神様からのサービス(という名の祝福)と村の事情と梢の㊙事情
神々にお供えをした翌日、村中の花は咲き誇り、作物はたわわに実っていた、いつも以上に。
クロウ曰く、村だけのことで、今年も来年も豊作になると告げられる。
色々やっていると神様から連絡があり「この程度」と言われ、何が起きるんだと梢が戦々恐々していると──
翌日アルトリウスさんに棺桶をたたかれて起きる。
「コズエ起きろ」
「うー……なんですかー……?」
「外を見てくれ」
「外?」
私はカーテンを開けて外を見る。
「なんじゃこりゃー⁈」
村中の植物が咲き誇って、作物はいつも以上に実っている。
「こ、これもしかして此処だけ?」
「クロウ様曰く、そうらしいです」
「はぁー⁈」
神様お得ってこれ⁈
やりすぎじゃない?
「クロウ様が、来年の作物もより豊作になるだろうと……」
神様何やってるの?
「……保管庫増設するか……」
「それが良いだろうな」
私はのろのろとリビングに向かい、食堂でおにぎりをたべて、味噌汁を飲んだ。
塩むすびが私の好物なのを知ってくれているのか塩むすびだった。
本当は海苔もあれば完璧だが、贅沢は言わない。
味噌汁は善狐さん指導の結果中には油揚げと豆腐が入っている。
善狐の方々の定番の味噌汁らしい、さすが狐、というべきか。
豚汁用の味噌は私が大豆から作っていた。
麹菌?
だっけか、味噌玉作りから色々一人でやっていた。
醤油も作っていた、こちらはクラフトで。
ちなみに、味噌を造ってるので納豆は作らない、味噌とかの菌が死滅しちゃう。
そして保管庫へ向かい、クラフト画面を開く。
クラフト画面を探していると「NEW‼」のマークがついているのが見つかった。
よく見るとそれは「保管庫EX」と書かれていた。
ちょっと待って保管庫が規格外ってなんだよ。
「……やってみるか」
選択しクラフトモードへ。
少しだけ大きくなった保管庫、中を見るとかなり広くなり、保管できる作物の量が前の何倍もありそうな感じだった、しかも地下もあり、こちらは空洞ただ魔法がかけられているのは一緒で食べ物の保管に困る事はなさそうだった。
他の保管庫も同じように改良する。
「あー疲れた!」
今日収穫した作物等を皆に運んで貰う。
それでも、まだまだ余裕がある位だ。
「あのお供えでこのお得ならちょうど良いか」
と呟くとスマホが鳴ったので慌てて自宅の自室に戻る。
「もしもし梢です!」
『おー梢か、お前さんこの程度の事でお得、とか思ってるじゃろ?』
「え、違うんですか?」
『まだまだあるぞい! 楽しみに待つといい! ほっほっほ!』
なんのことだろうと神様のすることって結構厄い事もありうるし戦々恐々する。
『安心するんじゃ、儂等はお前さんのいた世界の某神話の神様のような事はせんからのう』
「は、はは……」
余計怖い。
今更ながら、この世界の季節は体感的にだいたい四ヶ月ずつ変化する。
春、夏、秋、冬。
そして今は秋。
実りの秋、食欲の秋、そして──
予想外に繁殖の秋が追加された。
普通繁殖は春か夏じゃない?
よく分からないけど。
村のママさん達や奥さん達が誤差あれど妊娠してしまったのだ。
この時期、一斉に。
もしやと思い電話すると──
『将来的に住人はもっと必要じゃろ?』
との事である、頼むから時期をもっとずらしてください、神様。
こんなに時期が同じだと子どもが生まれる時期も同じっぽくなるじゃないですか。
『大丈夫じゃよ、獣人達は半年位で出産、人間は十月十日前後、ハイエルフは二年前後、吸血鬼やダンピールは……どうじゃろな、母体の健康次第で変わるからその二つは分からん』
「結構問題じゃないですか‼」
神様のお得と私のお得には天と地の差がある!
困ったものだ本当に。
余分に改築して良かったと心から思った。
「そう言えばさぁ」
「どうした梢?」
「一応ここ、ブリークヒルト王国の領地内なんだよね?」
「ああ、そうだが」
「納税とかやらなくていいの」
「言い忘れてたが納税関係の事は我とシルヴィーナ、レイヴンが担当しているし、作物を税として納税している」
「知らんかった」
「まぁ、たいした量でもないし言う必要は無かったからな」
「たいした量?」
「ドミナス王国だ、あそこは最大の作物の買い取り手だ」
「ほほー……」
「交易のお陰で村では中々手に入りにくい塩も手に入るからな」
「たまーに岩塩とかそういうの発見できるけど、定期的に塩が手に入るのは有り難いよ」
「お陰で塩漬けなどもできるしな」
「うんうん」
最初の頃はシルヴィーナがレイヴンさんとやりとりしていた塩を貰って居たのだ、実は。
そこから交易でレイヴンさんから塩を購入するようになった。
まぁ五年目で今更再確認するのも野暮な気がする。
ただ、もうちょっと私は税務署管理とか気にした方がいいかなぁと思った、が──
「梢、お前は農作業の事だけ考えていろ、税や国との面倒なやりとりは我らに任せろ」
「え、でも」
「お前が見たら脳みそがごちゃごちゃになるやりとりだ、大人しく村と農作業だけに専念していろ」
「へーい……」
そう言ってクロウに追い出される。
「うーん」
収穫も整備も終わったし何やろう?
「あ、織姫」
織姫の事を思い出し小屋を見ると、アルトリウスさんがキャベツを与えていた。
「コズエか」
「織姫にご飯上げてくれたの? ありがとう」
「オリヒメと言うのか? このシルクスパイダーは」
「そう」
「オリヒメ……姫には見えないが」
アルトリウスさんがそう呟くと織姫が両手を挙げて抗議をした。
「失礼だって」
「すまない」
織姫寛容なのか、右手を振って気にすんなと言いたげな態度になる。
「気にするな、で合ってる?」
織姫はこくこくと頷いた。
「だってさ」
「感謝しよう」
「あのー織姫、お願いがあるんだけど……」
私は耳らしき部分にこしょこしょと声を出した。
「人目につかない時に下着作ってほしいの……そろそろ新しいの欲しくて」
織姫はこくこくと頷いた。
実は下着は自室に部屋干しして見せないようにしているので、他の人のような下着を持って居ない。
下着を作ったが、なんかいまいち。
神様も女性用下着のクラフトを乗せるのはちょっと躊躇われたんじゃないかなぁ。
織姫は話を聞いた後、アルトリウスさんを追い出すように手で小屋から押し出した。
「……では私は村を回ってくる」
アルトリウスさんは抵抗する様子を見せず出て行った。
織姫が服を引っ張るので、私は今日身につけてなかったブラジャーとショーツを見せる。
「こう言うのだけど作れる?」
ブラジャーはノンワイヤで可愛くて着心地の良い下着だ。
こちらの世界に来た時付けていた下着でもある。
織姫はショーツは見て何か理解したらしく直ぐ返してくれた、ブラジャーは触ったり色々していた。
ひとしきり触ってから私に返してくれた。
「色は紺とか青にしてくれると嬉しいな」
そういうと頷いてくれた。
「じゃあ、お願いね」
私は小屋を後にした。
翌日、小屋を私一人で訪れると黒い布に包まれてブラジャーとショーツのセット、青と紺色のが織姫から渡された。
自室で試着すると圧迫感などもなく、体にフィットしていた。
私自分のスリーサイズ言ってないんだけど、もしかして渡した下着から逆算した?
織姫……凄い子だわ。
ちなみに、運悪くノックせずに入って来たクロウに下着姿を見られた。
「ノックぐらいしてちょうだい!」
顔面を思い切り殴ったが、私は悪くない。
そのことをレイヴンさんに愚痴ったクロウは、レイヴンさんから説教されたらしい、珍しいこともあるもんだ。
神様に振り回される梢。
神様の加護で作物が豊作になるのはいいですが、梢以外の既婚者(妊娠しているシルヴィーナ除く)勢の奥様が全員妊娠するという珍事が発生、しかも同じ時期に一斉に。
これも神様の仕業です。
梢が頭を悩ませるのも仕方ないです。
そしてシルクスパイダーの織姫に下着を作って貰いました。
クラフトで作るのもいいのですが、ちょっと梢も面倒らしく織姫に作って貰いサイズもぴったりで驚いていました、織姫は凄い。
そしてクロウ、ノックせず入った時下着一丁だった梢に殴られますが仕方ないですね。
そりゃあレイヴンさんも説教します、諭すのではなく説教。
ここまで読んでくださり有り難うございました!
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。