七度目秋来たりて~無自覚に抱え込む~
夏の終わりが来て、イザベラ達は帰っていった。
そして秋になり、梢は色々とハイエルフの出産ラッシュや、畑仕事などで色々と動く事になった。
そして子育てにもいっそう悩むようになり──
ドミナス王国からやって来るトラブルに巻き込まれながらも逃げ、我が子の育児に奮闘し、畑仕事などに精を出し、村人とやりとりを行う日々を過ごして夏が終わりに近づいてきた。
『もうすぐ秋ですよー』
『まだ夏ですよー』
「イザベラ帰る時期になったぞ」
「はい、マリア義母様」
「儂は此処に住むんじゃー!」
「お父様、駄々をこねないでください!」
ロッズさんがまた此処で駄々をこねていた。
孫が二人に増えたのだから間近で成長を見守りたいのはあるだろう、しかもその母親が行方不明だったならば。
だが、意見は却下され馬車の中に押し込まれていた。
まぁ、仕方ないと言えば仕方ない、年老いてもその権威は健在なのだから国からしたら出て行って貰ったら困るのだ。
結果、お孫さんには年に一度会う知らないおじちゃんになる。
ロッズさん、ドンマイ。
「コズエ様‼」
「イザベラ様、どうなさいましたか?」
抱きついてきたイザベラ様に私は問いかける。
「また来年会いに来ますわ!」
「はい、お待ちしてます」
「そして結婚式にどうか出て下さいな!」
「勿論です、イザベラ様」
そうしてハグが終わると、イザベラ様は馬車に乗り込んで馬車は全て遠ざかっていった。
「琥珀、普段は白亜に頼んで居たことだけど、お願いできる?」
『勿論です』
「じゃあお願い、イザベラ様達の馬車が無事着くよう、姿を透明にして王都までついていって」
『はい』
今回は琥珀にお願いした。
どうやら白亜は、私の子どもが誘拐されないかの方が気になって居る様子だ。
まぁ、一回誘拐されかけたしね……
なので、今回は息子の琥珀に頼んだ。
「琥珀は無事にやり遂げてくれるかなぁ」
『大丈夫でしょう、それより、梢様、御子様が喧嘩してます』
「おっといけない、教えてくれてありがとう」
私は急いで家に帰っていった。
すると作ったぬいぐるみを晃と肇が引っ張り合っている。
大人の吸血鬼が引っ張っても壊れない作りで作ったが、その為かぎちぎちと音がする。
「二人とも、めーっよ!」
二人の手からぬいぐるみを取り上げる。
すると二人は泣き出した。
私は二人を抱きしめ、頭を撫でる。
「よしよし、ごめんね。でもうさぎさんいたいって」
「梢何をしている」
「あ、クロウ……晃と肇がぬいぐるみを取り合って……」
「ぬいぐるみを貸せ」
「う、うん」
何をするのかと思って居ると、後ろを向いてごそごそとしだした。
そして振り返ると、そっくりのぬいぐるみが一体。
「ほれ、これで良かろう」
二体に増えたぬいぐるみをクロウが二人あげた。
晃とはじめは嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめてキャッキャと言っている。
「よ、よかったねぇ」
「きゃう!」
「だぁう!」
嬉しそうな二人に反して複雑な私。
「これで我慢ができない子どもになったらどうしよう」
「まだ赤子だぞ、これ位甘やかしてやれ」
「う、うーん……⁇」
私は首をかしげた。
ちなみに、この間音彩はずっとすやすやマットの上で眠っていた。
大丈夫か、うちの子。
『秋ですよー』
『秋ですよー』
収穫の秋がやって来た。
ハイエルフの方々以外の奥様達と子ども達が収穫の手伝いをしてくれる。
ちなみにハイエルフの奥様方は出産ラッシュだったので手伝った私はめちゃんこつかれた。
アルトリウスさん達は子どもの世話をしてくれるし、畑仕事も手伝ってくれる。
シルヴィーナも双子の育児で忙しいのに、手伝ってくれる。
これはあかん。
「うーん、何が正解なんだろう?」
「何がだ」
クロウに愚痴る私、クロウは理解しかねている様子。
「このままでいいのかって思ってるの?」
「良いのでは無いか? 村の者は誰一人として不満を言っておらぬ」
「それはそう、なんだけど……」
「お前はお前のやりたいようにやればいい」
「と言われてもねぇ……」
私は頭を抱え悩む。
やりたいことはスローライフだ、子育ても色々ひっくるめてのスローライフ。
それなら自分のやりたいようにやっている、が果たしてそれでいいのか。
「うーん……」
「本当、お前は無駄に悩むな」
「無駄で悪かったね!」
悩むんだよ、悪いか!
「お前はありのままでよい、そのままで良いのだ」
「う゛ー……」
と言われても罪悪感は消えない。
「ちょっと頭空っぽにしたいから宴用の豚汁つくる」
「お、それはいい」
私はそう言ってクロウの家を出た。
家を出ると、子ども達が居た。
「コズエ様、どうしたのですか?」
「ぐあいがわるいんですか?」
「ううん、ちょっと気分転換に宴の豚汁つくろうと思ってるだけよ」
「わぁ!」
「楽しみ!」
「お父さん、お母さん達に伝えてねー」
そう言って送り出すと、私は炊事場ででかい鍋二つ出して料理を始める。
ひときわ大きい方は豚汁、もう片方吸血鬼の方々用のブラッドワインのスープ。
ひたすらに具材を切り、鍋に入れ、お湯を足し、味見をし、それを繰り返してたっぷりの豚汁とブラッドワインのスープができた。
「はい皆さん順番を守って!」
「守ってくださいー」
シルヴィーナと一二三ちゃんが率先して配膳を手伝ってくれた。
子ども達はブラッドワインのスープを少し飲ませたが、まだ好きになれなかったらしく一口でおしまいだった。
ブラッドワインって言ったって、ワインじゃないから飲ませて良かったんだけど、子どもの口に合わないとなると離乳食何にしよう。
と考えていると、アルトリウスさんがやって来て。
「肇と音彩には銀牛の乳、晃にはブラッドフルーツの絞り汁を与えた。三人とも眠ってしまったよ」
「ありがとう、教えてくれて」
「今はティリオが三人を見ている」
「じゃあ、ティリオさんに豚汁持って行って。あ、その前にブラッドワインのスープを飲んでいって」
「その言葉に甘えようか」
アルトリウスさんはブラッドワインのスープを口にし、一息つくと、豚汁を一椀持って行った。
「コズエ、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
アインさんが声をかけてくれた。
「少し無理しているように見えますが……」
「ううん、してませんよ」
「嘘はよくありません、目の下のクマ、できてますよ」
「え、嘘」
「本当です」
其処まで気にかけていなかった。
「疲れているのでしょう、温泉に行ってゆっくりしてきて下さい。ここは私がやります」
「じゃ、じゃあ、お願いします」
「はい、勿論です」
私はその場をアインさんに任せ、温泉へと向かった。
女風呂に一人入り、体を休める。
疲れがじんわり取れるようだった。
「ああ、気持ちいい」
そのまま空を見上げる。
綺麗な月が1つ浮かんでいた。
星空も綺麗だ。
温泉を満喫し、珈琲牛乳も飲み、軽くなった体で戻ると、皆が出迎えてくれた。
そして無理をしないように何度も言ってきた。
私は無理をしてたのかな?
そう思ってしまった。
イザベラ達は普通に帰りますが、ロッズはその内定住するんじゃないかと思われます。
そしてハイエルフの出産は文章だけで終わりましたが忙しかったと思います、色々と。
それに畑仕事、自分の子育てとなると、梢は忙しいってもんじゃありません。
子育てにも悩み、そして無理をして指摘されてしまっても居ます。
アルトリウスも気付いてましたが、アインに任せておいてティリオの所へ行きました。
梢は無理するから、クロウやシルヴィーナ、アルトリウス達旦那組が頼りですね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
反応、感想、誤字脱字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。