表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/280

夫婦仲について~とある侯爵家の夫婦の場合~

夏の夕方、始祖の森をドミナス王国の貴族が訪れた。

子どもを産んでから夫婦のやりとりが三年もない事に苦しんでいるクロスベルト侯爵夫人エミリアは息子のブランを連れてやって来たのだ。

もう離縁したいという彼女の願いに対し、梢達は──





 夕方に起きようとしたら、シルヴィーナが棺桶をたたいていた。

「コズエ様、申し訳ございません」

「ん? 何かあったの? ドミナス王国からの来訪者が」

「はい?」


「えっと、つまり4年も無言の夫婦生活が苦しくなったから正妃マリアがいる始祖の森に逃亡してきたと、息子をつれて」

「はい……」

 女性──エミリア・クロスベルト侯爵夫人は政略結婚した夫との冷えた夫婦生活に辛さを感じたようだ。

 22歳の彼女には相当苦痛の日々だったろう。

「旦那に愛人の影は?」

 ちょっとクロウぶち込むな。

「いいえ……」

 エミリアさんは首を振った、しかしこれでは分からない。

「此処に来ることは伝えたのか?」

 マリア様が訪ねる。

「いいえ……」

 クロウはため息をついた。

「ちょっと出掛けてくる」

 そう言って外に出て飛んで行った。

「あの……」

「まぁ、悪い事にはならないよ」

「そうならいいのですが」

「……エミリアさんは夫さんへの愛情は?」

「冷めてしまいました、この四年間の夫婦生活で、子どもを産んでからの三年間で……もう、別れたいです、終わりにしたいです」

「あー……」

 何となく嫌な予感がした。





「エンシェントドラゴンが来たぞ、国王アルフォンスは何処だ」

「こ、こちらに!」

 クロウは案内されるままついて行った。

「エンシェントドラゴン様、これはこれは」

「どのような要件でしょう?」

「エミリア・クロスベルトの夫は居ないか?」

「……私ですが、何か」

 金髪碧眼の男性が立ち上がる。

「お前の妻? いやお飾りの妻かな? その妻お前の仕打ちに耐えきれないと息子と共に始祖の森にやって来た」

「な……⁈」

「クロスベルト侯爵? 貴殿は妻に一体何をした?」

 アルフォンスの眼光がクロスベルト侯爵を射貫く。

 同時に、エンシェントドラゴンであるクロウの視線も冷たい。

「神から愛し子との会話で聞いたが、お前の妻はお前への愛情はもうとっくに冷めてしまったから別れたいそうだ」

「クロスベルト侯爵? 再度尋ねるぞ。貴殿は妻である夫人に何をした?」

「……何もしておりません」

「何もしてなかったらこんなことになるか!」

 アルフォンスが怒鳴り、アルフォンスが宥めようとする。

「『何もしてないか』なるほどこの盆暗は何もしてこなかった(・・・・・・・・・)のだな本当に」

 クロウは呆れと侮蔑の眼差しを向ける。

「夫人は言った冷え切った夫婦生活だったと、つまりお前は何もしてこなかった。子どもが生まれてから夫婦としての生活を一切」

「そんな馬鹿な事が何故あるのです?」

「知らん、が夫人がお前との関係を終わりにしたいと言っていた」

「⁈」

 クロスベルト侯爵の目が見開かれる。

「再構築を望んだとしても難関だぞ、何せ三年もだ、他のもの達はよくしてくれてもお前だけが妻の存在から離れてきたから今回の事が起きた」

「……エンシェントドラゴン様、エミリアに会わせてください」

「あっても構わんが森に入れんぞ、お前のような馬鹿は森に入れたくない」

 クロウは心底嫌そうに告げた。





「うー、嫌な予感がするよー」

「コズエ様大丈夫ですか?」

「大丈夫か、愛し子様」

 私はソファーに横になりながらもだもだとしていた。

 マリア様とシルヴィーナが心配そうに私を見ている。

 すると、気配を感じた。

 森の入り口にクロウと、知らぬ男性の気配を。

「シルヴィーナちょっと見てきて」

「はい」

「もしかして、あの人が?」

「かもしれないなぁ」

 ブラン君はルフェン君達に預けているので問題無い。

 しばらくすると、シルヴィーナは戻って来た。

「エミリア様、クロスベルト侯爵との事です」

「……」

「この機会に関係を終わりにしたいなら言いたいこと言った方が良いよ」

「……そうします」

 エミリアさんは立ち上がり、私はついていった。


 森の入り口で金髪碧眼の男性が立っていた。

「エミリア……!」

「今更名前を呼ばないでください、クロスベルト侯爵様」

 うわー!

 これは修羅場な予感、嫌な予感するー!

「何故あんな手紙を置いて出て行ったのだ⁈」

「……貴方は子どもが生まれてから私に一切触れなくなった、夫婦の食事もしなくなった。使用人の方々が抗議したけど貴方は聞き入れてくれなかった」


「私、寂しかったんです。この三年間、ずっと。でも三年も経つと冷めました、政略結婚だけど良縁だと思ったけどそれは全て間違いだった、貴方にあって良かったのはブランを産んだことだけ、他は何も良いことが無かった」


「エミリア、聞いてくれ私は君を──」

「今更愛しているなんて都合の良い言葉は要りません。もう疲れました、どうか離縁してください、私はブランと実家に帰ります」

 あ、これはもう駄目だな。

「触れてもくれない、愛の言葉もない、そこに居ないようならば私は居なくて良いでしょう。どうぞその愛は別の御方に差し上げてください」

 もうだめだなぁと思いつつ、私は気になってしまい聞くことに。

「あのー一応聞いて良いですか、なんで、そんなことしたんですか?」

 侯爵様に聞きます。

 侯爵様は重い口を開きました。


「エミリアは政略結婚で嫁いできたのに、私を慕ってくれて、跡継ぎまで産んでくれた……これ以上近づくともっとエミリアを欲しくなってしまう、そうすれば彼女に嫌われてしまうと私は思い──」


「ばっかじゃねぇの?」


 おおっと思わず本音がもれた。

「私も結婚して四年経つけど旦那達とは性行為もできん臆病ものだ! いつもそれが申し訳なくて謝る事も少なくない、なのに旦那達はそれで構わないと言ってくれた。何故だと思う? 毎日ちゃんと言葉を介しているからだよ、感謝を伝えているからだよ! アンタはそれをしたか侯爵殿? してねぇんだろ! アンタは結婚に向いてなかったんだよ、恋愛も私以上に向いてないんだよ、やることやってんなら欲しがっておかしくないだろうが! それが普通だろうが! こっちはやることやってないけど、大切にしてくれるんだよ、アンタは奥さんを大切にできなかった三年も! だからこの離婚話も仕方ない!」

 すまない、アルトリウスさん達。

 私自分の事棚に上げて言っているようだけど、許してくれ、後で何回でも土下座する。

「愛し子様の言う通りだな、これでは離縁は仕方ない」

「え」

 私の背後からマリア様が現れた。

「クロスベルト侯爵、もう開放してやれ。彼女は傷つき続けた。ブランも諦めろ、母親と引き剥がすのを愛し子様が揺るさんだろう。お前には新しい結婚相手を見繕って──」

「お言葉ですが拒否します! 私の妻はエミリア唯一人! 彼女以外の女と結婚するくらいなら死んだ方がマシだ」

「じゃあ、死んだら?」

 あ、本当駄目だ、奥様目が冷めている。

 浮気とかしてなくても夫婦仲が冷え込むとこんなになるんだなぁ。

 あんまり勉強にしたくなかったけど、勉強になっちゃったよ。

「君が他の男に抱かれるなんて──」

「安心して、もう結婚はこりごりだから、私はブランにだけ愛情を注ぐわ」


 で、ここから泥沼。


 いい加減離縁したいエミリアさんVS離縁は絶対回避したい侯爵の言い合い。

 言い合いというか、侯爵さんが何で今まで言わなかった?

 と思うような愛の言葉をエミリアさんが一蹴するという流れ。


 見ていて胃がキリキリして私が倒れた。

 こんな修羅場見たくなかったよママン……




 目を覚ますと医療院のベッドで私は寝ていた。

「エミリアさん達は⁈ あいでででで‼」

「メンタルやられて胃を壊すとは吸血鬼で初めて見たぞ」

 クロウが安堵の息を吐いた。

「いでで、あの後どーなったのー?」

 と聞いてみる。


 倒れた私を担架でシルヴィーナさんと猛スピードで来たアルトリウスさんが運び医療院のベッドに運んでいるのを見たルフェン君達がブラン君を抱えてやって来て事情をシルヴィーナが話すと、ブラン君、ちっちゃいのに森の入り口まで走って行ったそう。


 そこで土下座するパパと見下すママを見て、ママに「パパをおこらないで、ママ」と泣きながら言ったそう。


 子どもの前ではちゃんと父親だったそう、侯爵。

 それを見たエミリアさんがため息をついて「一年、もう一年猶予を上げますこの子の慈悲として、その間に私を心代わりさせられなかったら私はブランと出て行きます」となり一応解決?

 これで良かったのかなぁ?


「それにしてもあの話聞いてると申し訳なくなるよ、アルトリウスさんやアインさん、ティリオさんにそんな思いさせてるんじゃないかって心労にも来た」

「大丈夫ですよ、コズエ、私達はそんな思いしてませんか」

「どぅわ⁈」

 いつの間にか居たアインさんとティリオさんに驚く私。

「はい、あのような貴族とはコズエ様は違いますから」

「うん……」

「分かったなら追い詰めるなよ」

 アルトリウスさんに頭を撫でられ、私はほっと一息つくことができた。

 そして胃の痛みも気がついたら引けていた──







夫婦でもちゃんと伝え合わないと駄目だよねって話です!

この夫婦は子どもが一時的につなぎ止めてますが、次失敗したら夫であるクロスベルト侯爵はガチで離縁されるでしょう、向こう有責で。

梢は梢なりに、子作りというかそういうことを四年もできないでいることをかなり申し訳なく思っています。

だからこそ、愛を伝えること、感謝を伝えること、触れ合うことはしてきました。

それをしてこなかったクロスベルト侯爵は異常に見えたのでしょうね、梢にも。

また、自分はクロスベルト侯爵みたいなんじゃないかなと不安になっているのを察知してフォローする、アルトリウス、アイン、ティリオ。

さすが梢の旦那というべきでしょうか。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これは、子どもに慈悲をかけられた感じなんですね。まぁ、子どもの方はよくわからないけど自分の親が喧嘩してるからそんなところは見たくないから泣いちゃったって感じなのかな? にしても、梢ちゃんがキレるなんて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ