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カインド帝国の負の遺産と世界樹

無事にロランとイザベラの婚約をそのままにできた事に安堵する梢。

一方、不機嫌になっているクロウが気になり、その理由を聞きに行くと、カインド帝国が関わっており──





 森へ帰る最中、いつもなら何か喋るクロウは無言だった。

 そして始祖の森に入ると、直ぐに私達を降ろし自分の家に帰ってしまった。


「何があったんですか?」

「それはクロウ様が直に愛し子様に話されよう」

 マリア様に尋ねるとそう返された。

 はて、何があったのか。

 そんな事を考えながらマリア様は来賓の館へ、私は自分の畑へ向かった。



 五日近く経過してクロウとマリア様に手紙が届いた。

 内容を見て安堵するマリア様とは対照的に、忌々しいものを見る目でクロウは手紙を見てどこかへ行ってしまった。


「マリア様にはどんな手紙が?」

「ああ、婚約は継続という内容とイザベラを不安にさせてしまった謝罪の手紙だな」

「なるほど」


 窓の外を見れば仲睦まじく手を繋いで散歩をしているイザベラちゃんとロラン王子が見えた。

 二人が引き裂かれなくて良かった。


「クロウのはどんな内容だったんだろう」

「それは本人に聞くのがよいだろう」

「はぁ……」

 そう言われてもあの調子じゃ喋ってくれるか分からないですよ。

 内心ため息をつく。



 畑仕事に戻り、整備などをしているとクロウが来た。

「梢、話がある。我の家に来い」

「う、うん」

 明らかにいつもと違う調子で、私に声をかけて来た。


「クロウどうしたの?」

「取りあえず、座れ」

「うん」

 椅子に腰をかけ、同じく座っているクロウを見る。

 手を組み私を見ている。

「あの女と男の血族はカインド帝国の貴族の末裔だった」

「え?」

「どうやら平民として入って来て、そこから貴族から奪ってきたとして持ってきた自分の財などで貴族になり、血を繋げていた」

「母方は?」

「無関係だった、その所為か母親と産まれたばかりの末の子だけは妖精にも精霊にも神にも呪われてなかった、純粋に娘が聖女の力に目覚めたと思っていたらしい」

「あー……」

 なんとも言えない。

「その結果離縁し、まだ呪われていない末子と共に実家に戻ったらしい」

「他の子とかは呪われたの?」

「ああ、腕輪の事を知っていたからな」

「Oh……」

「連中は貴族の位を剥奪され、鉱山労働の奴隷になった」

 鉱山労働ってかなり危険だよね、だからそこで労働させるのか。

「他に腕輪関係が無いか調査が入り、あった為我が全て破壊した。カインド帝国の忌まわしき魔導器など全て壊したつもりだったが、ぬかった」

「どうしてすぐ私に教えなかったの?」

「あの娘と父親連中はそのうち娘が真の愛し子だと風潮し、お前に危害を加えさせるつもりだったのが発覚した」

「わぁ」

 何でそんな馬鹿な事考えるんだろう。

「カインド帝国の復興が連中の目的だと分かった。その為にムーラン王国の王妃になろうとしたのも」

「馬鹿じゃん」

「ああ、そうだ、馬鹿だな」

 思わず本音が出たが、クロウも同意してくれた。

「親戚連中もカインド帝国の血筋じゃないか調査が入り、カインド帝国の貴族の血筋だと分かると爵位を剥奪されるようだ」

「ああ……」

「それほどカインド帝国の連中は愚かな事をしてきた。その貴族血が流れていると知れ渡ればまともに暮らせない程な」

「……」

 前の愛し子(お祖母ちゃん)を処刑しようとしただけじゃない気がしてきた。

「どんなことを?」

「瘴気の種を作り、それを他国に植え付け、その国を瘴気だらけにして病などを流行らせる。妖精や精霊を意思を無視して強引に使役させる魔導具、魔導器を作り使用する。世界樹の伐採……」

「ちょ、ちょっと待って世界樹って伐採できるものなの⁈」

「伐採後を見ただろう?」

 そう言われて思い返す。


 確かに枯れたと言われればおかしい、伐採されたなら分かるのがいくつか思い当たった。


「他にもあるが、この辺りにしよう」

「はぁ……」

 それでも疑問は残る

「ねぇ、世界樹って本当に伐採できるの」

「枯れてしまったならできる、瘴気でな」

「!」

「世界樹は枯れてもマナを溜め込んでいる、それを抽出することで奴らは様々な兵器や魔導器、魔導具を作ったのだ」

 クロウは忌々しげに言う。

「奴らにとって世界樹はその程度だったのだろうよ」

「……」

「そして瘴気が各地であふれ出し、神森の多くが枯れ果てた」

「だからあの分しか最初残ってなかったんだ」

「その通りだ」

「……」

 ふと気になった。

「クロウって瘴気の穴を塞ぎに行ってたんだよね、どうやって瘴気の穴塞いだの?」

「マナが大量に含まれた岩石を作り出して穴を埋めたのだ、文字通り身を削って作ったからかなり時間がかかったしな」

「愛し子と合流とかは?」

「本当は愛し子と合流して、ある程度石で埋めたら土を敷き、世界樹を植える予定だったのだが──」

「愛し子は合流することなく、処刑された」

「その通りだ。で、お前に頼みがある」

「何?」

「ユグドラシルから世界樹の苗を貰い、我とその地に行って欲しい、六百年も経ってれば石も瘴気で穢れてる可能性がある」

「そういうのもっと早く言ってくれない?」

 心の底から思った。





 ユグドラシルから苗を貰ってクロウに乗った私。

 一時間ほど高速で飛び続けるクロウ。

 すると、紫と黒い靄が混じり合った場所に来た。

 着地すると山のくぼんでいる場所に石が敷き詰められている。

 だがその石も穢れているのが分かる。

「うわ、なんか臭い、気分悪くなる」

「瘴気が吹き出てるな、これは相当だな」

 クロウは眉をひそめて言った。

「クロウが世界樹植えるとかできなかったの?」

「悪いがそれはできん。世界樹を植えることができるのは神々の愛し子だけだ。つまり梢、お前だけだ」

「マジかー」

 私は石で敷き詰められた場所を見る。

「でも、こんな石だらけの場所じゃ植えられないよ」

「そこは我に任せろ、聖なる土よ(セイントアース)!」

 くぼみに土が敷き詰められていき、山のてっぺんまで埋まってしまった。

 つまり真っ平らになっている。

「梢、早くと植えろ」

「分かってる」

 中心らしき場所に植えると水と肥料を与える。

 妖精と精霊達が集まってくるがそれだけじゃ足りない。

 早く成長させないと、この苗木も枯れてしまう。

 私は苗木に魔力を注ぐイメージをする。

 にょきにょきと育っていく苗木。

 まだ足りない。

「大きくなってー!」

 木に触り、叫ぶと光り輝いた。


 眩しさに目をつぶる。

「梢」

 クロウの声に目を開けると巨大な世界樹が育っていた。


『ありがとう愛し子、私は此処で瘴気の浄化に努めましょう。名前を下さい』

「えっと世界樹ティエラ」

 また世界樹が輝く、先ほどよりは弱い輝きだが。

 そして木がにょきにょきと生えてきて山も草木に覆われていった。

『植物たちと共に私はこの地の浄化に努めます、梢様。ありがとう』

「ううん、ごめんね。なんか押しつけちゃって」

『良いのです、世界樹は瘴気の浄化も仕事だから良いのです』

「よし、梢帰るぞ」

「ちょ、ちょっと待って……」

 私はへたりこむ。

「やはり魔力を大量消費していたか、今日は家に帰ったらすぐ休め」

「う、うん」

「後、よほどのことが無い限り自然に起きるのを待つように言っておく」

「うん……」

 ドラゴンの姿に戻ったクロウの背中になんとか乗り、私はその場から去った。



 その後、家に帰った私は直ぐに棺桶に入り、眠りについた。

 起きたのは次の日の夜だった。






クロウは前の神々の愛し子、梢のお祖母ちゃんであるマリーを処刑したカインド帝国をかなり憎んでいます。個人的な感情で、それくらいマリーとの仲が良かったのです。

友としてですが。

そしてカインド帝国の遺産で、梢に危害を加えようとしてたとなると、クロウは怒髪天を衝く状態になってます。

吸血鬼は差別されてますから、人間の愛し子が出ればそちらを信じる者達が多く出るでしょうし。


そして、かつて梢の祖母との約束を果たす元い穢れた地を浄化する為に世界樹を植えて貰いました、梢に。

ただ、梢は魔力を消費して、疲れてしまいましたが。

梢をある意味こき使いますが、クロウは梢を大切な存在と認識しています。

孫のような存在。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
悪事がどんどん出てきてますね。クロウおじいちゃんもそりゃ怒るわな。 そして、恋愛的な意味かと思ったら後書きに友としてと書いてあったのでそっちだったかとすぐに恋愛にいく自分の恋愛脳に呆れてしまいました笑…
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