トラブルの元は下級神達⁈
始祖の森にドミナス王国の正妃マリアがいるからか、貴族の奥方が殺到するようになり、逃げるようにその場を後にした梢。
なんとか現実逃避をしようとするが──
「やれやれ、始祖の森が行き先が無くなった貴族の奥様方の逃亡場所にいつからなったのかな?」
「さてな、まぁ王族の避暑地と噂にはなっているから来るものは来るだろう、ドミナス王国から」
「もう来ないで欲しいんですがね」
子育ての真っ最中だから忙しいんじゃい。
あと、夏場の収穫も忙しいし!
やること満載なんですよ!
しかし、そう上手くはいかないのが世の中。
「正妃マリア様! 私もうあの人と離縁します!」
「正妃マリア様、白い結婚だっていったのに、今更愛されても困ります、愛人が私を逆恨みしてきますし」
「正妃マリア様──」
私以上にマリア様が頭を抱えていた。
そりゃあこう沢山の奥方達がやって来ては迷惑がかかると思ってるし、何より何故王都の裁判所に行かないのかと嘆いているようだ。
「ここなら愛し子様がいらっしゃいます!」
「手出しなどできません!」
「愛し子様、どうかお慈悲を!」
私も頭が痛くなってきた。
貴族社会のゴタゴタに私を巻き込まないでくれ頼むから。
「すみません、子どもの事が心配なので……」
と言って家に逃亡する、後の事はクロウに任せた。
面倒くさいんじゃ!
今この子育てという忙しい時期に来るな!
「コズエ様、どうなさったの?」
「今はイザベラ様や村の人の交流以外だと子育てと家事と畑仕事以外したくない~~」
マットの上に座っている晃の手をむにむにと握る。
あー赤ちゃんの手はやわこいわー。
「コズエ様も大変ね」
「今はマリア様が大変そうだけど」
「マリアお義母様はいつも大変よ、ここ最近王国内で家の中で男女間の交流の仕方が問題になってるし、婚約でも問題になってるって」
「Oh」
前の世界での漫画みたいなのが起こってる可能性はなきにしもあらず?
いや、其処までじゃないでしょう。
「真実の愛を見つけたとか言って婚約破棄問題が起きて廃嫡、修道院に入れられるなんて事もしばしばあるらしいわ」
「ワーオ」
いや、マジかよ。
なんでそうなってるんだ?
まさか、転生してきた人とかでてきた?
『いやぁーそのまさかじゃよ』
神様ぁ⁈
『下級神の連中、あんだけギチギチに締めたのに転生させたんじゃよ、赤子に転生させたならまだしも、人格のある人間に無理矢理魂をはめ込んだんじゃ。つまり生きた人間を転生の器にしたんじゃよ』
うわー……
『それでそういう被害があちこちで出ているから、元の魂は望むならその体から出して再び赤子として産まれるようにしたんじゃ』
望まないとかあるんですか?
『希に良い魂が良い方向に向けることがあるからその場合はみていたいと言うこともある』
なるほど……で、下級神は達は?
『人間に堕とした。まぁ堕とした場所が魔物が無数におる場所だから即座に死んで魂消滅じゃな』
えぐい。
『そんくらいしないと駄目じゃからな』
消滅は酷くないですか?
『また同じ事をする馬鹿共じゃなからな』
下級神ェ……
『まぁ、そういうことじゃからすまんの、エンシェントドラゴンに対処を頼むのは正解じゃったぞ』
それならいいんですが。
『彼奴なら解決をするじゃろ、武力と脅しで』
デスヨネー。
転生の器?
にされて、体奪われてしかもトラブル起こされた側は悲惨。
運良く性格のいい人に器にされて、状況把握とかもあるのはいいことなんだろうか?
あんまり良い事ではない気がするんだけど……
……村の人とかにそういう人出てないよね?
『安心せよ、始祖の森の住民には出ていない、下級神は始祖の森の住民にもそうしようとしたが儂等の加護があるからできないし、お主の体も乗っ取れないから悔し紛れに各国でそう言う転生をやらかしたそうだ。そうそう、お主等が関係しているものたちも加護があるから保護はできた』
はぁ⁈
ふざけんなよ、人の人生なんだと思ってんだ!
『じゃから見せしめに処刑した、下級神はやろうとは思わんじゃろ』
処刑したって、無理矢理転生させられた人の人生は帰ってこないんだぞ!
『お主の怒りも最もじゃ、儂等の監督不備じゃ許せとは言わぬ』
ぐむむむ……!
うがー!
この怒り、誰にぶつければいい!
『対応は儂らと、クロウ達がしっかりやる、お主は気にするな』
と言われても怒りが収まらない。
なので
「どりゃあ!」
開拓する。
そして開墾したり家を作ったり色々する。
畑の整備も収穫もする。
取りあえず胸くそな事情を忘れたかった。
「コズエ様、どうしちゃったのかしら」
「色々あるのだろう」
赤ん坊を抱っこしているアルトリウスがイザベラの問いに答える。
「何かこう、苛立っている感じがするわ」
「実際苛立っているんだろう」
「どうしてかしら」
「神々の言葉を耳にして苛立っているのだろう」
クロウが割って入ってきた。
「クロウ様」
「エンシェントドラゴン様? どういうことです?」
「各地で起きてる混乱の一部に下級神が関わっていた、その内容が梢には腹立たしいのだろう」
「腹立たしい、どんな内容なのかしら」
「そこまでは知らぬ」
クロウは嘘をついた。
勿論クロウも知っている、だからこの後、各地を回る予定だ。
「神々からの天啓が下った、故に我はしばし出掛ける、後は任せるぞアルトリウス」
「はい」
クロウは飛び上がり、ドラゴンの姿になって飛んで行った。
くそ、下級神に嫌われてるのは薄々感じてたけど、ここまで酷い事する奴らだとは思わなかった!
『すまんのぉ』
殴れるものなら撲殺してやりたい!
悪かったな吸血鬼で!
『梢、お主にそれをやらせることはない』
何で!
『お主の手を汚す必要はない、過酷な環境で死ぬようにしているし、此度関わった連中は全員死んでいる』
それでも殴りたい!
『もう死んで消滅しておるしの……』
むがー!
「コズエ、子ども達が泣いてるぞ」
「ああ、ゴメン!」
子ども達を抱っこしている夫達と共に家に入る。
そして母乳や、ブラッドフルーツの絞り汁、銀牛の乳を上げる。
どこかの赤ん坊とのエッセイ漫画?
だっけか、そんなので30cc位一回で出て飲んでそれ以上は飲んだら吐いたとか書いてた気がするけど、私の子そんなでもないな。
良く飲み、ゲップして、そして眠る。
最近は起きてはいはいするようになったけど、夜限定で。
「……」
うちの子達も大丈夫かね。
『大丈夫じゃ、加護が強すぎて弾かれているからな村人同様』
ならいいんですが……あと、夫達。
『安心せい、こっちも無事じゃ』
そうですか。
薄情かもしれないが、家族と周囲の人達の安全が第一だ、その他は二の次だ。
イザベラちゃん達も大丈夫っぽいし、安心なのだが、不安は消えない。
それもこれも、能無し腐れ下級神の所為だ!
心の中で盛大に舌打ちをした。
ドミナス王国の夫婦問題はまだまだ山積みの様子、梢も逃げたくなる。
そして逃避した時に、貴族の令嬢令息間のトラブルを聞き、それに下級神が関与しているとなり、うがーっとなる梢。
怒髪天を衝くとはまさにこの事。
自分を嫌ってるのはいいが、余所様に迷惑かけるなという感じです。
神様が対応しているが、怒りが収まらないのも仕方ない。
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