妊娠~三つ子~
リザードマンの沼地の件はカインド帝国の血族の仕業と発覚し、対応したクロウと沼地がどんなものだったか知って硬直する梢。
やがて、冬になり梢はある日夢をみる、それは自分が母親になった夢で──
沼の件でクロウが出てから帰って来たのは、それから二日後。
怒り心頭で帰って来た。
「まだ捕まってない馬鹿貴族がいた! カインド帝国の血族がだ!」
「まだいたのー⁈」
本当それである。
ゴキブリ並みにしつこいな!
「害虫並みにしつこいな!」
「ああ、その通りだ!」
益にもならぬ害しかなさぬ、そんな奴らがいるだけで大変だ!
「取りあえずドミナス王国に押しつけてきた、処刑は任せるとな」
「そうなんだ」
私は一息つく。
だけども、あそこに帰って暮らすのは無理だろう、あんな広く沢山あった沼地が全て覆われて仕舞ったのだから。
「そう言えば、あの沼地には何がいたの?」
「ああ、ブラッククロコダイルが居たらしい」
「くろこ、だいる?」
ワニ、だよね?
「結構凶暴だが、リザードマンはそれの狩りが得意だあの広い沼で上手いこと狩っていたのだ」
「へー……」
確か人食うワニの事だよね、クロコダイルって……
うわ怖い。
「というか、もしかしてそんな危ない沼地で暮らしてたのリザードマンの皆さん?」
「そうだな」
「ここではそこら辺気にしないで暮らして欲しいね……」
「そうだな」
私は顔を引きつらせることしかできなかった。
リザードマンの方々も牧場仕事をやっていたと言うことなので、増えた牛と鶏を分けて貰い、それのお世話をしてもらうことにした。
子どものリザードマンは村の子どもや奥様に交じって作物の収穫に交じって貰うことになった。
奥様達は毛皮を集めて冬眠の準備。
リザードマンは変温動物だから冬眠するんだって。
寒さ完全にシャットアウトできる作りの家で良かった。
布団とかベッドも暖かいしね。
リザードマンさん達は、冬眠するからと大人も子どもも作物や狩りで得た肉をもりもりと食べて居た。
命に関わるから仕方ないね。
冬の間の家畜は他の皆で見る方向性で決まった。
そんなこんなで訪れたのは──
『冬ですよー』
『冬だよー』
冬がやって来た。
リザードマンさんは共同の家の中で冬眠に入った。
妖精さんにたまにお願いして様子を見て貰ってるが大丈夫そう。
「さて、今のうちに計画立てないとね」
と、次の春の計画を立てる。
計画を立てて見廻りをして帰ってきて、一人椅子に座ってテーブルに突っ伏して呟く。
「子ども……いいなぁ」
と呟いた。
「でも私なんかが親になっても子どもが迷惑だよなぁ……」
親になる勇気がない。
親になっても子どもを不幸にしてしまいそうだ。
「はぁ……」
私はそのまま目をつぶった。
子どもが居た、三人の小さな子どもが居た。
ママと私の事を呼ぶ。
心が暖かくなって、心地よい。
パパ達が待ってるから行こうと手を握る。
視線の向こうには──
「──コズエ、こんなところで寝てたら体に悪いぞ」
「んあ……」
どうやら私は寝ていたらしい。
しかし、あんな夢を見るとは。
よほど私は子どもが欲しいのか?
強欲でつくづく嫌になる。
「コズエ、どうしたのです?」
「コズエ様、どうかされましたか? とても幸せそうに寝ていたのに」
ああ、やっぱりアレは幸せだとおもったのか。
「──夢を見たの、小さな子ども達が私の事をママって呼んでくれる夢」
私はぽつりと夢の内容を喋ってしまった。
「幸せだったなぁ、短い夢だけど。でも、親になる覚悟がない私が子どもを産むなんて身勝手だもの」
子どもが不幸になるじゃない。
「──本当に、そう思っているのか?」
「え?」
「君が親になる覚悟ができてないとそう言っているんだ」
「だってそうでしょう?」
「親になる覚悟がない輩は子どもが居て幸せだなんて言わない、例え夢でも」
「夢でも言う人はいるわ、だって……」
そうじゃなきゃ不幸な子はいるはずもない。
「コズエ、私達がいます。一人じゃありません、貴方は親になりたがっている、でもそれに怖がっている。なら私達が手を取り一緒に一歩歩み出しましょう」
「アインさん……」
「ええ、コズエ様。それに皆がいます。貴方の子どもは決して不幸になどなりません」
「ティリオさん……」
「コズエ、もっと私達を頼って良いんだ」
「……うん」
私は三人に抱きしめられながら泣いた。
優しい手。
少しだけ冷たい体と、温かい体。
甘く蕩けるような感触と、心地よさ。
それと同時に、熱帯びる感触。
どれもが心地良いのに刺激的で──
「ねー! デミトリアス様! どうして梢の夫婦の営み見ちゃだめなの⁈」
「加護は与えて良いが見るなというとろうが」
神界でディーテがデミトリアスに駄々をこねていた。
「せっかくの夫婦の営みよー! しかも初めて! なんで見ちゃ駄目なの!」
「其処まで見たいというなら下級神に落とすぞお前さんを」
「嫌ー!」
デミトリアスはワインのグラスを傾けながらディーテに言う。
ディーテはごろごろとのたうち回った。
「梢に見ていたならお前さん口にだすじゃろ、そうしたら梢お前と一生口聞かんぞ」
「それはもっと嫌ー!」
「分かったならだまっとれ」
デミトリアスはちょっと大変なことになってあるであろう梢に対し手を合わせた。
「初めてが一人ずつとは言え、三人の相手はづかれだ」
私は少し疲れた声で、ベッドに横たわったまま言った。
「それはすまん」
「すみませんでした」
「申し訳ございません」
「妊娠薬飲んでシタけど上手く妊娠してるかなぁ」
「魔法で診断はできますが……時間がかかるかと」
「いいよ別に」
最終手段としてスマホで妊娠検査薬買えばいいだけだし。
そうとは言わずお腹をさする。
ほんのりと暖かく感じられた、何でだろう?
それから、三人は私に負担をかけないようにと色々と動き始めた。
そうこうしていて一ヶ月弱が経過した。
ブラッドフルーツ以外喉を通らない。
正確にはブラッドフルーツ関係のもの以外喉を通らなくなった。
お腹も少しだけぽっこりしてきた。
もしやと思い検査薬を購入。
結果。
陽性。
最近ぶかぶかの服ばかり着ているので誰も私の腹に気を止めない。
なのでクロウのところに行き──
「クロウ、お邪魔ー」
『おお、どうした、梢』
私は服をめくりお腹を見せる。
「妊娠したかもー、確かめてー」
『お前さん等いつの間に⁈ いや、それよりも視るからまっとれ』
「あーい」
クロウの金色の目が私の腹を視る。
『三つ子じゃな、おめでとう。あと全員父親違うって出たんじゃが』
「……深く考えないでくれると助かる」
『そうするわい』
吐き気を堪えて作ったバケツプリンをクロウに相談賃として置いて帰り、三人が集まる時間に私は口を開いた。
「あのねー、私三人に言うことあるの」
「なんだ?」
「どうしました?」
「どうか致しましたか?」
「三つ子妊娠しました、親全員違うから確定で三人の子どもっぽい」
三人は硬直。
アレー?
その直後、抱きついてきた。
「コズエありがとう!」
「有り難うございますコズエ!」
「コズエ様、お体を今まで以上大事にしましょう!」
感極まった顔で言われ硬直しつつ、私はうんと頷いて笑った。
はい、梢妊娠回です。
ぶっちゃけますと、三つ子はアルトリウス、アイン、ティリオ、三名の子です。
妊娠時に、ディーテとデミトリアスの神の加護があったので、梢は三人の子を三つ子として妊娠しました。
ちなみにクロウが驚いていたのは、神託で教えていなかったからです。
つまり知らなかった。
梢が妊娠した結果、どのようになるのでしょうかね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。