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一つ解決すればまた一つ~五度目の冬の始まり~

冬になり、色々と考え込む梢。

妊娠することになった時にヴェロニカ達の方法で速攻で動けるようになろうとか考えていると──





『冬ですよー』

『雪ですよー』


 始祖の森中に雪が降る。

 冬がやって来た。


 今回も豪雪な予感。

「今年も雪かきは大変だよ」

 ざくざくと降り積もっていく中、雪かきをしながらため息をつく。

「ですが、この雪のお陰で森が潤うのですよね」

「そうなんだよね」

 ティリオさんの言葉に私は返す。

「まぁ、普通の積雪で十分なんですけどクロウ曰く」

「そうですね」

 苦笑するティリオさん。

「そう言えば名前も決まったようですね」

「ヴェロニカさんのところはミリーナちゃん、アシュトンさんところはカイル君、レイドさんのところはロイド君だったよね」

「はい、その通りです」

「ヴェロニカさん達吸血鬼で奥様勢は全員ブラッドワインがぶ飲みで治癒力高めてすぐに運動とかできるようになっていたよね」

「アレは吸血鬼種の血を引く方しかできない芸当でしょう」

「……」

「コズエ様、もし妊娠して出産してもコズエ様にはきっちり休んで貰いますからね」

「バレてる⁈」

 指摘されて私は驚く。

「何でバレてないと思ったんですか……」

 あきれ顔のティリオさん。

「どうしたんです?」

「どうしたティリオ」

「アイン様にアルトリウスさん。コズエ様が吸血機種の奥様方がブラッドワインで休息回復して元気に動けるようになったのを聞いて、自分が妊娠出産した場合も同じことをしようと考えていたので釘を刺してたのですよ」

「コズエ……」

「コズエ……本当に仕事中毒だな」

「だ、だって子育てするにも畑を見るのも大変じゃない? だから早く回復したいなーって……」

「早く回復するのは良いことですが、それで重労働するには許容できないのですよ!」

「子育ても、畑も大変なのだぞ。コズエは大人しく休んでろ」

「う゛ー……」


 前の世界で某漫画家さんが超人的だったんだけどなぁ……


 しかし、話はそんな話はこの世界では通じない。

「分かった、無理はしないよ」

「無理しない、ではない。休め」

「えー……」


 仕方ないので周囲に助けを求めたところ満場一致で──


「コズエ様が妊娠出産された時はゆっくり休むべきだ」


 と言われた。

 味方がいない。

 クロウも同意見だったし。





「お前は吸血鬼だからヴェロニカ達のような回復方法はできるだろう」

「なら──」

「だが、それはそれ、これはこれだ」

「う゛ー……」

「お前に何かあったら真っ先に動くのはあの三人なのだぞ」

「……」

 確かに私に何かあったらアルトリウスさん達が黙ってない。

「三人から叱られたくないなら妊娠出産した時は大人しくしておけ」

「うん……」

「まぁ当分先だろうがな」

「そりゃあね」

 だって、まだ親になる覚悟とか全然ないもの。

「んー」

「それにあと一ヶ月前後で獣人達が出産ラッシュに入るだろう」

「げ」

 考えないようにしてたのに。

 いや、喜ばしいんだけどね、獣人の家族は四家族だから若干吸血鬼が奥様方より多いのよ!

 それとまだ不明の善狐勢も四人家族分だから出産ラッシュが続いてるんじゃ無いかと不安で仕方ないのよ。

 この前聞き忘れた時に神様に聞いたら──


『忘れ取った善狐は大体七ヶ月じゃ』


 と一ヶ月遅れ、獣人の。

 うがー!

 村人増えるのは構わんが産婆が足りん!


 と思いながらルズさんの家を訪れると若い女性が三人程いた。

「コズエ様、新しい定住者の方々から産婆の手伝いをしていた女性達が出て来てねぇ」

「本当ですか⁈」

 これはラッキー!

「ノルンです」

「ノーラです」

「ミーニャです」

「もしかしてご兄弟か親類ですか?」

「はい、代々子を取り上げる家の出で、私が年長者です。だた産婆をやっていた母と祖母は……亡くなりました」

「Oh……それは」

「この森にいればもう、デミトリアス聖王国に侵略されることはないですか⁈」

「えっと……」

 ノルンさんの質問につまる。

 侵略はないけど、連中森に入ろうとしてくるしなぁ、と。

「それは事実だ、奴らはこの森に入れぬ。その上我が入る」

「クロウ……」

 クロウが入って来た。

「エンシェントドラゴン様……」

「この森に入ることは連中には敵わぬ、安心せよ」

「そうじゃよ、エンシェントドラゴン様の仰る通り、ここは安全だからねぇ」

「まぁ、その代わり、ドミナス王国と交流、魔族の国との交易などはあるがな」

「それは村の為なのでしょう?」

「まぁな」

「なら問題ありません」

 ノルンさん達は心底安心した顔をした。





 そんなこんなで、産婆元い助産婦の数の確保ができた。

 私は手伝いに回るだけでいい。

 そう思うと気が楽になった。

 そんな事を考えながら村を歩いていると、一二三ちゃんが一人たたずんでいた。

 傘も差さずに。


「一二三ちゃん?」

「あ……梢様」

 私は慌てて軒下に一二三ちゃんを誘導する。

「どうしたの? 考え事?」

「はい……お母様が生きていたら、私にも妹か弟ができていたのかな、と」

「……そっか」

 一二三ちゃんのお母さんは亡くなってるんだもんね。

 一二三ちゃんからしたら一人っ子強制だし、かといって奈緒さんに再婚しろなんて言えないし。

「梢様、もし、梢様が出産して子を産んだらお世話をする事を許してくれますか?」

「それは……」

「分かってます、これは私の身勝手な願望だと」


「お守りをするならちょうどいいだろう」


 クロウが口を出してきた。


「だが、姉代わりになろうなどと考えるな」

「はい」

「あくまでお守り役だ、お前は誰かの姉を演じるのは許さぬ」

「ちょっとクロウ!」

「良いのです、梢様。そうでなければ私の我が儘で貴方を傷つけてしまう」

「一二三ちゃん……」

 一二三ちゃんは笑顔でいった。

 痛々しく見えた。

「梢様、クロウ様、お話を聞いて下さり有り難うございます」

 そう言って頭を下げていった。


「ちょっとクロウ、言い方ってもんがあるでしょう!」

 私はクロウに噛みつく。

「でなければ一二三は母親という立場さえお前から取り上げかねん危うさがあった」

「え?」

 一二三ちゃんが?

「一二三はおそらくお前が思うよりもずっと母性等が強い、だから早く母親になりたいという思いがある、姉になりたいという欲求もある」

「……」

「いずれ、一二三も母親になる、その時一二三が真っ当であるかどうかの瀬戸際だ今が。釘を刺す必要がある」

「でも……」

「碌でもない母親ならともかくここの森の母親達は真っ当な親だ、それから子を奪うなど愚策。碌でもない母親ならともかくだがな、お前が」

「そうならない為に覚悟を持とうとしてるの!」

「知っている」

 この野郎は。

「だから、お前は真っ当な親になる覚悟をしっかりとさせろ、一二三の事は我と奈緒に任せろ」

「うん……」


 色々あるけど、取りあえず、私は私の事を考えよう。

 まだ自分の事すらままならないんだから。







梢が色々と言われたり、求められましたね。

まず、妊娠したら大人しくしていろと旦那だけでなく全員に言われました。

多分、無理だろうと思います、梢ですから。

そして獣人の出産ラッシュが目の前、その次には善狐達の出産ラッシュがと続いているのパンクしそうですが、助産婦もとい産婆的役割ができる女性が三名増えたので梢も安心。

そして一二三、自立しようを思うあまり母親になって子を育てないとという強迫観念にかられています、まだ若いのに。

それに釘を刺すクロウ、まだ子どもでいい、誰かの役割を取るべきでは無いと言うことを諭しています、これでも。

ただ、梢はまだ妊娠する勇気がないので、子どもはまだ先になりそうです。

梢の言う通り、梢は自分のこともままならない状態になっていることがしばしばです。

どう改善していくのでしょうか。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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雪かきか…。雪国育ちで、重たい雪をせっせとかき続けて手首痛めたのいい思い出です。(ちなみに治ったけどその後たまにポキっと音を鳴らさないと手首に違和感があります)そして、学んだことはゆっくりでいいから少…
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