イザベラとの別れ~秋の訪れとシルクスパイダー~
イザベラ達が国へ戻り、秋の気配がする始祖の森。
そこで久々に梢はスマホの売買の家畜の部分を見る。
すると、シルクスパイダーという蜘蛛の家畜がいて、どんな物かクロウに尋ねに行く──
『もうすぐ秋ですよー』
『まだ夏ですよー』
季節の精霊と妖精達が飛び交う。
別れの時期。
王国へと戻るとき、イザベラちゃんが私のところへやって来た。
「コズエ様、来年も、私達が来れる間は来て良いですか?」
「勿論ですよイザベラ様」
「コズエ様大好き!」
イザベラちゃんは抱きついてくれた。
「イザベラ様、私も大好きですよ!」
「私がお祖母ちゃんになった時、この森に永住して良いですか?」
「い、イザベラ⁈」
ロラン王子が驚いている。
「もうやることがなかったら私の好きにして良いってロラン様言ったでしょう? 二人でこの森で暮らすの!」
「それは……その……」
イザベラちゃんの上目遣いが発動。
「駄目?」
「~~! 母上と父上を説得してみせよう!」
ノックアウトだね、ロラン王子。
「コズエ様!」
嬉しそうに私にまた抱きついてくる。
「イザベラ様、その日を私はお待ちしております」
「はい、私も!」
何十年も先の話だが、イザベラ様がここに来た時、穏やかに暮らせるようにしたいと私は思った。
イザベラ様達が帰還、白亜を護衛に付けといういつも通りの流れを経て、そして秋が訪れた。
「やれやれ、冬支度も平行してやらないといけないのが大変ね」
久しぶりに自室でスマホの売買アプリを開く。
購入に何か新しいものが出ていないかだ。
「あ、家畜に……蜘蛛? シルクスパイダー?」
よく分からないのでクロウの家に向かう。
「ねぇクロウ、シルクスパイダーって何?」
「文字通り、その糸は絹よりも美しい布ができる蜘蛛の事だ、基本草食性だ。それがどうかしたのか」
「神様からもらった奴の販売所の欄に追加されてるから買おうかなって、交易品も増やせるだろうし」
「それはいい、シルクスパイダーは飼い慣らせば自ら服を作ってくれるぞ」
「え⁈ そんなに賢いの⁈」
「まぁ、ここで飼い慣らす事はたやすいだろうがな」
「どうして?」
「シルクスパイダーは賢い故に相手を見定める、善性の強いものにはシルクスパイダーは心を開くが、敵対者には容赦なく牙をむきその肉を食い尽くす」
「Oh」
「だが、人前に率先して出る気質ではないので見つけるのが困難な生き物だ、飼えるなら飼ってみればいい」
「うん、分かった」
クロウの家を出て、新たに小屋を建ててシルクスパイダーを購入した。
大きな真っ白な蜘蛛だが、黒い縞模様が入っていた。
それにしてもでかいな、赤い目がつぶらで可愛いけど。
「コズエ、クロウ様から聞いたが何を家畜に……シルクスパイダー⁈」
「あ、アルトリウスさん。うん、そう」
驚くアルトリウスさんをちょっと放置して、シルクスパイダーに近づく。
「ごきげんよう」
シルクスパイダーも頭を下げる。
「今日からお願いねシルクスパイダー……じゃ味気ないから名前は織姫でいいかな?」
シルクスパイダーは右脚を上げて目を輝かせた、嬉しそう。
私は頭らしき箇所を撫でる。
「織姫、お願いね」
織姫は頷いた。
「おお、シルクスパイダーを飼ったのか」
「うん」
「で、何を頼む?」
「え?」
「もうそのシルクスパイダーは色んなものを作れるぞ」
「本当⁈ 織姫⁈」
織姫は右手を挙げて目を輝かせた。
「じゃ、じゃあ赤ちゃんの為のお洋服とか一式お願いできるかなぁ」
そう言うと細い糸をお尻から出し、無数の手を使い一瞬で作り上げていった。
「わ、わぁ」
そう言うしかなかった。
赤ん坊が着用する為に必要な服などが真っ白な糸で作られていた。
ボタン無しでも着れる用に設計されている。
「さ、流石に今これ持って行ったらシルヴィーナのプレッシャーになるよね、うん」
「かもしれんな」
「よ、よし、じゃあ仕舞おう」
私はアイテムボックスに仕舞う、後で色染めしておこうと決めて。
その後で特大サイズのキャベツを織姫の目の前に置いた。
織姫は目を輝かせる。
「食べて良いよ」
というとむしゃむしゃと食べ始めた。
クロウの言った通り草食系の子だなやっぱり。
「この子自分の糸だけで服を作るの?」
「いや? ボタンや毛皮、羽毛や装飾用の糸や糸染めの染料なんかがあればそれを使うぞ」
「じゃあ、此処の小屋は織姫専用に作り直さなきゃね」
と思い、クラフト画面を開く。
すると「シルクスパイダー専用小屋」の文字があり私は外に出て、クラフトを実行。
外は変わらず、だが中は様々なボタンや毛皮、糸染めの染料などが置かれていた。
「凄い」
「これで、服も色々と充実しそうだな」
「そうだね」
私の作る手間が減りそう。
まぁ、趣味で作る分だからいいか、こっちは必要に応じてだから。
「コズエ様」
「アルスさん、どうしたんですか?」
「その、シルクスパイダーを家畜として飼い始めたと……」
「家畜って言い方好きじゃ無いけど、まぁそうみたい」
「あの、宜しけれ子ども達へ服を作っていただきたいのですが」
「どんな服?」
という話をしていると、ママさん達がやって来て色々と言い出した。
私は慌てて、メモを取り出し、ガリガリと書く。
ママさん達が居なくなるとため息をついて小屋に戻る。
キャベツを食べきった織姫が居た。
「えっとね織姫」
「シルクスパイダー明日からの仕事だ」
私が言う前に、私からメモを全て取り上げたクロウが織姫の前にメモを置いた。
「この内容に書かれている物を作れ、良いな」
織姫はメモをパラパラとめくってから頷いた。
「え、織姫文字読めるの」
「読めるぞ、こちらの言葉も分かるしな」
「すごい、織姫ってすごいのね!」
織姫は照れくさそうに頭を掻いた。
器用だな、本当。
私はその場を後にして、家に戻り、またスマホを見る。
するとお供えの欄に「今お供えしたらお得な事が起きちゃいます! お酒、おつまみ希望!」と書かれていた。
そういや全然お供えしてなかったなと思い、かなり久しぶりにお酒とおつまみを沢山用意し、お供えモードで撮る。
すると、お酒とおつまみは消えていた。
「こんなんでいいのかな?」
とか悩んで居るとスマホが鳴った。
「わわわ!」
慌ててスマホに出る。
「も、もしもし⁈」
『いや~催促したみたいですまんのぉ、ひっく』
既に酔っ払っているらしき神様の声が聞こえた。
「よ、酔ってますね」
『はぁ~い、梢ちゃん、お酒ありがとう』
「でぃ、ディーテ様、今晩は、いえ、その」
『私のお得な事は、シルヴィーナの出産が無事に終わる事とぉ、貴方の妊娠時と出産がとても楽な物になるようにしてあげるぅ』
「え、えっとあ、有り難うございます!」
こ、子ども産む予定まだ無いんですが!
『いいのよぉ、そのうち機会はくるからぁ……ってちょっとぉ、スマホ奪わないでよ!』
神界でもスマホで会話してるのか神様達。
『まったく、ディーテがすまんのぉ……ひっく。とにかく、色々なお得が起きるだろうから楽しみにしておれ、ひっく。ではの』
そう言って通話は終わった。
「な、何だったんだ? いや、何が起きるんだ?」
私は混乱するだけだった。
イザベラ達が国に戻り、またいつも通りの日常、秋の日々が始まろうとした頃。
梢はスマホの家畜の販売項目でシルクスパイダーという蜘蛛がきになり、クロウと相談した末購入しました。
シルクスパイダーは梢の目から見ると結構可愛く見えるらしく、織姫と名付けられました。
他の方からすると、ちょっと扱いが大変な対象、と見られてますが。
クロウは例外。
より豊かになっていく村。
そしてお供え物。
酔っ払った神々がすることって……一体なんでしょうね?
ギリシャ神話では神様がする事はロクなことがないとかありますが、こちらはどうなんでしょう?
ここまで読んでくださり有り難うございました!
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。