三つ子のお世話とアインとティリオの思い
三つ子の世話をしながら、梢が無理しないように日々を過ごすティリオ達。
そんなティリオに、クロウは問いかける──
ふぎゃあふぎゃあ!
ほぎゃあほぎゃあ!
ふぎゃあふぎゃあ!
赤ん坊の泣く声にティリオが反応し、絞ったブラッドフルーツの汁が入った哺乳瓶という道具に注いで、三つ子に順番に飲ませる。
「随分手慣れているな?」
それをみていたクロウが感心したように言う。
「コズエ様を起こす訳には参りませんから」
「んあ……」
梢が棺桶の蓋を明けて体を起こす。
「コズエ様、三つ子のお世話はできてますのでお休みください」
ティリオがそう言って横に寝かせると小さな寝息を立てて梢は眠り始めた。
それを確認したティリオは棺桶を閉める。
「コズエ様、赤ん坊の泣き声を聞くと必ず目を覚ますので寝不足にならないよう寝かせているんです」
「随分手慣れているな」
「最初は大変でしたが、やっているうちに慣れました」
「そうか」
赤ん坊はベビーベッドのなかで手を伸ばしたり縮めたりしている。
「良い子だね、貴方達は」
ティリオはそう言って一人一人頭を撫でていく。
三つ子は撫でられると嬉しそうにきゃっきゃと声をあげた。
「親になってどう思って居る?」
「そうですね、ロガリア帝国が憎くなりましたよ、余計に」
「そうか」
「こんな可愛い子どもと親を引き裂いたのですから」
「ああ、あやつらのやりそうな事だ」
「……何故クロウ様は眠っていたのですか?」
「神々の愛し子の居ない世界にどうしても価値が見いだせなくてな、死ぬ事ができぬ身故眠り続けていたのだ」
「……」
「まぁ、その間世界がかなり荒れてしまったのは我の責任でもあるし、神々の責任でもある、我が甘んじて罵倒されよう」
「いえ、貴方様がコズエ様という存在を守って下さったから、私はコズエ様と会うことができ、アイン様も失った視力を回復なされたのです」
「……そうか」
ティリオの言葉を聞き、アインは黙った。
ティリオはアインに守られながらも、自身も守りつつ育った。
呪いによって視力を失い、そして呪い続けるアインをティリオは廃棄させないように守り続けた。
自分達の相互依存を利用して。
そしてある日、アインが賭けに出たのだ。
始祖の森に「神々の愛し子」が居るというのを知り、忌まわしい指輪に呪いを賭けて二人で逃亡してきたのだ。
途中で指輪の呪いを妨害しつづけて歩けなくなったアインをティリオはおぶって運んだ。
そして、始祖の森の入り口にたどり着き、コズエと出会ったのだ。
あの出会いが無ければ、今頃もう死んでいたかもしれない、二人とも。
だからこそ、漸く神々の愛し子をこの世界に再び戻した神に感謝した、そしてその神々の愛し子を守ってきていたクロウとシルヴィーナに感謝した。
そして自分達に自由をくれたコズエの事は愛した。
ただ、コズエを愛したのはティリオだけではなかった。
同じような立場のアイン。
そして別の立場だが迫害されてきたアルトリウスだった。
三人は話合った結果、三人でコズエを愛することを決めた。
勿論拒否されたら、死地に赴く覚悟だったが、拒否されなかった。
そしてトントン拍子で梢との結婚式を挙げた。
ただ、そこからが我慢の連続だった。
コズエがあまりにも初心だった為、初夜らしい初夜は四年間我慢させられた。
だが、我慢したからこそ、可愛い子どもに彼らは恵まれた。
晃、肇、音彩。
この三人の子にそれぞれ恵まれた。
ある意味奇跡だった。
アルトリウスは晃の。
アインは肇の。
ティリオは音彩の父となった。
偶然であっても嬉しかったのだ三人は。
それぞれの子の親になれて、愛するコズエとの子をもうけられて。
親として慈しむ事ができて幸せなのだ。
「クロウ様、私は親の子とをあまり覚えてないんです」
「幼い頃に連れて行かれたからか」
「はい、アイン様も同じです。妖精と精霊の愛し子のアイン様なら特に親は必死で探したと思います」
「アインに聞いたのだが」
「何です」
「アインは親を殺されたと言っていた」
「……」
「過去見をしたところ、それは事実だった、アイン以外の家族や村人は皆殺しにされ、アインだけが誘拐された」
「そう、ですか」
「お前も知りたいか?」
「いえ、結構です」
「そうか」
「……しかしそんなに派手に動いたら文句を言われるのでは?」
「証拠が残らなければいい、ロガリア帝国の物ではなく普通に流通しているものを使い、姿を隠せばバレない」
「なるほど……」
「アインも、お前も苦労したな」
クロウはそう呟いた。
「……でも生き残れた、あの子ども達の中で私とアイン様だけが生き残れた、だから死ぬ気はありません、生き続けます。梢様の事もありますしね」
「それがいい」
クロウは笑った。
ティリオも微笑む。
「ふぁああ……」
夕暮れ時、私は目を覚ました。
子ども達はマットの上に座って、村の子達にあやして貰って居た。
「晃、肇、音彩、おはよう」
と声をかければ、私をみてキャッキャと笑った。
抱きしめて頭を撫でるを繰り返す。
それが終わったらブラッドフルーツを囓って食事を終わらせ、顔を洗って歯を磨いて髪を整え着替える。
そしてもう一度三つ子の居る部屋に行く。
「ママは畑仕事をしてきますからね」
「コズエ様、何かあったらすぐお呼びしますね!」
「よびます!」
「うん、有り難う」
そう言って私は猛スピードで畑仕事を終わらせる、収穫し損ねている作物などの収穫と種まきが必要なものの種まき、それから畑の整備と、聖獣達のお世話とか。
それを終わらせて家に戻ると、アルトリウス達が村の子の代わりに三つ子の世話をしていた。
「何かあった?」
「先ほど腹を空かせて泣いていたからブラッドフルーツの絞り汁を哺乳瓶で与えた」
「そっか、良かった──」
私は安堵する。
子ども達は私に向かって手を伸ばしている。
「ママに触りたいようですよ」
アインがそう言うので、我が子達の手を順々に握ってあげる。
握ってあげると嬉しそうな顔をする。
うーん、腕がもう一本欲しいと思っちゃうなこれは。
しかし、成長が早いな我が子達。
春で三ヶ月、夏はまだまだだから小さいはずなのに、歩いてるし。
どうなってるのうちの子?
『ふふ、愛し子様驚いてる驚いてる!』
『神々の愛し子の子であることと、僕らの愛し子の相乗効果で成長が早いんだよ、子どもの時は、で大人の時はゆっくり年を取るか種族によっては取らない』
『これいったらびっくりするよね』
『エンシェントドラゴン様が言うなって言ってるから、許可がでるまで内緒にしとこうね』
などと、妖精と精霊達が話して居るのを聞いているのはクロウだけだった。
ティリオとアインの思いですね。
二人とも、子どもが愛おしいし、そして梢が愛おしい。
同時に感謝もしている、クロウとシルヴィーナ、梢に。
そしてロガリア帝国が憎くなったと。
色々と抱えている二人ですが、梢がいるならなんとかなるでしょう。
あと、妖精と精霊がちゃっかりとんでもないこと言ってますが、梢は気付くのでしょうか?
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