シルヴィーナの家の双子
その日、梢は織姫の小屋でぼーっとしていた。
そこへシルヴィーナが駆け込んできて獣人の奥方がそろって破水し始めたと言う。
慌てながらも手伝う梢とシルヴィーナ。
そして手伝い終わった後、梢がシルヴィーナに──
その日、私は織姫の小屋でぼーっとしていた。
「織姫ーなんか駄目な奴でごめんねー。今日は調子悪いの……」
クロウの発言からちょっとメンタルが落ち着かない日々が続いていた。
織姫は頭を振り、手で私の頭を撫でた。
「有り難うねぇ」
「コズエ様!」
シルヴィーナが駆け込んできた。
「うわ⁈ シルヴィーナ⁈ 安静にしてなきゃ駄目じゃん! というかお子さんは⁈」
驚く私にシルヴィーナは言った。
「こんな忙しい時に休んでられませんのでレームに任せてます!」
「い、忙しい⁈」
「獣人の奥様方がそろって破水し始めたとのことで!」
「ヴァー⁈」
奇声を上げて飛び上がる。
「織姫ちょっと行ってくる!」
私は織姫にそう言ってシルヴィーナの後を追った。
まぁできる事って行ってもお湯を沸かす程度だけど。
取りあえず、一番最初に産気づいた方から順番に出産していったので、移動しつつ励ましつつ大変だったがなんとかなった。
「コズエ様、我ら獣人の出産に立ち会って下さり有り難うございます」
アルスさんはそう言って頭を下げた。
アルスさんも奥さんが出産して大変だったろうに。
というかそのうち家を出ることを考えるともうちょっと開拓進めるべきか?
今回は地区関係なく。
それはそうとして。
「シルヴィーナ、急いで戻りなさい」
「え、ですが……」
「今赤ちゃんに手がかかるいっちゃん大変な時期っぽいと予測! レームさんだけの手じゃ余る! だから急いで戻って赤ちゃんのお世話を! レームさんから疲れてるだろうから休みなと言われてるんだったら休みなさい!」
「た、確かにコズエ様への用事が終わったら休むように言われてますけど」
「じゃあ休む! 家においでお茶入れてあげるから!」
と私はシルヴィーナを引きずって家へと戻った。
「や、休んでいいのでしょうか?」
「休んでいいの、レームさんが言ったんでしょう?」
「ええ……」
しかし、シルヴィーナはそわそわしている。
「そう言えば私が用意した赤ちゃんが着る服とかどうだった?」
「はい! シルフィもレイもむずがらず着てくれます」
「それは良かった織姫に頼んだ甲斐があった」
「シルクスパイダーですよね、いつの間に?」
「少し前に……大体半年くらい前かな」
その時神様へのお得元いお供え物くれたらサービスする奴やらなかったら今の出産ラッシュはなかったんだけど。
ホットミルクを出し、飲みながら思う。
「その時避妊薬を使ってなかったそうなんですよ、皆さん。そしたらあっさり妊娠して」
「へ?」
神様の啓示とかあったと思ったけどどうやら違うようだった。
ただ普通に夫婦の営みをしていて、妊娠したと。
神様……妊娠するようにしたな?
ちょっと神様に文句を言いたくなった。
「シルヴィーナ夫婦生活大変じゃない?」
「いいえ、子どもはぐずるとよく聞きますが、シルフィとレイは何故かそれが無くてぐずるときはオムツを替えて欲しい時かお腹が減った時なんですよ。あ、ここに来る前におっぱいを上げてきましたから大丈夫ですよ」
「う、うーん」
子育てってイメージ的には大変な感じだけど、シルヴィーナとレームさんの子は育てやすい子なのかな。
「ところで乳母とか居ないんでしょう? おっぱい出ない時はどうするの」
「ここには銀牛様がいらっしゃいます。その乳が代わりになります」
「へぇ」
ヤギとかのミルクじゃなくて銀牛のミルクか。
うーん、舌が肥えるんじゃないかな?
と明後日な方向で不安になっていた。
「ですので、ミルクを貰っても宜しいですか?」
「うん、いいよ」
私は魔導冷却庫に入れたシロガネのミルクを取り出す。
「そろそろ家に帰ろうと思ってたんでしょう、私が持って行くよ」
「コズエ様の手を煩わせるのは……」
「いいの、これ位させて」
「では……」
コートを羽織って外に出る。
ミルクが入った容器を持つ。
「じゃあ、安全にね」
「はい」
足元に気をつけて、シルヴィーナの家に向かう。
そしてシルヴィーナの家に着くと迎え入れてくれた。
「レーム帰って来たわよ」
「シルヴィーナ? もう少し休んでて良かったのに」
「そろそろシルフィとレイがおっぱい欲しがってぐずる時間でしょう?」
「ああ、そうだね」
感覚的に把握してるのか、すげぇ。
「一応銀牛のミルク持ってきました、シルヴィーナさんがおっぱい上げられないとき是非」
「コズエ様、ありがとうございます」
「では、私は失礼しますね」
「あ、レイとシルフィを是非抱っこしてあげて下さい」
「え、でも」
「コズエ様なら大丈夫ですよ」
「う、うーん」
促されるままシルヴィーナの子を二人抱っこする。
軽いけどずっっしりと命の重さを感じた。
「あーうー」
「だうー」
赤ちゃんが私の長くなった髪をしゃぶる。
「こらこら、ばっちいからやめようねー」
「こ、こら! レイ、シルフィ! コズエ様の髪は食べ物じゃないのよ!」
その通りです。
私の髪の毛は食べ物じゃありません。
と言っても赤ちゃんには通じるはずもない。
もっしゃもっしゃしてる。
よだれまみれだとちょっとアレだから後で髪の毛は洗おう。
そんな事を考えていると、シルヴィーナが双子ちゃんを私の手から自分の腕の中に移動させた。
レームさんも同様。
すると赤子の大合唱、大泣き。
「ふぎゃああああ‼」
「ふぎゃああああああ‼」
正直に言おう、罪悪感が湧くから勘弁してくれ。
「もう、シルフィもレイもどうしたの!」
「いつもは大人しいのに……」
「どうした、通りかがったら赤子の泣き声が聞こえたから勝手に入ったが」
クロウがやって来た。
「ああ、クロウ様。我が子達をコズエ様に抱っこさせたらコズエ様の髪の毛を口に含んだので、コズエ様に失礼と思いコズエ様と離したら急に泣き出して……今までこんなに大声で泣くことなんて無かったのに」
「ああ、コズエから離されたのが原因だな」
「え?」
「どゆこと?」
私は首をかしげる。
「シルヴィーナも分かっておらんと言うことは今の長老達も知らないか、前の長老が二度と愛し子が産まれないと思って教えなかったかだな」
「えーと、どゆこと」
一人自己完結しようとしているクロウに問いかける。
「ああ、ハイエルフや、エルダードワーフなどの上位種族の赤子は愛し子の魔力に反応し、それが一番溜め込まれている場所を口に含むことで落ち着くという要素がある」
「じゃあ、私の魔力髪の毛に溜め込まれてるの?」
「そうなるな、それとわずかに魔力のおこぼれを貰って後々愛し子を守るための強い存在となる」
「なるほど──」
と言うかエルダードワーフっていうドワーフの上位互換が居たのか、びくーりした。
まぁ、来ることはないだろうけど……
「で、ではどうやって泣き止ませればいいのです?」
「コズエ、赤ん坊を泣き止ませ方は分かるか」
「え、えっと……」
私は購入していたおしゃぶりを取りだし、双子に加えさせた。
ちゅぱちゅぱ
「な、泣き止んだ……」
「まぁ簡単に言えば愛し子の手から何か渡せば泣き止む」
「……これ当分私は赤ん坊系統は抱っこしないほうがいいよね」
「そうか?」
「だって、赤ん坊抱っこする度に髪の毛しゃぶるんだもん、赤ちゃんが。不衛生」
「む、そうか」
「取りあえず、洗ってくるわ」
私はシルヴィーナに「子育て頑張って」と告げてその場を後にした。
家に帰り、髪の毛を洗い、風呂に入ると、いつもより早いから聞かれたので正直に話すと。
「それは……赤子を抱きかかえるのに戸惑うな」
とアルトリウスさんが言った。
うちの家族、全員髪の毛長いもんね、ティリオさんも、アインさんも、アルトリウスさんも、私も。
私は切るのが面倒になっただけだけども。
……髪の毛切ろうかな?
前回の話の件でメンタル弱々になってた梢。
しかし獣人の奥様達が破水したとシルヴィーナに聞かされては、ぼーっとしてられず手伝いに行きます。
ちなみにシルヴィーナは織姫の所にいるということしか知らなかったので、梢がメンタル弱々になってたのに気付いてません珍しく。
まぁ、神様の加護で妊娠みんなしちゃったから文句も言いたくなりますね。
そしてシルヴィーナ結構頑張っているので梢が無理矢理休ませます。
その後双子のところに行きますが実はクロウの言うような作用があります。
ので、双子ちゃんは魔力をちゃっかり貰ってます。
後、梢が上げたおしゃぶりのお陰で加護も貰ってます、気付いて居るのはクロウだけ。
そして、薄々気付いて居たかもしれませんが梢とアルトリウス達は髪の毛が長いです。
梢は切るのを面倒くさがって長く伸びました。
他三人は理由があったりしますが、今回は明かされません。
次回辺り梢が髪の毛切って明かされるかもしれませんね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。




