子どもの様子と夫婦間トラブルの来訪
梢の子ども達誘拐未遂事件の後、クロウは色んなものを殲滅して帰って来た。
それに対しドン引きする梢だった。
ただ、これで静かになるとおもっていたら、森に来訪者が来て──
エレフさん操られ事件から四日後にクロウが帰って来た。
村人を背中に乗せて。
その村人数名を見て元難民だった村人の一部の方々が駆け寄って抱きしめ合っていた。
どうやら家族だったらしい。
「もう手加減しないでイブリス教もデミトリアス聖王国の連中も、ロガリア帝国の残党も、全員殲滅してきた。壊滅なんて生やさしい事はせず殲滅しておけば良かったのだ最初からな」
クロウははっきりと言い放った。
「わ、ワーオ……」
「もっと早くこうしておけば良かった、神々も改心を望んでいたがお前の子に手を出されてついにキレたからな」
神様キレてるのか……怖いな。
でも、これで安心?
なのかなぁ?
「こう言う時どんな顔すればいいんだろ」
「笑えば良かろう」
「笑えるかぁ!」
笑えないわ!
殲滅だぞ殲滅!
笑えないわ!
「奴らがもってた悪趣味な金銀アクセサリーなどは持ってきた。溶かして再利用すれば良かろう。ヤバそうなものは壊して塵にしたから安心しろ」
そう言うと、鍛冶屋のドワーフさん達がそれらを持って行った。
まぁ、有効利用してくれるなら何より。
「ところで赤子達はどうしている?」
「あそこ」
子ども達が集まっている場所を指さす。
「すやすやねてるー」
「ねてるねー」
「おきないかなー」
「おこしたらだめだろー?」
子ども達は小声で話しながら私の子どもを見つめている。
「籠の中で寝かせているの」
「またあんな事件は起きてないだろうな」
「起きてないよ、妖精達と精霊達も警戒レベル上げてるから」
そう、妖精達と精霊達がぐるぐる赤ん坊の上を周回している。
誰かが赤ん坊を間違って泣かせてしまった場合は悲惨だが、赤ん坊が泣いた場合直ぐに私に連絡をしてくれるので有り難い。
幸い、子どもと奥様達、アルトリウスさん達が泣かせてしまった場合は見逃してくれるのは慈悲なのだろう。
まぁ、めったにないことなんだけど。
『愛し子様~~! 御子様達が泣いてます~~!』
『泣いてます~~!』
「そうだ、そろそろミルクの時間だった」
私達は籠を抱えて家に入り、リビングで私だけになる。
今回は一人ずつ母乳をあげる。
結構大変だし、痛いけど頑張る。
なんとか三人が満足し、ゲップさせて籠に寝かせると、すやすや眠り始めた。
「この子達、ふっくら可愛いんだけど。運動させた方がいいのかな?」
と、思ったので空き部屋で実行する事に。
目覚めて泣いていない子ども達を柔らかなマットの上に座らせて貰う。
「晃、肇、音彩ー。ママでちゅよ、おいでー」
私がそう呼ぶ前はマットを触ったり、もちもち体をぺちぺちしあっていたのに、言うなりはいはいで、私の近くまでやって来た。
「いいこでちゅねー」
三人をだっこすると笑顔になっていた。
「きゃうー♪」
「だうー♪」
「きぁー♪」
そんな私達をじっと見つめるアルトリウスさん達。
「じゃあ、今度はパパ達のところにいってみまちゅか?」
と問いかけるとこてんと首をかしげる三人。
大丈夫なのかな、これ。
私に逆走したら凹まないかな。
とか、考えながらマットの上に座らせる。
そして離れる。
「晃おいで」
「肇来なさい」
「音彩、パパですよ」
そういうと、三人とも、パパまっしぐら。
不安は解消された。
自分のパパ達に抱っこされ、満足げな三人。
パパ達も満足げ。
「よかったじゃない、ちゃんとパパだって分かってくれてるみたいで」
「そうだな」
「ええ、そうですね」
「ほっとしました……」
私は手をパチパチさせている晃の頬を撫で、肇の頭を撫で、音彩の手を軽く握って離した。
子ども達は嬉しそう。
今こんなに無邪気なだけに反抗期に戦々恐々……
子どもらに軽蔑されたら私は死ねる。
と、そんな事を考えていると、馬車が二台森の入り口に止まっていた。
子ども等はアルトリウスさん達に任せてクロウとシルヴィーナと、何故かマリア様も着いていった。
女性と男性が言い合いをしている。
「着いてこないでといったでしょうリオネル様! もう、私は貴方に何も期待したくないんです! 白い結婚を三年も続けるなんて苦痛でしかないんです!」
「誤解なんだライラ! 私は君の事が好きで好きで──」
「そんな嘘はもう結構です!」
また昼ドラかよ。
白い結婚三年というと、相当だぞ、ちゃんとコミュニケーション取れてないっぽいし……
「ブランシェッド伯爵にブランシェッド伯爵夫人、これはどういうことか?」
マリア様が仁王立ちで二人を見つめる。
「マリア様! 聞いて下さい、私もう離婚したいのにこの人が同意して下さらないんです?」
「離婚理由は何だ?」
「子どもを必要とする立場でありながらリオネルは初夜から姿をくらまし、私とは白い結婚を三年も続けているんです!」
「ブランシェッド伯爵それに対して申し開きはあるか」
「ございません……ですが私は彼女を愛しているんです! 本当なのです! 愛しすぎて傷つけてしまいそうな位!」
「現に傷つけておいて何を抜かすか貴様」
マリア様に激しく同意。
うちも白い結婚みたいだったけど、それは私が性行為をするのに怯えていたから。
だからその分コミュニケーションはしっかりしていた。
「私の事を避けて置いてよくもそんな言葉が吐けるわね!」
「だから誤解なんだライラ!」
「名前を呼ばないでブラシェッド伯爵! 私はこの地に住まわせて貰って二度と貴方の顔を見ないと決めてるの! この結婚を勧めた両親の顔ももう見たくない!」
「マリア様、どうします?」
「どうもこうも、トラブルを持ち込むようではこの森にいれられぬ、愛し子様の迷惑だ」
「ブラシェッド伯爵! 今すぐ離縁させて下さい!」
「だから私は君を愛していると──!」
「おい、伯爵、お前の妻は薬を使って自分に思いを吐き出してるんだぞ」
クロウが指摘する、私とマリア様達は驚く。
「く、薬?」
「薬屋に毒薬を頼んで服毒しようとした、違うか?」
「はい、ですが、毒の症状が現れず、今まで言いたいことが口から出てしまうんです!」
クロウは深いため息をついた。
「伯爵よ、薬屋が良い奴だからよかったものの、そうで無かったらお前の妻は死んでたぞ? もう開放するかしてやれ」
「エンシェントドラゴン様も、こう仰ってる。どうにもできないぞ」
「私はライラと結婚できた事が嬉しくて仕方なかったんです、だから初夜失敗してしまいそうだったから一緒に寝ることも、抱くこともしませんでした。彼女からのプレゼントは宝物庫の中に仕舞ってあります! 嬉しかったんです、彼女が私に色々してくれることが!」
「でも、貴方は何も返さなかった。言ってくれることも無かった! 夫婦なのに頼ってくれなかった! 私がどれほど辛い思いをしたのか貴方には分からないでしょう! 使用人にまで哀れまれる始末、どれほど惨めだったか!」
はいギルティ、前回のクロスベルト家の騒動も酷かったがこっちも酷い。
「もう、開放してあげたらどうです? 奥さん、苦しかったのにそんな事にも気付かない貴方に苦しんでるんでしょうから」
そう言うと、夫人は肩をふるわせ、泣き始めた。
「ライラ……」
「触らないで! 今更優しくしないで下さい……」
これはどうしたら良いんだろう?
と、悩んで居ると。
「今日はお前達泊まって行け、もう遅い」
「そうですね」
「そしてしっかり話合え」
クロウと、シルヴィーナ、マリア様の言葉に二人は頷いたので森の中に案内した。
で、マリア様達とは違う来賓の館で休んで貰う事にした。
結論的に言うと、もう二度とそんな事をしない、夫人を頼る、大切にしたかったを言い訳にしない、白い結婚を終わらせるという内容で決着がついたらしい。
縁切り寺ならぬ縁切りの森より、復縁の森のほうがいいよね?
まぁ、相手が善人に限る。
浮気してたら容赦なく縁切りでいいよ。
と、私は思った。
子ども達の防衛機能がアップしました。
梢の加護がある妖精と精霊が見張っています、操られることはありません。
梢以外。梢も誰かに操られる事は無いので安心。
そして子ども達はパパ達の事を無自覚に認識中?
自分のパパまっしぐらでしたからね。
そしてまた貴族の夫婦間のトラブル、梢もマリアも結構うんざりしています。
大切なら言葉と行動で示さないと駄目ですよね。
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