冬の始まり~子の幸福~
秋の収穫の終わり、冬がやって来た。
梢は秋の間の作物を全て貯蔵庫に保管し、それでドミナス王国や魔族の国と交易をしていた。
そして、冬。
雪はまだ危ないから子ども等は家の中にいさせようと梢は思っていたが──
秋の収穫の季節の終わりが近づくと──
『冬が来ますよー』
『もうすぐ冬ですよー』
『まだ秋ですよー』
冬の兆しが訪れる。
と、言っても、子どもが生まれて改築した我が家にはもう薪は必要無いし、幾分か楽になった。
だた、今年も豊作だった為、また魔導貯蔵庫を増設。
レイヴンさん達はドミナス王国等に向かい、レームさんは魔族の国と取引をしている。
なので少しは貯蔵庫の量が減った。
冬になれば収穫作業が無くなるので減る一方だが、村人も増えてきているし、余裕はあるはずだ。
それだけたくさん収穫したから。
そしてリザードマンさん達は冬眠へ。
狩りではとても頼りになったけど、冬はお休み。
春になったらまた会いましょう。
『冬ですよー』
『冬ですよー』
今年も豪雪、ドカ雪。
雪かきは大変だけども、大事大事。
温室が壊れないように、雪を下ろしている。
妖精と精霊さんが下ろしてくれることもあるけど。
基本は自分でやらないと。
そして、三つ子ちゃんには初めての雪。
……と言っても外には出さない。
歩けるようになっても、雪は危ない、もう少し大きくなってから……
「コズエ、晃達に外の景色見せたら興奮した」
「お バ カ!」
アルトリウスさんに思わず言ってしまった。
「コズエ様、音彩達が外に出ようとするのを止めてくれません!」
ちくせう。
仕方ない腹をくくるか。
赤ちゃん用の冬靴や、ジャンパー等を着せていざ出陣!
ちなみに全部クラフトで作った物。
「きゃうー♪」
「だうー♪」
「あーうー♪」
楽しそうにえっちらおっちら歩き回る。
目が離せない。
転びそうになったら急いで抱えて阻止。
赤ちゃんはやわこいから怖いのよ色々と。
動画でどこかの馬鹿が赤ちゃんにデコピンしてギャン泣きさせて笑ってたという胸くそエピソードをしっている分我が子は守らねばとなる。
雪ではしゃぎまくった赤ちゃんは疲れてすやすや腕の中。
私達は、晃達を連れて家に戻り、暖かな家のベビーベッドに寝かせる。
ティリオさんに見守って貰いながら、私は外に出た。
そとの柔らかい雪には赤ちゃんの小さな靴の痕が沢山。
いずれ、この足跡も大きくなるのだろうな、と思うと今から涙が出そう。
大きくなったらあの子達はどうなるのかな。
反抗期とか怖いな。
うーん、今から憂鬱だぞ。
って、これは駄目だ、毎回此処で悩んでる。
今は悩まないでおこう。
「コズエ様」
「レームさんどうしたの?」
「魔族の国で、リラリスの実が足りないそうです」
「了解、リラリスの実必要な分持って行ってって伝えて」
「はい」
そう言えばリラリスの実が不作だったって言ってたなレストリアさん。
一応収穫できたけど、それで足りなくなるかもしれないって。
足りなくなる前に補充にきたんだな。
「愛し子様、此度の件感謝いたします」
わざわざ家にまで来て感謝の言葉を伝えてくれた。
「いえいえ、私はただ、作ってただけですから。収穫は皆で」
「それでも、あれほど大きいリラリスの実を作ったのはコズエ様です」
「そう言っていただけると嬉しい限りでところでご息女は?」
レストリアさんに家庭の事情もとい、娘さんの事を聞く。
「ルビアのことですか? ええ、おてんばぶりが出て来て困っております」
「そうですか」
順調に育ってるんだなぁ。
「そう言えば、愛し子様の御子様方は?」
「雪見てはしゃいで遊んだので今はベビーベッドでぐっすり寝てます」
「健やかに育っているようで何よりです」
まぁ、健やかっていえば健やかだよね。
うん。
「ところで、リラリスの実がどうして必要になったのです?」
「瘴気が無くなり、子を安心して産める環境になった途端、妊娠する女性達が今年は多く、産後の栄養としてのリラリスの実が足りなくなったのです」
「なるほど、どうやって加工してるんですか?」
「私共のサイズの場合はそのまま食べますが……コズエ様のところのリラリスの実の場合はカットするか絞り汁にして摂取します」
「なるほど、参考になります」
今後、出産した場合、体の体調を良くする効果があるものは積極的に使っていきたい。
だって、産後はダメージでかいもんね。
吸血鬼でブラッドフルーツのお陰とディーテ様のお陰で私は産後は凄い回復早くて楽だったけど、普通のヒト達はそうはいかない。
回復する手段があるならば、それを持っておくべきだ。
まぁ、村の人口がこれからどうなるか分からないんだけどね!
レストリアさんは帰って行き、私は家に戻る。
「あ、ティリオさん、晃達は?」
「先ほど、ブラッドフルーツの絞り汁を与えました、ちゃんとゲップもさせましたし、寝相も変えてますよ」
そう言うので覗き込む。
三つ子はすやすや眠っている。
ふっくらした頬を撫でたい衝動に駆られるが、我慢我慢。
起きちゃったら可哀想だからね。
こんなにすやすや眠ってるのに。
「幸せそう」
少し離れて、そう呟く。
そして赤ちゃんの達を眺める。
「幸せですよ、この子達は」
ティリオさんが言う。
「どうしてそう思うの」
「だって、こんなに愛してくれるコズエ様の元で過ごせているんですから」
「そう、なら嬉しいな」
でも反抗期こわーい。
「コズエ様、私達は家族としてこの子達と貴方をお守りします」
「私もよ、ティリオさん。貴方達と家族としてこの子達を守るの」
手を握り、顔を見るとティリオさんの顔が赤くなっていた。
「ティリオさん」
「いえ、その、あまりにも幸せなもので」
「……この幸せをできるだけ長く続けましょう」
「そうですね、そうしましょう。命が共に尽きるまで」
「ええ」
終わりの日にはきっと、幸せな気分で眠ることができるように。
その為に、今精一杯努力しよう。
愛する三人に、それを伝えよう。
愛する子等に愛を伝えよう。
それが幸福につながると信じて──
はい、梢の三つ子ちゃん達の白銀の世界デビューのお話。
親としては倒れてギャン泣きしたりしないか心配で仕方ないのです。
何かにぶつかって泣いたら梢は自分の所為とせめますしね。
また魔族との交易ではリラリスの実が重要視されてどう使われているか聞いて勉強してます。
梢まだまだ初心者ですから。
梢は村の発展とかは二の次で、今は子ども達が幸福に過ごせることを重要視してます。
お母さん、ですからね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
反応、感想、誤字脱字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。