人格形成に大切~音彩の将来~
王宮に行ってきて色々ぶちまけてきたクロウとマリアが戻ってくる。
その後、子育てについて、梢はエリザと語り合うが──
クロウが王宮に行って事情を話してきたと言うことだが、マリア様も一応言って暴言ぶつけなければ気が済まないと言うことで、マリア様を連れてクロウはドミナス王国へ行ってしまった。
しばらくして、憤慨したマリア様が戻ってきていたが、私はそっとしておくことにした。
「コズエ様の御子様は成長が早いと聞きました」
「ええ、早すぎて魔の二歳期が一歳で来ましたよ」
「魔の二歳期……ああ、何故かアレも嫌、これも嫌となる期間ですか不思議ですよねー」
エリザ様は子どもを抱っこしながら話している。
私は子どもはアルトリウスさん達に任せている。
「人格形成に大事な時期だと思うので根気強く接して行きますよ」
「それが宜しいかと、ルキウスは漸く落ち着いてくれまして、ね、ルキウス」
「はい、おかーたま!」
ルキウス君は元気よく返事をする。
「そう言えば、アンネさんとマーガレッタさんは妊娠なさらないの?」
「正妃の私が男の子を産んじゃったからもうちょっと後でもいいかなーって言ってるんですよ」
「なるほど」
マリア様は娘しか居なかったから側妃二人の男の子のうち、優秀なマルス君が選ばれたんだよね。
メリーウェザーの子は人々から反感を買うような王子、王女だったから選ばず臣籍に降下させるのが決まってたんだってさ。
それに猛反対したメリーウェザーはあの愚行に出たらしい。
メリーウェザーの実家の一族も似たような性格らしく、メリーウェザー一族の血筋は全員処刑、思想に染まってる子どもは修道院等から決して出さない事となったらしい。
まぁ、流石に子どもまで処刑は私も胸くそ悪いしね。
一族のところに嫁いだ娘や婿入りした者の嘆願は行われたらしい。
二度とメリーウェザーと関わらない、その思想を受け継がない、思想に染まってる子どもを関わらせないという事で助命された。
逆にこれを破ると即処刑というので二度と行われないだろう。
というか破る奴いるのか、其処まで馬鹿なの居るのか。
とクロウに聞いたら。
「一応居ない」
一応って何だ、一応って。
不穏だな。
「まーま!」
「まーま!」
「まーま!」
「はいはい、どうしたの?」
子ども等が私を呼ぶので近づけば手が赤い、
「ど、どうしたの⁈」
「……ラズベリーを潰したんだ」
「あ、ああなるほど……」
「まぁま!」
「まぁま!」
「まぁま!」
巨大なラズベリーを掴んでは握り潰していく。
「はいはい駄目! 食べ物を粗末にしちゃいけません!」
叱る私。
すると大泣きする三つ子ちゃん。
どないせーっちゅーんだ!
と、思って居るとクロウがラズベリーを摘み、三つ子の口に放り込んだ。
泣きながらもごもごする三つ子。
すると泣き止みぱちくりと目を丸くする。
「お前達が潰してたのは玩具じゃない、食い物だ」
そう言って三つ子の頭を撫でる。
すんすんとしている三つ子を抱っこして家に戻る私。
泣き止んだ子ども達に、もう一度言い聞かせ、ラズベリーを食べさせる。
すると美味しそうに食べ始めた。
「物わかりいいんだろうなぁ、うちの子」
と思いながらイヤイヤ期らしからぬ、時期を迎えている我が子達の頭を撫でる。
──本当のイヤイヤ期はもっと地獄なんだろうな──
そう思うと少しばかりぞっとした。
ディーテ様の加護なんだろうか、子等のイヤイヤはわかりやすいしある程度悩めば対応可能だから。
「コズエ様、色々とあって、お疲れでしょう。一息入れては? 子どもは私が見てますので」
「ティリオさん、有り難う、そうするね」
私はリビングに向かい、ホットミルクとコッペパンに苺ジャムを塗ったものを食べた。
うん、美味しい。
ソファーに横になり、目を閉じていると──
「コズエ、寝るなら棺桶にしろ。体に悪いぞ」
「あ、アルトリウスさん? あれ?」
私は時計を見る、どう見ても夜中を過ぎている。
「俺が今子等を見ていた、晃達は眠っている」
「ご、ごめん」
起き上がり、よだれのあとを拭う。
「コズエ、無理をしているだろう。今日はもう眠れ」
「う、うん」
いくらイヤイヤ期が他の子ども達と違い大人しくとも、育児初心者には疲れるものだったらしい。
なので私は寝室に戻り、こまったちゃんになる我が子らの寝顔を確認して微笑んでから、棺桶に入り眠った。
翌日の夕方目を覚ます。
台所に行くと、クロウが居て何というか三つ子に目を光らせている。
三つ子は本能的にクロウには逆らうべきではないと判断しているのかすっごい大人しい。
「お前の子ではあるが故に、危機管理能力は高いな。我を怒らせたら怖いと理解しておる」
それって良いことなのか?
おい。
「イヤイヤ期だったか、普段より落ち着いたものになるぞ」
「いや、ちょっと待って。さすがに私はそれを望まない」
「ほぉ」
だって、子どもの成長過程で必要なものだもの。
親が辛かったとしても、子どもには必要な物。
「クロウ、子ども等を威圧で大人しくさせるのは止めて、この時期も子ども達にとって大切な時期なの」
「お前達は大変なのに」
「そうよ、でも大事なの」
「仕方ない」
クロウが居なくなると、子ども達はギャン泣きで大騒ぎ、そしてアレ嫌これ嫌と大変なモードに。
でも、いいんだ子ども達の大切な時期だから。
「愛し子様も、苦労なされているな。親だからか」
「そうですね、でもこの苦労も、あの子達のためになるならば」
「それが良いだろう」
マリア様と会話をしていると、エリザさんがやって来た。
「あの、愛し子様」
「どうしました、エリザ様」
「実はルキウスが、コズエ様の御息女にプロポーズをして場が騒然となっております」
ワーオ!
最近の子はませてるな!
まだ一歳だぜうちの子!
「取りあえず、ルキウス様は?」
「マルスが引っ張って引き離しましたが凄まじくだだをこねています」
「だよねー、で音彩は?」
「御息女のお父様らしき方が『私の娘は王族にはやりません!』と抱っこして家に連れて行ってました」
いや、カオス。
「最近の子は早いのかよ、マジかよ」
「多分気の迷いだと思うから、安心してくれ」
「そうじゃなかったら?」
「……ルキウスに諦めて貰う、いくら聖女で、愛し子様の娘とは言え、正妃や側妃にしたら貴族達が五月蠅い」
「デスヨネー」
私も我が子をそんな場所に送り込みたくない。
しかもダンピールだから悪目立ちするしね。
うん。
私は音彩の未来を考えちょっと憂鬱になった。
赤ちゃんでも食べ物は粗末にしちゃいけませんというクロウの教育と、ルキウスの音彩へのプロポーズがあったという事実。
音彩は一歳児だが惚れたのだろう成長早いし、大きくなったらどうなるか分かりませんが。
そして、子ども達はクロウの圧を感じ取れるというもの、危機管理ができるんですね。
ただ、クロウの圧で教育は子どもの育成に悪いと判断されたので梢が中止しました。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
反応、感想、誤字脱字報告有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。