デミトリアス教と加護の証
とある日、梢はシルヴィーナに叩き起こされる。
緊急事態といわれ内容がデミトリアス教の司教達が森の入り口を占拠しているというもの。
このままで放置すれば明日くるであろう行商が入って来られないかも知れないと。
梢は事態打破の為にクロウ達と森の入り口に向かう──
始祖の森には吸血鬼が住んでいる。
その吸血鬼は始祖の森を開拓し、獣人や少数人間とドワーフ達を従え暮らしている。
神聖な森で、あろうことか吸血鬼が暮らしている。
森を切り開いて。
真実を、確かめよ。
「コズエ様、コズエ様」
「んあー?」
夕方棺桶を叩く音に目を覚ます私。
棺桶の蓋を明ければシルヴィーナがそこに居た。
「緊急事態です」
「なぁに?」
「デミトリアス教の司教達が入り口を塞いでます。このまま放置すれば明日辺りに着く行商が入ってこられません」
「それは困る」
「向こうは長である吸血鬼を出せと言ってきてます」
「んー仕方ない、シルヴィーナ一緒に──」
「我も同伴しよう」
「クロウおじ……クロウさん」
人間の姿のクロウが部屋に入って来た。
取りあえず、清楚な服に着替え、入り口へ向かう。
「最終手段もあるしな」
「最終手段?」
何のこっちゃいと思いつつ、私は三人で森の入り口へ向かう。
夕方で、少し眩しいが平気だった。
入り口に付くと、灯りを持った人間達と、聖職者らしき人が三名。
ふてぶてしそうな奴と、ガチガチになってる人と、柔和そうな顔の人。
「この森に住まい森を切り開いているのは貴様か⁈」
初対面の人に貴様かはねーだろ。
失礼なやっちゃなぁ。
私はそれ相応の態度を取りたくなった。
が、
「愛し子様になんて口の利き方! これだから宗教にどっぷり浸かった人間は‼」
シルヴィーナが激怒。
「な、何だと、エルフの分際……」
『やっちゃえ!』
『愛し子様になんて口の利き方!』
「ぎゃああああ‼」
雷が落ちて黒焦げになった。
私は額を抑える。
「妖精さん、精霊さん。お願いだから怒ってそう言う行動すぐ取らないで。話が進まないから」
『でもー』
『でもー』
「お願いだから」
『うん、分かったー』
『分かったよー』
妖精達はわらわらと黒焦げ聖職者から離れていく。
「ふぅ、やれやれ。妖精さんと精霊さんの説得も大変だ」
髪の毛を弄りながら言う。
「私共の同胞が失礼を……申し訳ございません。我我はデミトリアス教の者です」
「あっ、ハイ」
穏やかそうな人が口を開いた。
「おたずねしたいのですが、貴方は吸血鬼で間違いないですね?」
「そうだぞ、ほれこの牙を見よ」
クロウがぐいと口を引っ張る。
「いひゃいいひゃい」
「確かに牙がありますね……」
口が解放される。
「もう少しは加減してよ、クロウ」
「この土地を開墾する許可を神から貰って居ると聞きました、宜しければその証明かなにかをできますか」
「ここで樹を切ればいいっすか」
「いや、それよりも……」
クロウがジーッとワンピースの背中のチャックを下ろした。
「はぁ⁈」
そしてぺたりと紙をつけると、紙を剥がした。
その紙を見せると、聖職者達が声を上げる。
「主神デミトリアス、闇の神ネロ、太陽神イブリス、この三人の加護とこの土地を開拓する許可の証を複写紙で複写したものだ! 持って行け!」
クロウはそう言ってシルヴィーナさんに紙を渡すと、シルヴィーナさんは用紙を先ほどの聖職者さんに渡した。
「間違いないです……! では、これを持ち帰り王都で話しましょう、行きますよ皆さん」
そう言って集団は去って行った。
「何、背中に何か書いてあるの⁈」
私はジタバタもがく。
クロウはチャックを上げた。
「加護の紋様が入っている、それとこのような時の為に文字が浮かび上がるようになっているとのことだ。紙に複写する場合は鏡文字、直接見る場合はそのままの文字が」
「へーってそういうの一言説明くれない⁈」
「いや、神々が伝えてる物だと思ってな」
「神様ー!」
私が絶叫すると、スマホが鳴った。
「はい!」
少し怒り気味に出る。
『すまん、言うの忘れて折った、エンシェントドラゴンには伝えておったからすっかり忘れておった』
「次は忘れないでくださいね」
『分かっている』
通話を切るとはぁと息を吐く。
「神様ってたまに抜けてるよね」
再度ため息をし、家に戻る。
家に戻るとブーンと蜂が飛んできた。
「あら?」
『みつみついっぱい、わけてあげるー』
「もう一杯なの⁈」
と声を上げ、瓶を何個か購入し、アイテムボックスに詰めて持って行く。
連れて行かれた蜂の巣は大きくて凄かった
『ここをこうきってこうとってほしいのー』
「はいはい」
言われた通りに蜂蜜を貰う。
色んな巣箱を回り、蜂蜜を確保する。
クラフトのメーカーで蜂蜜と蜜蝋に別れた。
有り難い。
「また、たくさん貯めたらくれると嬉しいな。お花植えるから」
『もちろんなのー』
その言葉に、私は蜂の巣の近くに購入した花々を植えていった。
薔薇や、桜、菊、ラベンダーなどのハーブも植えた。
「よし、これくらいにしとこう」
そう言って家に戻ると子ども達が居た。
「ルフェン君、ミズリー君、ラカン君に、フィネちゃんにルカちゃん、どうしたの? もう遅いよ?」
「これ……」
子ども達は果物を籠一杯になったのを何個も持ってきていた。
「わぁ、たくさん。そんなに取ったの? 私一人じゃ食べれないから食べて良いのに」
「僕達も貰いました、どれも凄く美味しくて……」
「ふふ、有り難うルフェン君」
「ルフェンだけずるいー!」
「ぼくもー!」
「あたちもー!」
「あたちも……」
わらわらと寄ってきた。
「よしよし、いい子いい子」
子ども等の頭を優しく撫でる。
「えへへ、コズエ様ってあったかい」
「ん? そう?」
「うん、あったかくって優しい」
「うん!」
「そうそう!」
「それは嬉しいけど、あんまり遅くなるとお母さん達が心配するから戻りなさい」
「「「「「「「はーい」」」」」」」
子ども等は仲良く手を繋いで帰って行った。
「……あ、蜂蜜分けてあげれば良かった」
今更後悔。
「ま、良いか。明日村に行って子ども達にあげれば」
私はそう決めてお風呂に入り、着替えて棺桶に入り横になる。
──あーそう言えば、明日行商くるっていってたなぁ──
そんな事を思い出しながら私は眠りに落ちていった──
背中に加護を示すものが描かれるという事実にびっくりする梢。
多分神様は、見えない所で、それでいて緊急時見せても大丈夫な所として背中を選んだのでしょう。
梢としては不本意な形ですが。
村では蜂蜜を収穫したり、果物を収穫したものを貰ったりとほのぼのした時間を過ごす梢。
ほのぼのこそが、彼女が望んでいるものですが、いつもそうである可能性は低いでしょう。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。