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クロウとのやりとりと、吸血鬼の奥様の出産

梢は人目のつかない場所でため息を吐き出す日々をおくっていた。

だが、それを無視するようにクロウが一人こもっていた小屋に乱入し、梢の頭痛の元となるような事をしゃべり出す──





「はぁ……」

 人目が着かない場所でため息をつく日々を送っている。

 人目につくと皆が心配するのが分かるからだ。

 だが、そんな努力が無駄な奴が一匹、いや一人居た。



「何故人目を避けてため息をついているのだ」

「……誰から聞いた」

「デミトリアス神」

「神様ー‼」

 小屋の中で頭を抱える。


「神々が直々にお前を訪問したと聞いたが……」

「訪問してきたよディーテ様と神様……元いデミトリアス様が……」

 私は隠す事など意味がないと判断し、答えた。

「神々からは何を言われた」

「神様からは特に……ディーテ様からは早く子作りしろってせっつかれた」

「まぁ、愛し子で夫を持つのは珍しいし、子どもを産むと色々あるからな」

「色々って?」

「前も話したと思うが……まぁ、聖人や聖女が産まれる」

「それは知ってる」

「そしてだ、そのもの達は愛し子の次に加護を持って居る、持つ事が許されている」

「へぇ」

「ディーテ神的にはお前にここに居て貰って、子等に外に出て貰う考えなのだろう」

「じゃあますます子どもを産む気にはなれない」

「何故だ?」

 私は盛大にため息をつく。

「私の子どもは神様の都合のいい道具じゃないし、私だって神様の都合の良い道具じゃない」

「なるほど、一理ある」

「それに吸血鬼の血を引いているなら子ども達は皆忌避される存在になるでしょう?」

「……そうだな」

「そんな状態で子を外に出すなんて私は嫌だ。無責任じゃないか」

「ふむ、確かに」

「だからまだ子どもは産めない、神様がそんな考え持ってるならなおさら産む気はない。子どものために」

 親になる勇気はまだないが、産んだ子を不幸にする気はさらさらないのだ。


 外の世界は優しいものではないのは重々承知だ。

 だからこそ、私は子ども達にも安全な場所で居て欲しい。


 神様の都合が知ったことではない。

 なので神様は私の教育方針に関わる気でいる限り私は子どもを持たないだろう。





「ディーテよ。お前が望む通りの事を考えている限り梢は子どもを生むことを拒否し続けるようだぞ」

 デミトリアス神は神界でディーテ神に言う。

「えーだって、せっかくの神々の愛し子の子よ!」

「それで危険に巻き込まれないと言い切れるか」

 ネロ神の言葉にディーテ神はむぐぐぐっと苦虫を噛み潰したような顔をする。

「言い切れない……」

「だから愛し子は拒否しているんだよ、そもそも愛し子の件があるじゃないか私等には」

 イブリス神が悲しげに言ってマリーを見る。

「あれは仕方の無い事ですが……ディーテ様、お願いでございます。梢の、孫娘の思うようにさせてください」

「……分かったわよ」

「分かればいいんじゃよ」

 デミトリアス神は酒を取りだし飲み干した。

「うむ、梢のワインは美味いのぉ!」

「ちょっとデミトリアス様! 私にも!」

 不満そうな顔をしたディーテ神が瓶を奪ってグラスに注いで飲んだ。

「でも、私が何もしなくてもまだ当分愛し子は子どもを持つ予定はないのでしょう?」

「それはそうじゃな、梢は親になる覚悟ができとらん」

「梢……」

 マリーは不安げな顔をした。

「大丈夫何もせんよ」

 デミトリアス神は下界を覗き込み、梢を見る。


 梢はクラフト小屋で物作りの真っ最中。


「梢は今まで通り物作り、畑仕事のスローライフを過ごさせるのが良かろう」

「デミトリアス様……」

「マリー、いや鞠子や安心せぃ。お前の孫娘もその子も幸せになるように誓うとも」

「有り難うございます……」

 マリーは涙を一筋流した。





「ぷしゅん!」

 私はくしゃみをした。

「誰かに噂されてるのかなぁ……」

 そんな事をぼやきながら、アイテムボックスに自分の作ったお酒やチーズやら何やらを詰め込んでいく。


 そしてクラフト小屋から出て、物置小屋に仕舞う奴は仕舞って村の散歩を始めると、イリスさんが木に捕まりしゃがみ込んでいた。

 サフィロ君が今にも泣きそう。

「おかあしゃん!」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だから……」

「全然大丈夫じゃないですよ!」

 と車椅子をアイテムボックスから取り出して抱きかかえて座らせてサフィロ君を抱えてお屋敷に戻る。

「何があったのだ?」

 グレイスさんのお屋敷に戻る途中ヴェロニカさんと遭遇したので短く内容を伝えた。

「イリスさんの陣痛が始まって……」

「ふぁ⁈」

 驚いているヴェロニカさんを放置し、ルズさん達呼ばねばと思い、その前に棺桶で眠ってるグレイスさんを叩き起こした。

「な、何事です!」

「奥さん破水始まってます! サフィロ君の事はお願いします!」

 そういってサフィロ君を私、私はルズさん達産婆の元へ行ってルズさん背負って屋敷に戻り、ブラッドワインを温めたものを桶に入れて見守る。


 三時間ぐらい経過して──


 おぎゃあ、おぎゃあ!


「うん、うん。産まれたよ、元気な女の子じゃ」

 ルズさんはテキパキと処置しながら体を洗い、タオルで拭いてからイリスさんに赤ちゃんを抱かせた。


「可愛い……」

「もう入っていいよー」

 ルズさんは扉を開け、待っていた二人を入れる。


「イリス、大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫よ。前のお産と比べたら比較にならならい程楽だもの」

「そうか……」

「それよりも抱っこしてあげて、女の子よ」

「ああ」

 イリスさんはグレイスさんに赤ん坊を抱っこさせてあげた。

 グレイスさんは腫れ物を扱うかのように抱きかかえた。

「ああ、なんて可愛い子なんだ」

「ぼくにもみせておとうしゃん」

「ほら、サフィロ。お前の妹だよ」

「いもーと? さふぃろ、おにーちゃんになった?」

「そうだよ」

「……ぼく、いもうとまもれるよう、つよくなる!」

「それは頼もしいよ、サフィロ」


 ルズさん達は帰っていく。


「ところで、おとうしゃん、おかあしゃん、いもうとのなまえは?」

「どうしようか?」

「……ペルラなんてどうだろう」

「ああ、良い名前だ。そうしよう」

 ペルラ?

 真珠って意味かな。

 サフィロ君は確かサファイアだから。

「ペルラ健康に育っておくれ」


 微笑ましい家族の中に今の私はお邪魔もの、そっと退散させて貰った。



 ちなみに、イリスさんの出産がきっかけなのか分からないが、この日から二日連続で出産が続いた。

 レラさんは男子、シャルロットさんは女子の赤ん坊を産んだ。


 ミカエルさんは子どもまで恵まれると思ってなかったから嬉しい気持ちが爆発していたのが分かった。

 まぁ、愛妻家故にシャルロットさんから名前をとってシャーロットって名前にしちゃったけどね。

 そのうちのことだから私は何も言えん。



 ロッズさんはペルラちゃんを抱っこしたがったが、抱いた瞬間ギャン泣きされて、即効で取り上げられた。

 サフィロ君に「しらないおじちゃんだからこわいんだね」って言われて撃沈してた。

 最終的には「儂はこの森に住む! この森で隠居する!」と言いだし、宥めるのが大変だった。

 まだまだロッズさんの力は国でもなが知られてるので居て貰わなきゃ困るそう。

 ロッズさん哀れ。



「さて、これで吸血鬼の血を引く子が産まれるのはおしまい、後はハイエルフだけど……あと一年弱か」


 私はため息をつく。


「まぁ、なんとかなればいいな」


 そう言って立ち上がり、家へと向かった──







梢は神様の考えについてクロウに言っており、それなら子どもは産めないとまで言っています。

いくら異世界でも森の外の世界が優しい世界じゃないことは梢も重々承知です。

ディーテ神は駄々をこねていますが、他の神々に諭されて大人しくなります。

マリー事鞠子、梢の祖母も心配して出て来ています。

孫娘には幸せになって欲しいのです、祖母として。


そして今度は、吸血鬼の奥様(人間)達の出産ラッシュ。

キラキラネームとかは無い?ですがミカエルは奥さんの名前から似せた名前つけちゃってます。

それほど嬉しかったのですが、もうちょっとひねれというのが梢の思い、言わないけど。

他の家も生まれ残す出産ラッシュはハイエルフですがあと一年以上期間が空いてます。


今回も梢は色々お悩み状態、なんとかなれば良いというのは本当願望、なんとかならなさそうだから。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
そっかあとはハイエルフだけなんですね。今のところは。まぁ、一年以上の期間が空いているから、これは束の間の休憩といったところかな。一年って長いようであっという間ですしね。その間に梢ちゃんの悩みも解決して…
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