休みの一日とブレスレット
梢が目を覚ますと外は真っ暗になっていた。
慌てる梢に、アルトリウス達は「今日は働かなくてよい」「クロウ様から働かせるなと言われている」と言われた梢はどうしようかと悩み──
「う゛ー……」
けだるさを抱えて目を覚ます。
棺桶を開けて外を見ると真っ暗になっていた。
「やっべ! 畑仕事とか急いでやんなきゃ!」
私は慌てて着替えて、顔を洗って髪をとかして、ブラッドフルーツを囓って外に出ようとすると、アルトリウスさん達が私をがしっとつかみ家に引きずり混んだ。
「コズエ、今日は休め」
「そうですよ、これはクロウ様からのお達しでもあります」
「コズエ様がやることは全て私達で終わらせましたから大丈夫ですよ、種まきも整備も皆で協力して完了致しましたし」
「え、じゃあ私今日やることない?」
「ない」
「ありませんね」
「ないですよ」
椅子に座らせられる。
「だから今日はゆっくりしてください」
「うん」
仕方ないのでしゃくしゃくとブラッドフルーツを囓った。
あっという間に無くなる。
「お腹空いた」
「夕食はできていますよ」
「本当?」
「ええ」
そう言って出されたのは暖かなパンに、クリームシチュー、スクランブルエッグ、ベーコンを焼いたものだった。
味わいながら食べるが、あっという間にこれも無くなってしまう。
きゅうぅぅぅ
なぜだかお腹が減って減って仕方が無い、前回はそんな事なかったのに。
苗から一気にユグドラシルレベルの巨大な世界樹にした所為か?
つまり魔力が足りていない?
私は立ち上がりユグドラシルがある場所に猛ダッシュした。
止められたが、多分これが一番手っ取り早い。
『どうしたのです梢』
「葉っぱと花下さい!」
『ええ、頂上に登ってください』
私は慣れた様子で頂上に登り葉っぱと花を貰う。
そして果樹園に向かい、リラリスの実とマナの実を十個ほど収穫。
クラフト小屋に行き、調合する。
毒々しいあの液体ができた。
私は一気に飲み干した。
味は前回焦っていたから分からなかったが、割といける。
するとお腹の空腹具合も落ち着いた。
「ああ、良かった」
あのままだと食料庫を漁るレベルだったと思う。
体のだるさもなくなってる。
「良し……って畑仕事とか全部片付けられてるんだった、何しよう」
することが思いつかない。
なのでアルトリウスさん達と村の散策に。
建てて以来寄ってなかった教会に寄ってみる。
ピアノ置かれ、礼拝用の椅子が並んでいる。
ピアノに触ってみる。
「いとしごさま、ぴあのひけるの?」
「少しだけね」
「おにいちゃんたちにきいたんだけどまえはしすたーってひとがひいてくれてたみたいだよ」
「へぇ……」
子どもから街で暮らしていた頃の情報を得る。
「おや、コズエ様、どうしましたか」
「このピアノ、誰も弾けないんですか?」
ミカヤさんがやって来た。
「ええ、せっかく作っておいて貰ったのですが、誰も弾けず」
「……」
脳内に楽譜が現れる。
私はそれを試しにその通りに弾いてみることにした。
「おお、よく歌っていた賛美歌の音です」
ミカヤさんがそう言うと、子ども達が集まってきた。
私はもう一度最初から弾く。
子ども達が歌い出した。
愛らしい声の合唱に私の頬が緩む。
♪……
「久しぶりにピアノの音楽で歌えたよ!」
「有り難う愛し子様」
「愛し子様、お願いです、ピアノ教えてください」
「僕にも!」
「私にも!」
「え、えっと……」
「それなら私が致します」
ティリオが言った。
「え、ティリオピアノ弾けるの?」
「はい、それと今の曲も弾けます」
「……」
何で弾こうとしなかったのか、と聞きたかったが後にしておいた。
「じゃあ、今度からティリオさんに聞いてね皆」
「「「はーい!」」」
「ごめんねティリオさん、お仕事増やしちゃって」
「これ位どうということありません」
ティリオさんは微笑んでくれた。
さて、またやることが無くなった。
どうするべきか。
やっぱり居住区全てを回って話を聞こうということになり、ティリオさんだけ教会に残って貰い、私達は居住区を回ることに。
少し問題が出ていた。
吸血鬼の方の区域以外は子どもが増えたのでも手狭になっていた。
だから急遽住居の改築を行った。
クラフト能力を使えば、ものを置きっぱで改築できた。
シルヴィーナはお腹がとても大きくなっていた、双子だからかな。
無事生まれてくれると嬉しい。
蛇足的だが、木材とかがかなり減ったが。
吸血鬼の方々は吸血鬼の方々は料理の幅を増やしたい、確認をしたいという要望があった。
なので私の脳内にあるレシピを全部書き出してレシピ本にして渡した。
本をまるごとコピーする魔法があるらしいので、クロウにコピーを頼み、コピーを吸血鬼の方々に渡した。
原本は私がアイテムボックスに責任を持って保管。
他には──まぁ、色々あったけど種族間の問題は起きていなかった。
忌避するとかそういうのもないし、差別もないし、下にみるというのもない。
皆平等に暮らしている。
お屋敷に暮らしてる組でもそうじゃない方々からは文句はない。
そういう場所で暮らしてたから、終わる。
クロウに至っては「クロウ様だから」という事で納得。
各住居を巡って疲れた私は家に戻り風呂に入って体の疲れをとる。
歯磨きして着替えて早めに寝る子とにした。
「じゃあ、今日は早いけど寝るね」
「ええ、お休みなさいコズエ」
「コズエ、お休み」
頬にキスをされたので、同じように頬にキスをしてから私は棺桶に入って眠りについた。
翌日は夕方に起きる事ができた。
「んー」
すっきりした気分で起きられたので、夕食を食べて、顔を洗って歯磨きして着替えて、ゆっくりと畑仕事に精を出す。
イザベラちゃん達が帰るまでもう少し。
もうじき、秋がやってくる。
実りと収穫の秋が。
ついでに食欲の秋が。
どうか、イザベラちゃんが幸せに過ごせますように。
私はそう祈ると、アイテムボックスからブレスレットを取り出した。
その足でイザベラちゃんのところへ向かう。
「コズエ様、どうしたのですか?」
「イザベラ様、これを。お守りとして肌身離さず付けておいてください」
「綺麗なブレスレット! いいのですか?」
「はい」
「有り難うコズエ様!」
「それと、これをロラン様も、同じように肌身離さず付けておいてくださいと」
「ええ、ええ、分かったわ」
イザベラちゃんはロラン王子のところに行き、ブレスレットを付けていた。
私の加護が本当ならば──
きっとあのブレスレットが二人を守ってくれるだろう。
そう願った。
前回、魔力消費で疲れていた梢は、食事だけでは魔力消費を補えなかったのでマナの実などを使ったあの液体を飲みます、クロウが以前眠り続けていた時のあれです。
それで完全復活し、村を歩き回ります。
そしてそろそろイザベラが帰ることに気付きブレスレットをお守り代わりに二人に渡します。
梢が二人の幸せを願ってのものです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。