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難民達~クロウの思い~

梢が眠っている間に村に難民を連れて来たクロウ。

移動の疲れが無い彼らに住まいを提供した後に、村の仕事を手伝う用に言う。

村の仕事をする難民達。


目覚めた梢はそれを知ってクロウに不服を申し立てるが──





「こんな物でいいかな」

 流石に夜遅く建築する訳にもいかなかったので次の夕方から作り始めて夜になりかけた頃家達と教会ができあがった。

 この教会にも孤児院を併設している。

「あー疲れた、畑の整備とか終わったら寝よう」

 私はその場を後にし、畑へ向かい、整備などを終えると自宅に帰って棺桶に入って眠った。





 昼頃、クロウはフィヨルド王国の難民達を背中に乗せて森へと訪れた。

 全員が梢に危害を加えない存在であると確認した上で。


「こ、此処が始祖の森……」

「世界樹ユグドラシルがあんなに大きく……」

「愛し子様にお会いできるのは夕方以降なのだろう、それまでどなたが代理で?」


 難民達は周囲を見渡しながら喋っている。

 其処へレイヴンがやって来た。

「初めまして、村のまとめ役代理のレイヴンと申します」

「何かあったら此奴か我に聞くといいで、難民代表は?」

「私です、ニコラウスと申します」

「ニコラウスさんですか、事前に言ってますがこの始祖の森では吸血鬼が住まい、魔族と交易もしております、くれぐれも問題を起こさないように」

「分かっております」

「では」

 クロウとレイヴンは難民達を案内した。


「看板が立てられていないのが空き家です、そこに自由にお住みください」

「感謝いたします」

「それと、デミトリアス神の教会の近くにディーテ神の教会と孤児院を用意している、孤児とシスター、司祭はそちらに住んでください」

「感謝いたします」

 女性の司祭と、シスターは頭を下げた。

 孤児らしい子ども達は孤児院へと駆け込んでいく。


「お部屋いっぱい!」

「ぼくここ!」

「わたしここ!」


「愛し子様がお目覚めには……」

「今叩き起こすと寝ぼけてまともな会話が成り立たんから夕方を待て」

「はい」

「食料に関してはこちらにあるものを自由に使って構いません」

 と保管庫を案内すると難民達は声を上げる。

「こ、こんな巨大な野菜、見たことがありません!」

「ははは、愛し子様がお作りになるとこうなるんですよ。愛し子様が一番首をかしげていますがね」

 レイヴンは嘘を言っていない。


 梢は未だ何故ここまで野菜が肥大化するのか納得できないようだった。


 難民達は各々の住処を見つけて此処に棲むと決めると、クロウは梢から預かっていた看板を立てた。


「早速だが、お前達に仕事だ」

 とクロウが言うと緊張が走る。

「向こうの畑の巨大作物を収穫してこい、無理そうなのは我がやる」

「「「え?」」」

 そこへルフェンがやって来た。

「タダで食料もらうなんて甘い考えは駄目だぜー、俺が教えてやるから畑仕事ができる女子どもは畑仕事についてきてくれ。男は狩りについて行って欲しい。あともし産婆がいるならレイヴン兄ちゃんからルズさんの居場所を聞いて村の事情を把握して欲しい。今村はコズエ様と老人以外の既婚女性は皆妊娠してるからな!」

 戸惑う難民だったが、ニコラウスが声を出す。

「聞いたな! 女子どもは畑仕事を、ただし赤ん坊を取り上げた経験のある者は産婆のところに行くように! 男は狩りだ、皆狩りの道具は持ってきているな⁈」

 男達は声を上げる。

 その時アルスがやって来た。

「父上!」

「この子の、ルフェンの父です。狩りについてきてくれる方は私達に着いてきてください、狩りにはフェンリル様が同行してくれます」

 フェンリルの白亜がやって来た。

『同行する、村の為に大物を狙うぞ』

 再びどよめくが、ニコラウスが静かにさせる。


 そして男、女子どもなどで別れ畑を移動していった──





「ふぁああ……おあよ」

「コズエ、起きたか?」

 棺桶をノックしたのはアルトリウスさんだった。

「難民の人達は?」

「全員村に入って初日から仕事だ」

「え⁈ 初日くらい休んでもよかったのに⁈」

 なんで⁈

「馬車移動ではなくクロウ様の背中に全員乗せての移動だ、体力消費はほとんど無いから仕事をさせるとクロウ様の方針だ。それは向こうにも伝えたそうだ」

「う、うーん」

 なんか納得がうまくできない。


 (ここ)に馴染んでから色々とやって欲しかったのが本音。

 馴染んでないのに仕事とかちょっと大変すぎるんじゃないかな……


「取りあえず、畑に行ってみよう!」

「その前に行くところがある」

「え、何処?」

 首をかしげると、アルトリウスさんはこう言った。

「クロウ様のお屋敷だ」



 アルトリウスさんとともにクロウの屋敷に向かう。

 向かう途中見慣れない人達がこちらを見ていたので軽く会釈をした。

「クロウ様、コズエを連れてきました」

「入れ」

 ガチャリと扉を開けて入ると、40歳位の男性がいた。

「難民のまとめ役のニコラウスだ」

「初めましてニコラウスです、愛し子様」

「どうも、初めまして。御坂梢です。梢と呼んでください」

「コズエ様、ですか」

「コズエは神々の愛し子だが、村の政治的な部分には関わらせていない。村で重要な事態が発生したらまずは我に報告しろ」

「畏まりました、クロウ様」

 複雑だがその通り。

 私村の交易とかその他諸々には関わってないんだよねぇ。

 関わってるのはお酒造りだったり作物作りだったりだ。

「しかし、村長はコズエ様なのでしょう?」

「まぁ、そうだな。最終的に決めるのは梢である事も多いが、そうでないこともある。我が決めたりすることもある」

「今回の件もね。私は本来少し休んでから村の仕事を手伝って欲しかったのに、クロウったら村に来て早々仕事させるんだもの」

「仕方なかろう、今村は人手が足りないのだからな」

「はいはい、それはそれ、これはこれ!」

 と、私はクロウを叱る。

 クロウは不服そうだ。

「何だお前の為を思っての行動なのだぞ」

「それは理解できる、でも難民なのよ? 戦争で行き場を無くした人達なのよ? かなり気を遣わないといけないはずでしょう?」

「ふむ、一理ある。だが、戦争での事を忘れるには働く事だろう、日常を新しく取り戻すことだろう」

「それはあるけど……」

 確かにそれもある。


「コズエ様、レストリア様がいらっしゃいました!」


 レーヴさんが入って来た。

「は、はーい。クロウ言いたいことはまだあるからね!」

 そう言ってレーヴさんのところに行く。


「愛し子様、お久しぶりです」

 レストリアさんがそう言って頭を下げる。

「お久しぶりです、リアさんは?」

「妊娠しまして……」

「わぁ! おめでたいじゃないですか!」

「有り難うございます」

 そう言えば妊娠薬を貰って居たもんね。

 ちゃんと妊娠できて良かった。


「そう言えば、村の老人と愛し子様以外の既婚女性が皆妊娠したらしいと聞きましたが……後、難民を受け入れたと」

「ああ、はい両方とも事実です」

「子宝に恵まれるのは良いことですが、こう人数が多いと村の仕事が滞るのではないですか?」

「今は、なんとかなってます。それが怖いんですよね」

「人手足りないとなったら私共にお任せ下さい」

「有り難うございます、レストリアさん」

 私はレストリアと握手をした。





「──で、愛し子を直に見てどう思った」

 梢が居なくなったクロウの屋敷で、クロウはニコラウスに尋ねる。

「正直、愛し子様なのかと目を疑いかけましたが、周囲に居る精霊と妖精の数に愛し子だと理解しました」

「ほほう、お前は妖精と精霊が見えるのか」

「だからこその難民達のまとめ役です」

「なるほど……」

「愛し子様はここから出ないのですか?」

「めったなことでは出ないぞ、というか我がそれを許さん」

「え?」

「吸血鬼であるというだけで忌避する輩は多い、我は二度も愛し子を失う気はない」

「……」

 クロウの言葉は事実だった。

 神々の愛し子を二度も悲劇的な出来事で失う事をクロウ自身が許さなかった。







難民達にすぐ仕事をさせるクロウ、普段の状況というか戦争から戻るには手っ取り早い荒治療を行いました。

が、それに不服を申し立てる梢、少し落ち着いてから村の仕事を手伝うなりして欲しかったようです。

形は違えど、梢もクロウも難民の事を思っています。

そしてレストリアは妻のリアが妊娠、そして村に何かあったら手伝うと申し出をしてくれました。


梢を見て難民代表のニコラウスは驚いているようですが、梢が神々の愛し子であることに納得した様子。

で、クロウはそんなニコラウスに、二度も悲劇的な形で神々の愛し子を失わせる気はないと言い切ってます。

一度目は勿論マリー元い梢の祖母鞠子の事です。

クロウは大事な愛し子である、梢の為なら何でもするでしょうね、孫のような存在の梢を悲劇的な形で失いたくないから。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
クロウおじいちゃんのトラウマから梢ちゃんにすごく過保護ですね。まぁ、愛し子でありさらに吸血鬼となるとその気持ちはわかります。私は帝国の人たちをどうにかしてからだから当分先で、更に外の状況を見てから外に…
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