吸血鬼な奥様達の出産ラッシュ
シルヴィーナの出産が終わったが、梢はやることが多いと気を引き締める。
その際、自分だけでは手が足りないと把握しており、男性陣の力を借りることに罪悪感を感じていると──
さて、シルヴィーナが出産を終えたが、まだまだ安静にするべき人達は沢山いる。
安静にして出産を終えても、子育てという義務が発生する。
しばらくは孤児院の子ども達と難民の方々に頑張ってもらうか。
まぁ、難民の方々でも動けない方達は居るが、色んな意味で。
あーこれだから戦争とか紛争は嫌なんだ。
侵略行為とか。
イブリス聖王国とデミトリアス聖王国の合併国なんでまだ滅びてないらしいし、ロガリア帝国の残党はいるらしいし。
さっさとどっちも滅んでよ!
と、心の中で愚痴るが連中はゴキブリよりタチが悪いのは知っている。
取りあえず、畑仕事、もっと頑張ろう。
交易は……仕方ないがレーヴさんにまかせ行商はレイヴンさんに任せよう。
男性達に外に出て貰うのは良心が痛むがどうすればいいか分からない。
「それなら我がレイヴンなどの行商を乗せ、各地を回って行けば良かろう」
「それはいいけど、その間の森の守りは誰やる? 私?」
「レームとアルトリウス達がやるそうだ。お前はやらなくていい」
「え、でももしもの事があったら……」
「悪意のある者は森に弾かれる、入れもしないだろう」
「あ」
そうだ、森には許可なく入れないんだ。
「火も付かんしな、木々には」
「へー……」
「お前が薪にしないと火が付かんからな」
「なるほど」
「と言う訳で明日日中は我はレイヴン達を連れて出掛ける」
「うん」
「一応心配だからフェンリル達にも森の守りをさせるように言っておく」
「そう」
そういや、フェンリル達は妊娠してなかったな何でだろう。
「フェンリルは番いが妊娠すると狩り以外では側を離れようとしないし、主であるお前と我の以外の命令を聞かないだろう、ちょっと困りものだから神は妊娠の祝福を与えなかったのだろう」
「はぁ」
「まぁ、それでもそのうち妊娠するだろうさ」
「うん」
そうだね、その時は労ってあげなきゃ。
そんなこんなを繰り返していたら──
『もう直ぐ冬ですよー』
『まだ秋ですよー』
こんな時期になった。
「随分前から冬支度はしてたけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だろう、倉庫は満杯、お前のアイテムボックスにも入っている」
「まぁ、ね」
クロウに言われるとそれもそうだと納得する。
そして日が沈む。
「コズエ様!」
「ど、どうしたんですかアレックスさん⁈」
まさか、ヴェロニカさんが──
「妻が破水しました! ルズさんにもお願いしましたが、愛し子様、お助けを!」
「ええええ‼」
早すぎない⁈
マジで‼
私は大慌てでアルマ家の屋敷に向かう。
「お父様、お母様苦しそう!」
「父上、母上の出産で手伝える事は?」
「ブラッドフルーツの絞り汁を暖めた物で体を拭うのだけども……」
「それ、ブラッドワインで代用可能ですか?」
アレックスさんの言葉に私は質問を投げかける。
「え、ええ、代用可能ですが……」
つーか吸血鬼ってお湯じゃないのね、産湯ならぬ初ブラッドワイン風呂だね!
私は桶の中にブラッドワインをドボドボと入れて魔法で温度を上げる。
シルヴィーナの時も実はこれで産湯湧かしたから要領は得ているんだよね。
「こ、此処の高級な、ぶ、ブラッドワインをそんな風に使うなんてヴェロニカが知ったらひっくり返りますよ!」
「大丈夫、ブラッドワインなら山ができるほど作ってあるから!」
「いえ、そう言う訳ではなくて……」
「今から絞り汁作るよりもてっとり早いのでお気になさらず」
と気にしないように言う言葉を言ってヴェロニカさんの部屋に入る。
「お父様、私たち何もできないの?」
ミラがアレックスに問いかける。
「ああ、母さんが無事出産するのを祈ることしかできないんだよ。それに出産は神聖なものだから産婆と女性以外は入れないんだ」
「じゃあ、私、お母様の側にいる!」
ミラがヴェロニカが出産している部屋に入る。
「私達男は入れないんですね」
「そうだね……」
フレアは悲しげに父であるアレックスに言い、アレックスも悲しそうに答えた。
私が部屋に入って一時間後──
「ようし生まれたよ」
ふぎゃあふぎゃあ!
「ああ、出産は何度やってもキツい、だが今回は早くかなり楽終わったよ……」
「そうなんですか?」
私は赤ちゃんをブラッドワイン風呂で洗いながらルズさんと色々やっていると、ミラちゃんが──
「お父様、お兄様! 無事に出産終わったの!」
と扉を開けて言うと二人が駆け込んできた。
私はタオルで赤ちゃんを拭うと、新しい産衣で赤ちゃんを包んでヴェロニカさんを抱っこさせる。
「女の子でしたよ」
私は微笑む。
「アレックス、無事に産まれたよ」
そう言って赤ん坊を見せるヴェロニカさん。
これで一息つけるかなーと思った矢先──
「愛し子様、産婆殿! 妻が産気づきまして!」
ファー⁈
アシュトンさんが入って来た。
同時に、
「愛し子様、産婆殿! 我が妻フロウが破水してしまいー!」
ウワァー⁈
ダブルはキツいぞ、どうするルズさん!
「先にフロウ様のところに行きます、愛し子様は赤ちゃんを清めるブラッドワインのお湯を作ってヴァンダーデ家のお屋敷で待機をしていてくださいな」
ルズさんは冷静にそう言ったので私はまずはエフォドス家のところで清めるワインのお湯を作って、ヴァンダーデ家に向かった。
取りあえず、今日は三人の子どもが時間差があれど一気に生まれたので非常に疲れた日だった。
「疲れた──」
ヴェロニカさんところは女の子、アシュトンさんところは男の子、レイドさんところは男の子。
「皆ブラッドワインでお湯作ったの聞いたらひっくり返りそうになってたな……」
だって代用可能だって聞いたもん。
ブラッドワインはブラッドフルーツの果汁を搾り濃縮したものだからお酒じゃ無いのは分かっている。
でも、ブラッドワインの値段を知ってる皆さんからするとひっくり返りそうな事態だったらしい。
私はブラッドフルーツを囓る。
「うん、美味い」
疲れが少し取れた。
「コズエ、お疲れ様」
「アルトリウスさん、有り難う」
「コズエ様、クッキーと紅茶をどうぞ」
「ありがとうティリオさん」
「コズエ、無理はしてませんか?」
「ううん」
アインさんの言葉に首を振る。
無理というか頑張ったのはお母さん達、奥様方だ。
「妊娠の長さだと次は獣人の奥様方のラッシュかぁ」
私はぼやく。
「ルズさんはコズエ様のお陰で冷静に対処できたと言ってましたよ」
「それは何より」
まだまだやることは沢山あるけど──
もうじき、冬が訪れる──
吸血鬼な奥様達の出産ラッシュです。
吸血鬼の血を引く赤ん坊はお湯ではなく、ブラッドフルーツの絞り汁を産湯にするのですが、梢は代価可能と言うことでブラッドワインを躊躇うこと無く使いました。
なので、後で知った吸血鬼の皆さんはひっくり返りそうになっています。
またデミトリアス聖王国とかの話がちょこっと出ますが、梢は滅んで欲しいけど、関わるのは嫌というスタンスです。
梢吸血鬼だけど愛し子だから色々と振り回されるの確定しちゃいますからね、それが嫌なんです。
クロウも、神の罰が与えられていると言うことで積極的には動きませんが行動が悪化したら即動きます。
他にも色々情報がでてますが、クロウは色々と想定&神託を授かったりしているので。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。