二つの問題
下級神の事で頭を悩まされている梢。
下級神の真実を聞き、それが事実だと受け入れられずにいた。
取りあえず、それは置いておき、我が子らの所へと行くと──
「はぁ……」
私は休憩時間というか一人の時間を貰い小屋でため息をついていた。
「下級の神様ってろくな事しないの?」
『あー一部じゃな、ギチギチに締めても新しく下級神になった輩がやらかすことがある』
ぼやくと頭に神様の声が頭に響く。
まさかの補充式。
『全く真面目だから下級神に昇格させたのにやらかすとはどういう思考回路をしとるんじゃ……』
はははは……笑うしかねぇや。
ん?
じゃあ、元々何だったんだ?
『下級神は元々この世界の知的生物じゃったんじゃよ、良い行いをしたもの達は死んだ後、その間の行動で神に昇格する』
嘘だー!
そいつらが元善人だなんて信じたくないー!
『まぁ、そう言われても仕方ないのぉ』
神様、本当しっかりしてくださいよ!
『すまん』
神様とのやりとりを終えた私は、自室から出て三つ子を任せている部屋に戻った。
「コズエ様、この子達本当に可愛いわ!」
「梢様、御子様達本当に愛おしいです!」
「コズエ様、三つ子達すごいですね!」
「え?」
可愛い、愛おしい、凄い、一体何なんだろう。
と首をかしげていると、三つ子はよちよちと歩きながら私に受かってきた。
ちょっと待って!
まだはいはいする時期じゃないの?
「あーうー!」
「きゃうー!」
「きゃっきゃ!」
膝をついていた私に抱きつき、嬉しそうに笑っていた。
「すごい! 掴み立ちしてたと思ったらもう歩いたわ!」
「本当、凄い凄い!」
「すげぇや、コズエ様の子どもすげぇや!」
いや、私も凄すぎてついていけない。
子ども達は床に座って嬉しそうに手をぱちぱちとたたいている。
なんだこれ?
「どうした、何かあったのか?」
「どうしました?」
「コズエ様、いかが致しました?」
パパ三人が帰って来た。
「晃達が立って歩いたの」
「まさか」
「まだはいはいの時期でしょう」
「そのはずです」
「じゃあ、やってみて」
と、私が晃達に声をかける。
「パパのところにいってくだちゃいまちゅか?」
と言えば、晃達はよろよろと立ち上がり、よたよたと歩いて自分のパパのところへ歩いて言った。
「……本当だった」
「本当でしたね」
「驚きです……」
「私も驚きよ」
音彩を抱っこして首をかしげる。
「成長が早いのかな」
「きゃうー?」
赤ちゃんの言葉は分からない。
「よしよし、音彩はいいこでちゅねー」
と抱きしめて撫でるとキャッキャと喜ぶ。
すると、晃と肇もやってきて、僕も撫でてと言わんばかりにやって来る。
「はい、順番でちゅよー」
撫で終えた音彩をティリオさんに抱っこして貰い、次に肇を抱っこし頭をなでる、最期に晃を撫でて満足そうな晃をアルトリウスさんに渡す。
「自分のお父様だって分かってるの、凄いわ」
「言われてみれば確かに」
気にしてなかったけど、この子達は自分の父親が誰なのか分かっている。
「私は父上に中々なつかず苦労したと父上に言われました」
「奈緒さん……」
哀れ。
「俺は誰彼構わずなつくから苦労したって父上と母さんが言ってたな」
「なるほど」
ルフェン君は想像できる。
三つ子達は人見知りしないし、なつくが一番は私で、二番目はパパ達三人。
後は同列、なつかないっていうのはどういうヒトなのか?
多分……悪人だろうな。
うん。
「とにかく、誘拐とかはされないようにしなきゃ」
「はい、コズエ様は神々の愛し子ですからね。狙う輩は多いでしょう」
「本当それねぇ」
私はため息をつく。
「未だに奴隷は禁止されているのにやる輩がいますからね」
「イザベラ様それ本当ですか?」
「ええ、奴隷を禁止している我が国でも隠れて隷属の首輪や指輪で奴隷にされている方々が見つかる事があります」
なんてこった。
「ロガリア帝国とかデミトリアス聖王国とかイブリス聖王国とか無くなっても問題があるなんて」
「コズエ様には本当に申し訳ないです」
「いや、いいのよイザベラ様が悪い訳じゃないから」
本当それ。
イザベラ様は悪くない。
悪いのは奴隷を使う奴ら。
違法行為をしてる連中。
「ところで、この世界の奴隷の扱いってどんななの?」
「劣悪な環境で働かされ、食事もほとんどもらえず、使い捨てのようなものですわ」
「OK、ギルティ」
ちゃんと制度のある奴隷じゃなくて、良くない奴隷だな。
制度で守られているなら私がどうこう言うべき問題じゃない。
制度も無く、使い捨て扱いなら許されざる。
奴隷は見つけ次第保護する、奴隷の主人はボコる、決定ね。
ただ、それが今はできなさそうなんだよなぁ。
育児をアルトリウスさん達任せにするつもりはないし、村人の力ばっかり借りるわけには行かないし。
「どうしたもんかなぁ」
「梢、何を悩んで居る?」
「あ、クロウ」
私は考えていたことをクロウに伝えた。
「それなら神々に頼めば良かろう」
「?」
私は首をかしげる。
「この世界では奴隷は違法のものだ、合法ではない。だからこその神の神託を卸してもらい、それにそぐわぬ行動をしたものには罰を与えて貰えば良い」
「いいのかなー?」
「よいだろう、お前は神々にこき使われてるし」
「はい?」
「自覚がないとは恐ろしい……まぁよいか」
とか話してるとスマホが鳴ったので、三つ子を任せて自室に向かい、扉を閉めて通話をオンにする。
「はい、もしもしこちら梢ですが」
『儂じゃよ、神様じゃよー』
「はい、神様、何でしょうか?」
『奴隷についてじゃったな』
「はい」
『そっち件は儂らが対応しよう、神罰も含めて』
「本当ですか⁈」
『うむ、じゃから子育てを頑張るんじゃぞー』
「はい!」
通話を終えて、スマホを仕舞い三つ子達がいる部屋に戻る。
三つ子達はきゃっきゃとパパ達に遊んで貰って嬉しそう。
イザベラちゃんも遊んでて楽しそう。
イザベラちゃんは来年には18歳になる。
そうするとムーラン王国にお嫁に行くことになる。
寂しいなぁ……。
イザベラちゃんと出会ってもう七年か。
長いようで短いものだ。
レイヴンさんが奴隷にされたイザベラちゃん立ちを連れて駆け込んできたのがきっかけだったな確か。
……ちょっと待てよ?
奴隷にした連中はイザベラちゃん立ちを何処に売るつもりだったんだ?
……いいか、阻止できた今になっては問題無いこと。
それに奴隷をこき使っている連中はこれから罰をうけるんだから。
「コズエ様どうしたの?」
「何でもありませんよ、イザベラ様」
「不思議なコズエ様」
笑ってごまかす私に、イザベラちゃんはそう返した。
二つの問題というのは下級神と奴隷の事です。
下級神は問題をまだ起こさないとは言いがたいですし、補充式なので。
また奴隷の件も完全に片付いていませんし。
でも、我が子達の事と村の事で手一杯な梢は神様やクロウに頼む他ありません。
問題起こさなければいいんですけれどね。
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