妊娠を祝われる
妊娠したことが知られ、シルヴィーナに祝われる梢。
ゆっくりしていてうとうとと眠りに落ちると、神々に呼ばれていて──
「コズエ様、妊娠なさったのですか⁈」
シルヴィーナが家に入ってくるなりそう声を出した。
クロウかな、教えたの?
「うん、いつ頃生まれるかは分からないけど」
「コズエ様の栄養状態だと三ヶ月くらいでは?」
「三つ子なんだけど」
「三つ子‼ ますますおめでたい!」
「ははは……」
シルヴィーナいつもにましてテンション高いなぁ……
「村の皆様に報告に行ってきます!」
「え、ちょっと」
ぴゅー!
と風のように家から出ると走り去ったシルヴィーナを止めることは私にはできなかった。
それから冬眠しているリザードマンの方々以外はお祝いの言葉とか色々作ったものとかを貰った。
妊娠線用のオイルとかも貰った、ティリオさん達が作ったんだって。
「それにしてもブラッドフルーツ関係以外が食べられないのがつらーい」
しゃくしゃくとブラッドフルーツを食べる。
「コズエ、確か父親は子どもら三人とも別なんだな」
「うん、クロウが行ってた」
「……もしかしたら、俺との子が吸血鬼なのかもしれない」
「え?」
「アインとティリオの子は確実にダンピールだ、それなら普通の食事も食べられるはずだ、だけども君は今ブラッドフルーツ以外受け付けていない、となると俺の中の吸血鬼の血と君の吸血鬼の血が混じって吸血鬼な子どもが腹の中にいるのかもしれない」
「……」
遺伝子とか血液型とかの奴だよなこれ。
そういう形式ならその可能性も否定できない。
「まぁ、吸血鬼な子でも私の子どもに違いないから気にしないよ」
「そうか……」
「あ、でもそうなるとその子だけ完全夜型になっちゃうよね、どうしよう」
「それはこれから考えていこう」
「うん」
私が頷くと、アルトリウスさんは笑った。
「おーい梢やー」
「むにゃ……ん? 神様ですか?」
神様に呼び出された、寝ている時。
本体は寝ているので別に良いが。
「ひとまず、妊娠おめでとう」
「……覗き見とかしました?」
「ディーテの奴が視たいと駄々こねたがそこはきっちりガードしたぞ」
「ならよかったです」
「お前さんが気になってるのは子どもの事じゃな」
「ええ」
「性別は産んだ時のお楽しみにしておこうか、種族と父親だけ言おう、ティリオとの子はダンピール、アインとの子もダンピール、アルトリウスの子のみ吸血鬼だ」
「あ、やっぱりアルトリウスさんとの子は吸血鬼なんですね」
「だから今のお前さんはブラッドフルーツ関係のもの以外食べられんのじゃ」
「なるほど……でどれ位で産まれますか」
「春頃じゃな、雪が溶けて来る頃じゃ」
「なるほど……」
「梢ちゃん! 私の加護受け取って!」
「どうわ⁈ 何事ですかディーテ様⁈」
「ディーテの奴お前さんに加護を与えたくて我慢してたようじゃ、こうやって直接加護を渡した方が良いしな」
「私の加護は安産、産後良好! 子育て良好! 家内安全よ! 受け取って!」
ディーテ様がポーズを取ると光った、眩しくて目を細める。
少しすると光は消えた。
「我らも、加護を授けよう」
「ネロ様と、イブリス様」
「夜のと水の加護を」
「朝日と陽光の加護を」
お腹に手が当たらない程度に手を近づけた。
手が光り、光の球がお腹の吸い込まれた。
「そして儂じゃ、儂の出血大サービスの加護じゃよー」
デミトリアス様もお案じ用にお腹に当たらない程度に手を近づける。
光、光の球が吸い込まれた。
「お前さんの加護も増やしといたぞ、サービスじゃ」
「あ、有り難うございます!」
一体何の加護だろう?
怖くて聞けない。
「気にする事は無いぞ、ではのー」
「んあ?」
目を覚ます、一ヶ月にしては大きいお腹を見る。
「いい子いい子」
お腹を撫でてから棺桶からでてリビングに向かう。
食堂でブラッドフルーツとブラッドティーを飲んで食事を終わらせる。
「コズエ、今日は何をすればいいですか?」
「うーん、今日も雪かきと温室の様子見てきてくれる?」
「わかりました」
アインさんはそう言って外へ出て行った。
「少しは動かないと、体に悪いから織姫のところに行ってこようかな」
というと、一番防寒の度合いが高いコートを持ってきた。
「体を冷やすな、私もついていく」
「うん、有り難う」
「私もついていきます」
「有り難う」
アルトリウスさんとティリオさんがついてきてくれた。
「織姫──」
織姫はちょうど夕ご飯を食べ終えたらしい。
冬のご飯は野菜を温めたものを出している。
織姫は近づくと私のお腹を指さした。
「うん、妊娠したの」
そういうと織姫はパチパチと手をたたき、ごそごそと棚を漁った。
出してきたのは沢山の赤ちゃんの着る産衣等。
「い、いつの間に……」
織姫は何かジェスチャーをする。
「えっと……」
「ユグドラシルに加護を貰ってこい、か?」
アルトリウスさんが問いかけると織姫は手で丸を描いた。
「じゃあ、ユグドラシルまで行こうか」
「コズエ、歩いて行く気か?」
「勿論そうだけど……」
そう言うと二人は顔をしかめ、織姫も手をバッテンにした。
「私が貰ってくるから、ティリオ。コズエの事は頼んだぞ」
「畏まりました、さぁコズエ様、家に戻りましょう」
「う、うん」
ティリオに誘導されるまま、家に向かった。
『梢様、ご機嫌よう』
「ご機嫌よう、白亜」
『梢様が妊娠なさってから、妖精も精霊もざわめいております』
「知らなかった、どんなの?」
『誰が愛し子様の御子に規模の大きい加護を与えるのかでもめてます』
ずっこけそうになったのをティリオが止めてくれた。
「大丈夫ですか?」
「う、うん」
『梢様、身重なのですからご注意を』
「あはは……どうして其処まで?」
『決まっております、加護を与えた妖精や精霊は一生その子について身の守りとなります、この場合、この妖精や精霊を奪うことはできなくなります』
「なるほど……」
『梢様は愛し子故に、既に色んな加護を貰っております、ですので妖精達が喧嘩することはありません、何せ神々の愛し子ですから』
「ほへー……」
なんか難しいなぁ……
『っと、これ以上長話をすると冷えるでしょう、梢様暖かい家の中にお戻りください』
「うん、そうする」
白亜と別れ、私とティリオは家に戻る。
「どうしようか?」
「取りあえず、体を温めましょう」
そう言ってティリオさんはコートを脱いでブラッドティーと紅茶をいれた。
私はコートを脱いで掛け、マタニティ用のフリースを着て椅子に座る。
暖かいそれを、私は一口のむ。
血の味だけどもフルーティーで飲みやすい。
「梢様、お体は?」
「大丈夫、調子がいいわ」
お腹をさする。
今妊娠何ヶ月に相当するのかちょっと分からない。
うーん、お腹がぽっこり出てるけど、後の成長がゆっくりなのかな?
うろ覚えの記憶だと五ヶ月位だから、後がゆっくり成長するのかな?
でも、三つ子だしなぁ……
うだうだ考えているとティリオさんが微笑んで私の肩を撫でる。
「夢みたいです、この生活が、この暮らしが、そして梢様が自分の子どもを妊娠してくださったのが」
「ティリオさん……」
「梢様、あの時、私達を助けてくれて本当有り難うございます」
「……ううん、私はできることをしただけ。アインもティリオもよく頑張って逃げてきてくれたね、有り難う」
そう言ってキスをした。
どうか、この幸福がいつまでも続きますように。
私は祈った。
梢、色々と祝われる。
特に神様、なんか色々凄そうな加護と祝福ありそう。
そして色々と祝われ、体を気遣われる。
妊娠して梢は愛されているのと、出会いにより深く感謝しているのです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。