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五度目の春~虫歯がない⁈~

五年目の春が訪れる時期に獣人達の出産ラッシュが来た。

なんとか対応できた梢だが、それで色々億劫になりアルトリウス達に休むように言われて休んで乗り越える。

もうすぐ六年目になると重い、森の外に相変わらずでる気が無い自分に首をかしげつつ、クロウ達に聞いてみるが──





『もう直ぐ春ですよー』

『まだ冬ですよー』


 そんな時期に起こった。

「アルスさんちの奥さんが破水したー!」

「うちのかかあも破水したー!」

「ルズばあさん、頼むー!」

 はい、獣人族の出産ラッシュです。

 私も手伝って回り、疲れました。

 五年目の春がやってくる時期にこんなに出産ラッシュが来るとは。

 まだ雪も溶けきってないし、ルズさん以外の助産婦さんがいてくれて助かったが、それでも私はつかれた。


 そしてまた色々と億劫になった。

 すると、アルトリウスさん達は休むようにいい、仕事なんかも手伝ってくれた。

 そのお陰で私は救われた。


 そして春が訪れた。


「もう少しで六年目かぁ」

 私はぼやく。

 この世界に来て六年になるのだが、相変わらず詳しくない。

 というか知りたい気持ちがない。

 きっと私はこのまま始祖の森をろくに出ずに暮らし続けるんだろうなと思う。

 それでいいかなって私は思っている、でもアルトリウスさん達やクロウはどう思ってるんだろう?



「森から出る気? 無論ないが」

「私もありませんねぇ」

「私達はコズエ様と共にありますから」

 と、三人とも出る気は無し。


「出る事はたまにはあるが、普段はここからでんぞ。お前も出ようと思うな。外は危害を加える輩が多いからな」

 クロウからはこんな事を言われた。

 まぁ、私吸血鬼だしね。

「ところで、調子はどうだ」

「うん、アルトリウスさん達が気遣ってくれるから結構安定してる」

「ならいい。そうだ何か食い物を寄越せ、甘い物がいい」

「えっとパンケーキでいい?」

「なんでもいい、甘いのを寄越せ」


 カチン


 そんなに甘い物が欲しいならくれてやる。

 クラフト小屋に入り、ケーキ作りをする。

 できあがったのはシュトレン。

 甘くてカロリーが高いケーキ。


「はい、これ」

「うむ、甘い、甘いな。これは良い」

「……虫歯とかならないの?」

「虫歯? なんだそれは?」

 私は虫歯について説明する。

「そんな歯の病なんぞこの世界には無いぞ」

「え?」

 マジで、虫歯ないの?

「親知らずとかかみ合わせ悪いとか、歯の矯正とか」

「聞いた事がない」

「……」

 なんだよ、道理で虫歯になりそうなこのドラゴン虫歯にならねぇわけだ。

「今の話は他の連中にはするなよ」

「う、うん」

 そうだよね、異世界からきたってボロが出たら困る。


 虫歯ないのか……でもじゃあ何で歯を磨くって文化があるんだ?

 うがいは風邪とかあるから分かるけど……


「じゃあ、なんで歯を磨くの」

「口臭」

「あ」

 そうだそうだ、食べかすとか溜まったら口臭すごい事になるし、加齢と共に口臭も凄い事になるじゃん。

「ハーブ液で口をゆすぐというので口臭を防ぐのが貴族のたしなみだ」

「ハーブ液?」

「口に入れる香水みたいなもんだ、ただ匂いはハーブの香りだから違うがな」

「へー……ハーブ液ってどうやって作るの?」

「クラフトで調べろ」

「ケチ」

 面倒になったなこのドラゴン。


 仕方ないのでクラフト小屋でハーブ液の作り方を。

 ハーブと特殊な水を使うのか、特殊な水……薬草だけを溶かす水……


『水水、それなら僕達だ!』

『任せて任せて、良い物作ろう!』


 と言われたので、その特殊な水を貰い、育てていたハーブ。

 ラベンダーやカモミールと言った種類のハーブを溶かしてハーブ液を量産する。


「……作ったのはいいけどこれどうしよう」


 取りあえずアルトリウスさん達や村の皆には配った。

 だがかなりまだ余っている、なのでレイヴンさんのところに持って行く。

 レイヴンさんのところには持って行ってなかったから、行商関係だし。


「コズエ様、どうなさいました?」

「ハーブ液作ったんだけど、量が……」

「ちょっと失礼」

 妊娠中の奥さんと会話しながら鑑定してるっぽい。

「コズエ様、宜しければこのハーブ液、売りに出してもいいですか?」

「いいですよー」

「有り難うございます、ならば準備をしておきます」

「貴方、無理はしないでね」

「分かっている」

「お父様無理しないで」

「父さん無理しないで」

 御子様達も奥さんも心配しているけど、レイヴンさんは大丈夫そう。

 まぁ、今は行商時白亜を護衛に付けてるしね。





 そんなこんなで村の目玉商品がまた増えました。

 どんどん増えてるな──

 マヨネーズ、味噌、醤油、チョコレート、蜂蜜、メープルシロップ、お酒、作物類、それからハーブ液etc……

 うん、増える事は悪い事じゃないな。


 レイヴンさんも懐が豊かになって嬉しそうだし。



「コズエ、何か楽しそうだな」

「アルトリウスさん。いや、また村がお金に困らない物ができたから……」

「そうか、くれぐれもレシピは内密にな」

「分かってる」

「それはそうと、あのハーブ液。素晴らしいな香りも良いし歯を磨いた後に使うとより爽やかな気分になれる」

「そう? なら良かった」

「高級なハーブ液はとある地方のハーブや薬草のみを溶かす湧き水で作られるが、ここにはそんな水はないしな……」

 アルトリウスさんが考え込む。

 すみません、妖精と精霊に頼んでその水出して溶かして作りました。

「……まぁ、君の場合は詮索しないほうがいいだろう、だが無理はだめだ」

「はい」

 そう言ってアルトリウスさんはその場から立ち去った。

 言えない私でごめんなさい。






「村がどんどん豊かになっていますね」

「そうだな」

「料理のレシピが欲しいと言ってくる貴族の方々もいらっしゃいます」

 クロウはレイヴンと話して居た。

「レシピは必要とあらば我が代理で登録しに行くぞ」

「本当ですか、助かります」

「そうすればレシピ使用料が入ってくるだろう」

「ええ」

 クロウは自分で作ったオムライスを食べる。

「うん、美味い」

「梢様の手順を覚えているのですか?」

「レシピ本を彼奴は作っている。それの通りやればできる、我もたまに料理はする」

「なるほど」

「いつも梢に飯をたかっていると彼奴らの邪魔になるからな」

「はぁ……」

 クロウはオムライスを食べ終わると皿を片付ける。

「それと、魔導具も売れるだろうしな」

「ええ、魔導冷却装置や、魔導攪拌機など……コズエ様のアイディアを形にしたものが売れますね」

「だろうな。だが梢を金を産む鶏扱いはするなよ」

「分かっています、コズエ様は愛し子です、不利益が被らないようにしましょう」

「その通りだ」

 皿を洗うとクロウは皿を仕舞った。

「さて、これからどうするか──」

 村の経営についてレイヴンと話合いが始まった──






クロウやアルトリウス達は森から出る気がないです。

そして、梢も出る気はないし、クロウにも出ないように言われています。


で、クロウにカチンと来て作ったシュトレン

でこの世界に虫歯などがないことを知らされます。

あっても口臭。

梢の異世界ショック久々。

今まで歯磨き等を普通にしていた分ショックがでかいですが、それよりもどうやって口臭を防ぐかが気になり、ハーブ液をクラフトで妖精と精霊の水を貰って作ります。

これも、梢だからできたことです。


クロウが言うように梢はある意味金の卵ですが、そういう扱いをしないようにレイヴンに言っています。

梢は大事な神々の愛し子ですから。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
虫歯のない世界なんて最高じゃないですか!!by子どもの時に虫歯になったけど乳歯でちょうどよかったので抜いてもらい、歯磨きの仕方みっちり教えられたおかげで今のところ虫歯のない人より。なお、虫歯は確かにな…
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