六度目の夏来たりて~成人の儀~
梢は色々な事をクロウやレイヴンを通して着々と日々お金を貯めていった。
しかし豊かになるのはいいが、何かしっくり来ず日々を過ごしているとイザベラから手紙が届く。
そしてその後、ルフェン達が16歳になった事を報告に来て更に──
異世界五年目で虫歯というものが存在しないことにびっくりする私。
しかし口臭というのはあるらしく、それを防ぐ為の「ハーブ液」という口をゆすぐ液体が販売されているそう。
ハーブ液を作るのは少々難しいらしく、高級ハーブ液の特殊な液体にハーブを溶かすことで私はハーブ液を作ることに成功した。
お陰で売り物が少し増えたのは嬉しい。
ハーブも青臭い匂いではなく、良い香りのハーブを溶かしていたからかすっきりしているそう。
私の料理のレシピ本を持ってクロウが代理でレシピ登録に行った。
そのお陰で、またお金が入ってきて困る事はない。
始祖の森で場所を登録していて、特殊な魔道具をもらった。
箱の魔導具で、レシピを使用すると、その分の使用料が箱に自動で振り込まれるという魔導具だ。
お陰で毎日小金持ち。
豊かになることはいいことだけども。
何かしっくりこないなぁ。
「コズエ様、今日のホットケーキはいかがです?」
「うん、美味しい」
メープルシロップをかけたホットケーキを食べながら頷く。
「コズエ、何かあったのか? 少し元気がないぞ」
「それは……」
上手く言語化できない。
何かしこりができている。
それを表現できない。
「上手く表現できないんだな」
「うん……」
アルトリウスさんが私の頭を撫でた。
「なら言語化できるか解消するまでじっくり待とう」
「そうですね、それがいい」
「はい、その通りです」
三人は追い詰めると言うことをしないから有り難かった。
深く聞こうとしないのも有り難い。
今の私はそれをやられたら困るからだ。
どうしていいか分からなくなって困るから。
問題は解決できないまま手紙は来た。
イザベラちゃんだ。
夏になったらマルス王太子と正妃マリア様と、側妃クレア様と遊びに始祖の森に伺うという旨が書かれていた。
いつもと同じ内容なので、楽しみにしていることを伝えて送り返した。
そうこうしてると──
『夏ですよー』
『夏ですよ!』
夏がやって来た。
そして夏の初日に、どんどんとノックする音が聞こえた。
「こ、コズエ様!」
「ルフェン君にミズリー君に、ラカン君じゃない、どうしたの? 女の子連れて」
女の子はミュリーちゃんと、リィナちゃんと、難民出身のクリューネちゃんだった。
「お、俺達16歳になったんです、大人になったんです!」
「あらおめでたい」
「私達も16歳で大人になったんです!」
「それは目出度い、確か、祝い酒を飲むんだっけ?」
「はい! それと……」
ミュリーちゃんはルフェン君の手を取り、ミズリー君はリィナちゃんの手を取り、クリューネちゃんはラカン君と手を握りあい。
「俺達! 結婚する事にしました! 双方の両親の許可も得て!」
「すっごくおめでたいじゃない! よかったわー!」
私は純粋に喜んだ。
「あの、そこでコズエ様にお願いなんですが……」
「何?」
「結婚式の準備は住んでいるので、料理の提供をお願いします!」
「料理でいいの?」
「はい!」
「ふふ、それなら手抜きはできないわね」
私の言葉に六人は嬉しそうに抱き合った。
しかし、私の知らない間にこんなに進んでいたとは、若い子って凄いな──……
「肉とかは俺達が狩って来ます!」
「ですからその料理をお願いします!」
「うん、分かったわ」
そう言われ、私はにこやかにルフェン君達を送り出した。
「コズエ様」
「何ミュリーちゃん、いやミュリーさん」
「私、ルフェン君の事ずっと好きだったんです、でもルフェン君は恩人で愛し子のコズエ様によく会いに行ってたので告白されたとき耳を疑いました」
「だろうねー、でも私随分前からルフェン君に好きな子居るのは知ってたよ」
「それが自分だなんて思いもしませんでした、私達みんな」
女の子達はうんうんと頷く。
「それとえっとお酒なんですけど」
「シードルがいい?」
「! はい! それでお願いします! ビールが初めてだと悪酔いしそうで」
「あー……」
「ジェリカさんも、初めてはシードルがいいと言ってました」
「そうね、ジュースに近い感じで飲めるもの、でも飲み過ぎには注意してね」
「はい!」
「まぁ、他の大人達はワインとかビールで大丈夫でしょう」
ミュリーちゃん達は頷いた。
「じゃあ、私は準備するね」
「お手伝いしましょうか?」
「主役がお手伝いしてどうするの。どしっと構えてて」
そう言うと三人は微笑んだ。
まだ16歳なのに大人びて見えた。
その後、狩って来たフォレストボアの肉と野菜をふんだんに使った料理を作った。
そして飾り切りしたフルーツも用意した。
村の16歳の祝いの宴が始まる。
最年長のルズさんが葉っぱで作った冠をかぶせ、女性には絵の具のようなもので顔に模様を付けて、杯にシードルを注ぎ、六人は飲みあった。
服は花で着飾った衣装と、狩りの新しい衣装という組み合わせで、式も同時に行われていた。
口づけを交わす時ちょっと心の中で「キャー!」と叫んだ。
新しい家は作らず、今ある家を拡張して住む形になったのでルフェン君達は自分の家へ、ミュリーちゃん達女子は新しい家へと帰っていった。
新しい家作ろうかといったけど、それは二十歳になってからと言われた。
大人だけど、全て一人ではまだ早いからとのこと。
それまではよりしっかり教えるとのこと。
この四年が肝心らしい。
そしてそんなこんなでやっていると、いつも通り例年通りの来客が来た。
「コズエ様!」
「イザベラ様!」
イザベラちゃんである。
もうすっかり大人の女性の仲間入りとも言える、月日は早いものだ。
「コズエ様、ルフェン達は?」
「ルフェン君達ね、あの手紙の後成人の儀と結婚式を挙げたんですよ」
「えー! 私も見たかった!」
「クロウに頼んで映像保存してるからあとで見ましょう?」
「はい、コズエ様! ところでルフェン達は?」
「今狩りの勉強中、実践で学んで一人前として認められるように頑張ってるの!」
「そうなのね、じゃあ応援しないと」
「ええ」
そんな話をしていると──
「「「コズエ様ー」」」
おっとルフェン君達の奥さん達が来たぞ。
「コズエ様、たくさん作物がとれました」
「そう、なら保管庫に入れる分と今日使う分わけて持ち帰って良いよ」
「はい! あ、イザベラ王女殿下ですね、ようこそいらっしゃいました」
「王女殿下だなんて堅苦しいわ」
「では、イザベラ様、で」
「もしかして、ルフェン達の奥さん?」
当たりだよ、イザベラちゃん凄いな。
「どうして分かったのです⁈」
「なんとなくそう思ったの、ふふ、正確には以前から遊んでいたときにちらちら貴方達をルフェン達が見ていたからよ」
「まぁ……」
なるほど。
「私とも仲良くしてくれると嬉しいわ」
「も、勿論です!」
「は、はい!」
「あ、有り難うございます」
三人とも恐縮しきってるな。
「ミュリーさん、この後の予定は?」
「義母さん達と針仕事等をする予定です」
「私も混じって良い?」
「そんな……」
「やらせないなら大丈夫でしょう、針仕事流石にイザベラちゃんにさせる訳にはいかないわ」
護衛の人に怒られそうだし。
「うん、わかったわ、会話しながらやるんでしょう。見ていたもの」
「ええ……」
イザベラちゃんはミュリーちゃん達と奥様方の集まってる場所に行った。
さて、今年の夏はどうなることやら。
ルフェン達結婚する。
異世界だからお酒のんでるけど、皆は真似しないように、お酒は二十歳になってから!
後、医者に禁酒するように言われてるならお酒を止めるように!
さて、話に戻り増すが、ルフェン達が結婚し、大人になった成人の儀を行い、梢はそれを眺めています。
ですが、この間にも梢の心のしこりといいますか、わだかまり、訳の分からないものは肥大化しています。
イザベラが来て平然としていますが、本人知らぬフリをしています。
梢の心の中にあるものを具現化するのはいつ頃なのでしょうね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。