて眠っているんです、おねんね、しましょうね?」
「だぁ!」
「きゃあぅ!」
「あう!」
今度は赤ん坊達は大人しくベビーベッドに寝てくれた。
そして目を閉じてすやすや。
「本当、普通の子どもらしくないですよね」
「梢の子であり、妖精と精霊の愛し子だからな」
「クロウ様」
クロウは少し疲れた雰囲気を背負って現れた。
そして閉じられている梢の棺桶を見る。
その後、ベビーベッドを見る。
「コズエの子というのは一体?」
「そのままだ、梢は神々の愛し子、その子等も特別になる色んな意味でな」
「愛し子は成長が早い、その子もまた同じく」
「……」
「その上妖精と精霊の愛し子でもあるのだから更に成長は早くなる、普通の子等を同じに扱っていると、その内子等が怒るぞ」
「そうですか……」
「それに見たところ、子等は母親思い──梢が大好きなようだな、二番目はお前らか」
「ええ、お世話をしてるのですが、コズエには勝てません」
アインは苦く笑った。
「まぁ、大人になれば色々と変わるだろうとも、気にするな」
「はぁ……」
アインは気の抜けた返事をした。
クロウはくつくつと笑う。
「母親しかできないこともあるが、お前達はそれを除いて全部してきた、ただ、子等はそれでもまだ二番と判断したようだな」
「えっとつまり?」
「きっちりと監視されるより、ある程度自由にさせてくれる母が良いのだろう。ま、気持ち分からんでも無いがな」
「……」
梢はアイン達と違い、家の中では赤ん坊達を部屋で好きにさせていた。
泣き出したらあやしてやるが、それ以外は自由だった。
一方、アイン達はきっちり監視をし、泣き出すような行動をしそうになったら直ぐさま止めさせた。
──私の子育ては間違ってなかってたのだろうか?──
アインがそう思っているとクロウがアインンの頭を叩いた。
「お前は短絡的すぎだ、お前達の行動どちらも正しいが、子ども等は自由を求めてる、赤子だがな」
「……」
「自分達は自由を与えられぬ身だと薄々感づいている、だからこそ赤子のうちにできる自由を満喫したいのだろう」
「自由を与えられぬ身……」
「梢は子ども等に危ない目に遭って欲しくないと思っている、大きくなったらな」
「ええ」
クロウは続ける。
「だから梢は必要最低限森から出さない方針をとろうと考えている」
「──私達の子どもは其処まで勘づいていると?」
「まぁな、神々が霊体になって相手をしているようだし」
「神々が⁈」
アインは驚愕の声を上げる。
「何もないのに、何か遊んでいる時があるだろうベッドで、ああいうときだ」
予想外の情報にアインは黙ってしまう。
「そうやって梢の子等の成長は早まり、知識も獲得している、まぁそれでも赤子レベルだがな」
クロウは晃の頭を撫でる。
「とにかく、色々考えず、今はお前達は子等の成長を見届けよ」
「──はい、クロウ様」
クロウの言葉にアインは頷いた。
「──ということがありました」
「神様達なにしてるの?」
アインさんから事情を聞いた私の第一声はそれだった。
神界から下りてきて危ないでしょう?
何かあったらどうすんの?
『いやぁ、直に関わった方が良いと思ってな』
頭の中に、神様の声が響く。
神様!
そんな事して色々問題起きないんですか⁈
『安心せぇ、お前の子等に関わっているのは儂じゃ、その間はネロとイブリス、ディーテに任せておる』
ネロ様とイブリス様はともかくディーテ様はやや不安。
『そう言うな、彼奴もお前の子が健やかに成長するのを望んでおるのだから』
はぁ……。
神様達にも見守られるってうちに子責任重大?
そう言うのとは無縁で居て欲しいんだけどなぁ……。
でも、確か男の子は聖人、女の子は聖女になるんだっけ私の子?
うーわー、それでダンピールと吸血鬼とか人生ハードモード過ぎー。
何か罪悪感が湧く。
『そう深く考えるんじゃ無いぞ、お前の子は立派に育つ。儂らが保証する』
そう言われましても……
私は神様に言われたことと、自分が知っていることを会わせると、三つ子ちゃん達の将来が心の底から心配になった──
無理したことを叱られる梢。
それにしても貴族達、愛し子に頼るんでしょうね何故か。
多分エンシェントドラゴンのクロウが居るからでしょう。
そして子ども達。
梢の事を気にしているような対応を取ってます。
赤ちゃんですが賢いです。
梢の子どもかつ、精霊と妖精愛し子なだけあります。
ただ、それ故に梢の悩みは尽きません。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
反応、感想、誤字脱字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。